喜寿・静岡伊豆放浪記! 第2話 「始発駅にて」

2013.02.03

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喜寿・静岡伊豆放浪記! 第2話 「始発駅にて」

2013.02.03

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かくして「美容室リグレッタ」で、りぐった私は、
いよいよ静岡県へ向けて旅立とうとしていた。

静岡県までの交通手段は、鉄道。

岡山まで特急列車「南風」に乗り、オカンと合流。
岡山から名古屋までは、新幹線「のぞみ」
さらに名古屋から目的地「熱海」までは、新幹線「ひかり」を利用する。

延べ6時間に及ぶ鉄道の旅。
熱海に着いてからは、レンタカーでのドライブだ。

ちなみに目的の駅こそ高名な温泉地「熱海」であるが、
今回、熱海は観光する予定にない。

━━━1月25日(金)
午前7時前━━━

高知県某所にあるJRの田舎駅に集結した、3人。
オビ=ワン、オバ=ア、そして私。

ベンチに腰を下ろしてしばらく待っていると、
改札の手前にある売店がブラインドを開けた。

<この売店・・・
7時が開店時刻なんだな・・・>

私と共に、
その光景を見ていたオバ=アが、
オビ=ワンに言う。

「朝ごはんに、
おにぎりでも買うかえ?」

オビ=ワンは、歳のせいだろうけれど、
ここ数年、段々と耳が悪くなってきている。

「なに・・・!?
聞こえん・・・!」

微笑みながらそう言うオビ=ワンに、
オバ=アがニタニタと笑みを浮かべて言う。

「聞こえんかえ・・・?
悪口やったら聞こえるろう?
言うちゃおか・・・!」

オバ=アは、
相変わらずニタニタと笑みを浮かべながら、
オビ=ワンの耳元で囁いた。

「バ・カ ♪」

周りに数人の見知らぬ人がいるにも関わらず、
そんなやり取りをしている2人に私も慌てる。

<やめろよ!やめろって・・・!
大衆の面前で"バカ"とかそういうのは・・・!>

ちなみに、
「聞こえん?悪口やったら聞こえるろう?バーカ!」
のやり取りは、ウチでは日常茶飯事のことである・・・。

「オジイさんは、
悪口やったら聞こえるもんね!」

ゲラゲラ笑いながら
そう言うオバ=アに、
オビ=ワンは・・・。

苦々しい表情を
浮かべていた。

「オジイさんも一緒に、
おにぎり買いに行くかえ?」

そう言って誘うオバ=アに、
オビ=ワンは改札前のベンチに座って言う。

「オラはここで荷物の番をしゆうき!
おまんら!買うてこいや!」

私とオバ=アが売店で、
おにぎりやコーヒーを買って帰ってくると、
オビ=ワンが急かす。

「2番乗り場や!はよ行かな間に合わん!」

3人は急いで重い旅行鞄を提げてホームへ出て、
陸橋を渡った向こう側にある、2番乗り場へ達した。

「そろそろ時間やねぇ」
と言いながら待っていると、ホームにいた
JRの制服を着た車掌さんだと思われる男性が寄ってきて言う。

「どちらまで行かれますか?」

オビ=ワンが答える。

「岡山!」

車掌さんは、
ニッコリと微笑みながら言った。

「それやったら向こう側です!
1番乗り場・・・!」

なんと!
駅の入口を入ってすぐにある1番乗り場へ、
岡山行きの列車が来るというのである!

一行、さっき渡ってきた陸橋を、
また慌てて渡って1番乗り場へ戻る。

「オジイさん!
アンタ!2番乗り場や言うたやん!」

老体に鞭打って陸橋を渡る、
という無駄な苦労をさせられたオバ=アが、
オビ=ワンを責める。

すると、オビ=ワンの口から出た言葉は、
なかなか衝撃的だった。

「前に鹿児島へ行ったときは2番から乗ったやいか!
ほんで岡山行きは全部2番やと思いよったわ・・・!」

「ちゃんと確認したわけじゃないがかよ・・・!」

オビ=ワンの個人的な思い込みで、
危うく!岡山行きの列車に乗れない!
という大惨事になるところだった!

そのとき、駅構内に、
○○行きは○番乗り場だという放送が響く。

それを聞いたオビ=ワン。
「放送が遅い!」
とご立腹。

まだマイクを持って放送している駅員に、
ガラス越しに詰め寄る。

「放送が遅いわよ・・・!なにっ・・・!?
もっとゆっくり喋ってくれな!わからんが!」

<やめろよ!やめろって・・・!
アンタの声をマイクが拾っちゃうだろ・・・!>

私は慌ててオビ=ワンを捕獲した・・・。

始発駅からこんな調子で、
この先、静岡県熱海市まで
無事に辿り着けるのか、とても不安である。

(第3話へ続く!)
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