手打うどん清麻呂 前編/ポーカーフェイスの葛藤

2011.02.08

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手打うどん清麻呂 前編/ポーカーフェイスの葛藤

2011.02.08

ダメだ・・・!やっぱりダメっ・・・!
なんか・・・なんていうか・・・緊張する・・・!
だって・・・入ったことねぇし・・・!

高知市の電車通りを西へ西へ。
初めて行った『清麻呂』の前を通過しながら、
私の胸はドキドキと高鳴っていた。

ここまで来て何を今更・・・!
入っちゃえ・・・!一旦入っちゃえば楽になるさ・・・!

店の周りを車で三周。
周回を重ねる度に・・・増す緊張。

その間、必死で背中を押すもう一人の自分の声を振り切るようにして、
結局、その日は踏ん切りが付かず、他の店に行った。

それから三日三晩、私を襲ったのは、
圧倒的・・・自己嫌悪・・・。

俺はまた自分の殻を打ち破ることが出来なかった・・・!
もう何度目・・・!このパターン・・・!

店の前まで行っときながら・・・まごまごと躊躇・・・!
これじゃダメっ・・・!

「なんとなく入り辛いな・・・」
じゃなくて・・・!入らなきゃダメなんだよっ・・・!

入らなきゃ・・・!
新しいうどんとの出逢いなんて無い・・・!

入らなきゃ・・・!
そこから愛なんて生まれない・・・!

だから・・・迷ったら進まなきゃダメなんだよっ・・・!
この道の先には・・・またいつだって進めれる・・・!
なんて思ってたら・・・とんだ激甘思考・・・!

気が付いた時には・・・!
道は跡形も無く消え失せている・・・!

そんなこと・・・!
世の中には五万とある話・・・!

イチかバチか・・・!
うどんを食べるか食べないか・・・!

迷ったら・・・食べるっ・・・!
これが正解っ・・・!

うどん屋は逃げない・・・!
逃げているのは・・・自分自身・・・!

壮絶なる葛藤の末、腹を括った竜一。
再度、市内に到達。

もう・・・逃げない・・・!
うどんから・・・逃げない・・・!

手打うどん清麻呂

『手打うどん 清麻呂』

外からは中の様子が見えない。
「店主が物凄くイカツイおじさんだったりしたら・・・どうしよう・・・!」

とりあえず、気付かれないように、
ソーッと、戸を開ける。

忍者作戦だ。

ソーッと、ソーッと。
引き戸を開けて中の様子を伺おう・・・とした次の瞬間・・・!

「いらっしゃいませ・・・!」

普通に声をかけてきた店のおばちゃんに、
竜一、混乱。

どうして気が付いた・・・!
俺の圧倒的・・・忍び足に・・・!

しかし・・・!
ここで慌ててはいけない・・・!

九死の場面こそ冷静に・・・!

ここは・・・ポーカーフェイス・・・!
ポーカーフェイスで乗り切るんだ・・・!

竜一・・・!
モアイ的、無表情で・・・!
店内に・・・進入・・・!

縦長の店内には、テーブルが4つ。
小さな水槽で熱帯魚が泳いでいる。

厨房の奥には、店主らしき年配の男性の姿が見えた。

手打うどん清麻呂 ストーブ!

座って、「何にしようか」と、
壁に掛けられた品書きを眺めていると、
おばちゃん、ひょうひょうとした表情で空の湯飲みを持って来る。

そして、そのままストーブの上に置かれたヤカンを手に取ると、
お茶を注ぎ入れて出してくれる。

えっ・・・!
そこから・・・!

他店ではあまり見かけないその光景に、一瞬驚いたけれど、
失われつつある昭和な風景を見るようでもあり、
なんだか心温まるのだった。

注文を終えて、待つ。

テレビから流れるニュース。
それを観て「ヒャッヒャ」と笑い、
一人、感想を述べている、おばちゃん。

なんだか絡んで欲しそうな雰囲気だけれど、
いきなりの会話。竜一にそれは無理。

陽気なおばちゃんとは対照的に、店主は寡黙。

カウンターの向こうにある厨房で、
とにかく黙々とうどんを作っている。

小柄な背丈。
顔に刻まれたシワ。

それは、いかにも職人といった雰囲気で、
仕事をするその姿は、お世辞でもなく、格好良い。

ゆらり・・・ゆらり・・・。
店主の前から立ち昇り始める、白い湯気。

どうやら釜揚げ麺が頂けそうだ。

(後編へ続く)

後編はコチラっ・・・! → 『手打うどん清麻呂 後編/辛の甘さ』