農家の日常

入浴

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耕作作業中

ここ数日、トラクターに揺られている。
朝から晩まで、「ガガガガガガガガ」響かせるエンジン音。

日が暮れて、家に帰る。

この時、竜一、
意外にも汗だく。

<見た目には・・・ただトラクターの上で座っているだけに見えるけれど・・・!
これがなかなかに大変な仕事でね・・・!>

言ってみれば・・・!

大地という名の戦場で・・・!
戦っているわけだからねっ・・・!

戦場から帰ったら、
お待ちかねの晩酌の前に、風呂。

湯船に湯を張るのは、オバ=アの役割。

「だいぶ前に・・・お湯入れたき・・・!
ぬるいかもしれん・・・!見て入り・・・!」

風呂に消えて行く俺に、
オバ=アは声をかけた。

俺は、着ていた十二ひとえを脱ぎ捨て、入ったんだ。

風呂にっ・・・!

おもむろに湯船のフタを開ける。
「パタパタパタ・・・!」

パタ音(ぱたおん)と共に風呂のフタを開けおおした瞬間、
予想だにしていなかった驚きの光景に、思わず漏れた、声・・・!

「うおぉっ・・・!」

湯船・・・その水面に漂う・・・!
黄色い物体っ・・・!!

柚子っ・・・柚子っ・・・柚子の嵐っ・・・!
その数・・・十数個っ・・・!

<ちょっ・・・!これは・・・オバ=アの仕業か・・・!
まさかのサプライズ・・・!サプライズ・オバ=ア・・・!
それにしてもビックリした・・・!ビックリして心臓が止まりそうやった・・・!>

驚きの余り、自分でも予期していなかったタイミングで、
不覚にも声が出てしまったけれど、
とりあえず、今、目の前で起こっている事は現実なのだ。

<そうか・・・!オバ=ア・・・!
夕方・・・柚子の木の傍でナニカしているなぁとは思っていたが・・・!
柚子を採っていたのか・・・!!>

それにしても、早く湯船に浸からないと、クソ寒い。

竜一・・・意を決し・・・!
飛び込むっ・・・!

柚子・・・浮かぶ・・・!
大海へっ・・・!!

「ドボーン・・・!」

<すげぇ・・・!黄色いのがプカプカプカプカ・・・!
漂ってやがるっ・・・!
でもこれ・・・!なにか効能があるのか・・・!!>

とりあえず、
俺は柚子をシゲシゲと眺めたのち、
手で磨いてみたりした。

でも、スグ飽きちゃって、
風呂から上がった。

数分後。

オビ=ワンが風呂に入った。

この時、俺の中で密かに、
悪戯心というか、好奇心に満ちた感情が沸き上がったんだ。

<おそらく・・・オビ=ワンも・・・あの柚子の事は知るまい・・・!
マスター・ケノービとて・・・きっとアレには驚く・・・!>

風呂場の近くで、様子を伺う竜一。
瞬間、「パタパタパタ・・・!」

オビ=ワンが、湯船のフタを開ける音が聞こえてくる。

「きたっ・・・!
俺が待ち望んだこの瞬間が・・・!」

「パタパタパタ・・・!」
のち、数秒間、静寂。

そして風呂場に響く・・・!
オビ=ワンの声・・・!

「ひぃぃっ・・・!」

オビ=ワン・・・!
絶叫っ・・・!

予想以上に面白い・・・オビ=ワンの反応に・・・!
竜一・・・風呂場の外で声を潜め・・・!笑う・・・!

「ケタケタ」とっ・・・!

<ビビるだろう・・・!そりゃあビビるよなぁ・・・!
湯船のフタを開けて・・・いきなり大量の柚子がプカプカと湯に浮かんでいたら・・・!
誰でもビビるんだよっ・・・!>

『大成功☆』と書かれた札を持って、
風呂の戸を開けてやりたい衝動を噛み締める。

オバ=アの仕掛けた罠に、
まんまと嵌った師走の夕暮れ時であった。

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竜一

1982年生まれ。高知で生姜農家をしています。うどんをかぶって寝たいほどうどんが好き。ラーメンとカフェも好き。農業家/ブロガー/農業界のうどん野郎/農業は生姜一本で稼いでます。

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