買い物ピープル

投稿日:2013.07.26 更新日:

軽トラの助手席にオバ=アを乗せて、町へ走る。
オビ=ワン家がある場所は、とにかく車が無くては生活ができないような僻地だ。
オバ=アは車の運転免許を持っていないので、買い物に行くときは、よくこうしてボクが運転手を務める。

「しょー暑いねぇー」と車内でオバ=アが顔をしかめて言う。
「ちったぁ暑い、だって夏やもの・・・」とボクは、みつを風に言って口を尖らせる。

カンカン照りの日中。
軽トラのエアコンを、やかましいほど全開にしているが、それでもたしかに暑い。

ボクは自分にも、"みつを"で言い聞かす。
<だって夏やもの・・・暑いのは当たり前なんだな・・・だって夏やもの・・・!>

やがて町のホームセンターに着いた。
そこでオバ=アは日除けにと、「すだれ」の立てかけるバージョンみたいなのを買った。
商品名を見てみると、「よしず」とあった。勉強になる。

<よしず・・・!これ"よしず"っていうのか・・・!すだれの立てかけるバージョンは、よしず・・・!>
でも少し覚えづらい名前だ。"よしお"って覚えておけばいいんじゃないか・・・?それなら人名みたいで覚えやすい・・・!>

ボクは頭の中で連呼して、脳にその名を馴染ませた。
<よしお・・・!よしお・・・!よしおーーー!>

「よしず」には、幾通りかの長さがあって、8尺のものと9尺のもの、2本を購入した。
そしてそれを持ち帰るため、軽トラの荷台に載せる。

よしず、なかなか長い。
荷台に載せても、先端が軽トラの屋根の上に達するほど長い。

乗用車ならばお店に配達を依頼しないと絶対に持ち帰れない長さだが、軽トラならば大丈夫。
こういうときに軽トラは役に立つ。

<あんた!さすがや!あんたはできる子や・・・!>
と軽トラに語りかける。
それから荷台に載せた「よしず」が路上に落下してしまわないように、常備しているロープで縛る。

孫の華麗なるロープさばきを、いささか感動して見ているだろうと思い、チラッと振り返ると、オバ=アは明後日の方向を見ていた・・・。

電話1

電話2
(※ とくに画像がないので、ずっと前の記事に使用したイラストをテキトーに掲載しています。本文とは関係ありません)

そのあとオカズを買うと言うので、スーパーマーケットへ寄る。

「作るオカズが思い付かんが・・・!」
軽トラのドアを開けて降りながらオバ=アが訊く。「竜一!なに食べたい・・・?」

「なんでもええ!」とボクは答える。
「なんでもは困る!」「なんでもええ!」
「なんか食べたいもんないかえ?」「なんでもええ!」「なんでもええかえ?」「なんっでもええっ・・・!」

なんでも食べて大きくなります。

車内は灼熱だし、エアコンをかけていてはガソリンを無駄に消費してしまう。
だからボクは、オバ=アがスーパーの中へ入って買い物をしているあいだ、駐車場の脇の日陰にあったベンチに座って待とうと思った。

3組ほど設置されたそのベンチには、先にお爺さんが2人座っていた。
どうやらお二方とも奥様の買い物が終わるのを待たれている風だった。

ボクも近くに腰を下ろしてオバ=アを待つ。
口をポカーンと開けて天を見上げる。

<空が青いなぁ・・・どうしてこんなに青いんだろう・・・>
ビールの泡みたいな雲がゆっくりと漂っている。<あぁ・・・それにしてもビールが飲みたい・・・>

少し前まで炎天下の元、生姜畑の草をゴンッゴンッ!むしっていた自分が遠い過去の自分のようだ。

<脱力ぅぅぅ・・・>
自分の口がさらにポカーンと開いたのを感じる。<あっとうてき・・・だつりょくかんんん・・・>

遠くから険しい表情をした年配の女性が歩いてくる。
<あの人・・・どこかで見たことある・・・!>

「おーーーい」
と年配の女性はボクに声をかけてくる。「おいよーーー」

あ゛あ゛?

よく見るとウチのオバ=アだ。
「お・・・おぅ・・・!」
とボクは返事して軽トラに乗り込む。

電話3

電話4

そうしてオビ=ワンが待つ家に帰る。
「オバアはなんかこうて(買って)きたかや?」
とオビ=ワンは僕に訊く。

「ああ、こうてきたけんど・・・あれ・・・!あれ何やったっけ・・・!」
ボクは思い出そうとする。さっきは覚えきっていたはずなのに思い出せない。「あの・・・!あれよ・・・!あれっ・・・!」

「あれち、なんぜよ・・・!」
オビ=ワンは怪訝な表情を浮かべる。

「あれ・・・あれよっ・・・!」
ボクは必死に記憶の糸を手繰る。「えーとぉぉぉ・・・」

よしおっ・・・!

「よしお・・・!?」
納得していない様子のオビ=ワンにボクは説明する。
「立てかける"すだれ"みたいなやつよ・・・!」

「"よしず"じゃないかや!」

「ああっ!それっ・・・!」

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竜一

1982年生まれ。高知で生姜農家をしています。うどんをかぶって寝たいほどうどんが好き。ラーメンとカフェも好き。農業家/ブロガー/農業界のうどん野郎/農業は生姜一本で稼いでます。

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