トラクター・ディスクロータ・バージョン。
かっこいい。。。 #男の子が好きなやつ pic.twitter.com/TmFz0TU8Pn
— 竜一@育児・子育て中 (@Ryu_wld7) 2018年2月8日
「まだ少し寒いな……」
晴天だが日差しは弱く、風が強い。
通常のロータリーの代わりに、トラクターの後部に付け替え可能な「ディスクロータ」と呼ばれるアタッチメントを用い、すき上げておいた畑を再度ノーマルのロータリーに付け替えたトラクターでならしていく。
トラクターの音だけが響く、静かな山間。
どこからともなくカラスが飛んでくる。
「やあ、カァーくん」と私は声をかけた。
「おう!いい天気だねぇ」そう答えてカァーくんは黒い羽をパタパタと動かす。
「きょうも虫取りかい?」
「そうだよ。冬場に虫は貴重だからね」とカァーくんは微笑む。
カァーくんはトラクターが掘り起こした虫を食べにきているのだ。
「あと1か月もすれば、春だよ」
「そうなの?いまはいったい何月だい?」訊きながらカァーくんは虫を探している。
「2月下旬だよ」
「2月か……あと少しだなぁ」カァーくんは立ち止まって土佐弁を発した。「はよ、ぬくうなってもらわな、困るがねぇ」
紅のトラクター。
その姿はフェラーリF1を彷彿とさせる。
もしかすると、フェラーリなのかもしれないな、と私は思った。
トラクターで耕したあとは、測量用の竹の棒で畝幅(うねはば)を計測する。
計り終えたら、そこにロープを真っ直ぐに引く。
そのロープを足で踏んでいき、土の上につけた足跡を目印に、管理機で畑の溝を作成していく。
徐々に日が傾き、薄暗くなる畑。その頃にはカァーくんは飛び去り、もういない。
「カラスさえもいない、こんな世の中じゃ……」と一曲歌おうとしたが、歌っても仕方がないなと思い直してやめた。
鍬(くわ)を使い、溝に落ちた土を畝に上げる。
私しかいない畑に、ザッザッと鍬が土をこする音だけが響く。
これがいい……。
孤独に耐えられない人には到底無理だろうが、誰にも何も言われず、干渉されない時間の中で好きなように物事を動かしていける。それが個人農業の魅力である。
「8割方完成。残りはあしただな……」
静寂の中で、1枚目の畑ができあがろうとしていた。