思春期の乙女みたいに、胸がドキドキと高鳴っている。 時刻はすでに十四時を回っていた。 暖簾をくぐり、戸を開けて中に入る。 少し暗い店内。先客は男性が一人。計算通りだ。 私は隅の四人掛けの席に腰をおろし、メニューを手に取った。 <これが噂の……> 視線の先には「山かけ」と書かれた文字列があった。その脇に赤い波線が引かれている。 南国市岡豊にある「そば処・㐂太八(喜太八)」の「山かけ」が美味しいと書いてあるブログを読んだのは随分前だった。 そのブログを書いている方は「㐂太八」へ行くと、決まって「山かけ」を食べ ...