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【生姜の神様】エピソード8/おめでとう

投稿日:2019.07.15 更新日:

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スーパーの店先のベンチに座って待っていたオビ=ワンと合流するオバ=ア
【生姜の神様】エピソード7/買い物パートナー

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9月に中稲なかせの新米が取れたばかりの10月だった。

買い物に行こうとオビ=ワンが車を運転していると、助手席に座るオバ=アが聞いてくる。

「なんか食べたいあるもんあるかえ?」

オビ=ワンは少し考えを巡らせたけれど、思い浮かばない。

「別に、なんでもえいわや」

「肉か魚やったらどっち」

少し悩んで答えた。
「んん、どっちでもえいわ」

「どっちでもが一番困るが!」オバ=アは眉間にシワを寄せる。「歳が行ったら変わったもんを思い付かん」

オバ=アが毎日の料理に苦心していることを知っているからこそ、オビ=ワンも気を使って提案する。

「ほいたら魚よ」

「魚かえ。へえへえ」とオバ=アはうなずいた。「ほいたらスーパー行ってから、帰りに魚屋へ寄ってや」

「スーパーも魚屋も両方行かないかんか」オビ=ワンは苦笑した。「魚もスーパーで買うたらえいやいか」

「スーパーの魚もついでに買うにはえいけんど、本当は魚屋で買うがが一番やき」

餅は餅屋と言うろうがね。

「そうかよ、オバアはこだわるき、付き合うこっちがずるうない大変だオビ=ワンがまた苦笑すると、「いらんこと言わんと、言う通りにしい!」と一蹴された。

魚屋の駐車場にとめた軽トラック

スーパーで買い物したあと、ときどき行く商店街の魚屋に寄る。

商店街と言っても、商店は4〜5軒ほどしかない田舎の商店街だ。

店舗の正面にある駐車場に車をとめる。

「買うてこいや」オビ=ワンは車のエンジンを切らずに言った。

「ほいほい」オバ=アは、よいしょ、と軽トラからゆっくり降りた。

5分くらいすると、オバ=アが戻ってきた。

「えいががあったかや?」

「なかなか、えいサバがあった」

「スーパーで買やえいに、オバアはリグるきに」

「やかましい!はよう車を走らせて家へ帰り」オバ=アは助手席で立腹の表情を浮かべた。

家の離れの前から田んぼを眺めるオビ=ワン

家に帰ると、オビ=ワンは庭を横切り、離れの裏に広がる稲刈り後の田んぼを眺めた。

稲の株をはよう叩き込まないかんねゃ早く耕うんしないといけないな、と思っていると、正午を告げる集落のサイレンが鳴った。

「もう昼メシの時間か」ゆっくり歩いて家に入る。

台所からオバ=アの声が聞こえてきた。

「まだごはん食べようち、いかんぞね!できてないき!」厳しい剣幕で続ける。「座って新聞でも読みより!」

「新聞は今朝読んだもの」

「ほいたらテレビでも点けて見より!」

「おおの、やかましいオバ=アじゃよ」

「いらんこと言わんでえい!黙っちょれ!」

やれやれ、とオビ=ワンは思った。だがこのようなやり取りは日常茶飯事である。

すごすごと台所の隣にある居間に行くとテレビを点けた。

画面にスーツ姿の男性の姿が映し出される。NHKの昼のニュースが流れている。

凄惨な事件の報道に、オビ=ワンは眉をひそめた。「いよいよロクなことせんねゃ……」

ニュースが終わり、生放送のバラエティ番組に切り替わった。先ほどとは一転してテレビから女性タレントの弾むような明るい声が聞こえてくる。

そのとき台所から、ドスの利いた低い声が響いてきた。

「おじいさん!」「おじいさん!」「おじいさん!」

ジンマじじい……!
聞こえんかっ!

「聞こえよらや、返事しゆに聞こえんがは、おまさんお前さんやいか」オビ=ワンは頑張って口ごたえした。

しかし………。

「ゴニョゴニョ言わんでえいき、はよう食べ!」

力の差で一蹴された。

サバの姿寿司

台所に行くと、酢のよい香りが漂っていた。

「サバを寿司にしたかや」オビ=ワンは目を丸くした。飯台にサバの姿寿司が置かれている。

オバ=アは流しで包丁を洗っている。

サバ寿司に見つめたまま、オビ=ワンは言った。

「きょうはどういたどうした。えらい張り切ったが」

「忘れたかよ、おじいさん」オバ=アが笑みを浮かべる。

オビ=ワンは、何のことだかさっぱりわからない。

「自分が生まれた日も覚えてないらぁて、オジイも耄碌もうろくしたのお」

「ああ」と声を出した。

「思い出したかよ!」とオバ=アが笑う。「おじいさんが喜ぶかと思うて拵えたこしらえたわね」

オビ=ワンは頭をかいた。

数日前、テレビでサバの姿寿司を食べるタレントを見ながら「オラもサバ寿司が食べたいねゃ」と何の気なしにつぶやいたのをオバ=アは覚えていたのだ。

そして、その日はオビ=ワン75回目の誕生日でもあった。

「酢をうんと利かいちゃうきかせているから酸いすっぱいぜよ!」

そう言って、オバ=アはアヒャヒャと笑った。

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【生姜の神様】エピソード9/近所のおばちゃん

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日本一の生姜の産地・高知県で生姜農家を経営している竜一と申します。「生姜で美しく」をテーマに、生姜の専門家が生姜のすべてを語るサイト「最強のジンジャーバイブル」を運営しています。

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