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【生姜の神様】エピソード9/近所のおばちゃん

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走り慣れた集落の道だが、車を運転しながらモトコは慎重になっていた。

最近は高齢者の重大事故が多い、自分も気を付けなければ、と気を引き締めた。

モトコが嫁に来た50年ほど前から住んでいるのは、過疎化が進む中山間地域のいわゆる限界集落とはいえ、道路は拡張済みで車線は区分されていないものの、対面通行が可能となっている。

それでも70歳を回ってから、自分の運転技術が明らかに衰えてきたことを自覚しているし、何しろモトコが住む家の手前300メートルほどは道幅が急激に狭くなっていて、車1台がようやく通れるほどである。

モトコは、広い道から幅員減少が始まる脇道へとハンドルを切った。その先はすぐに急坂になっている。

車1台の幅しかない急坂をゆっくり上って、平坦な道へ。もう家はすぐ目の前に見える。

脇にある田んぼに人影が見えた。近所に住むオビ=ワンだ。

田んぼの縁に立つオビ=ワンと車で通りがかったモトコ

モトコは車の速度を落とすと、開けた窓から右手を振って叫んだ。

「やりゆうかえ!」窓から夏の熱気が入ってくる。

「ほおい!」オビ=ワンも声に気づいて手を挙げた。口元が白く光った。

家に帰ると、モトコは買ってきたスーパーの袋を縁側に置いた。

そして足早に、さっきの田んぼを目指す。

「おーい!オビちゃん!」モトコは田んぼの脇の道から叫んだが、アゼに立ったオビ=ワンは下方を見つめたまま動かない。

「おーい!オビちゃんよ!」また叫んだが声は届かない。オビちゃんも耳が遠くなったものだ、と思った。

「おーい!」もう一度叫ぶと、ようやく聞こえたようで、視線と共に、ほおい、と声が返ってきた。

「暑いねぇ」モトコは笑顔を向けて「ほい!これ飲み」と右手を差し出した。

その手に銀色の缶が握られているのを見て、オビ=ワンの顔がほころんだ。

オビ=ワンにビールを差し出すモトコの手

「ありゃっ!昼間からそんなもん飲んだらいかんが」

「ビールは昼間から飲むき、うまいがじゃいか」とモトコはからかった。

少し腰の曲がったベテラン農家が、田んぼのアゼをモトコのほうにテクテクと歩いてくる。

「ほい!飲み!」缶ビールを差し出すと、すまんのぉ、と作業用の手袋を外しながら受け取った。

「温もったら旨うないき、はよ飲み」

「ほいたらお言葉に甘えようかのぉ」オビ=ワンは目尻にシワを寄せ、肩を小刻みに揺らして笑った。

「はよ飲まないかん!グイッといき!」

オビ=ワンが缶ビールのプルタブを引くと、プシュッパカッ、とおいしそうな音がした。モトコも"飲みたい"と思ったが、スーパーで買ってきた缶ビールは1本だけだ。

「えらい田んぼを見よったけど、虫か何かおるの?」

「虫でもないけんど、田んぼの水を見よったが」と言って、オビ=ワンは缶ビールに口をつけてシワの寄った喉仏を上下に動かした。

「ああ、あれは水を見よったかね」モトコは農村集落に暮らしているとはいえ、農業と無縁の人生を送ってきた。「やっぱり田んぼは水を見ないかんもんかね」

「そうやねぇ、水はぎっちり見よらな頻繁に見ていないと、一旦、田がひいたら干上がったら、なかなか溜めれんき」

「ほうかよぉ、難しいもんねぇ」

モトコがそう言うと、オビ=ワンは口元を尖らせた。

「米は栽培するときも、炊くときも水加減が大事じゃ」

「オビちゃん、上手いこと言うねぇ」

オビ=ワンは、したり顔で、ハハハ、と笑った。

モトコも顔をクシャクシャにして笑った。緑の田園に青く明るい空が広がっていた。

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竜一

日本一の生姜の産地・高知県で生姜農家を経営している竜一と申します。「生姜で美しく」をテーマに、生姜の専門家が生姜のすべてを語るサイト「最強のジンジャーバイブル」を運営しています。

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