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(テキスト版は下にあります)
↓ テキスト版・本編 ↓
山里を駆ける、
汽笛の音色。
そこどけそこどけ、
森林鉄道様のお通りだ。
それは、まるで…
まるで夢の景色のように…
ただひたすらに、
美しい眺めだった。
これは僕たちだけが知っている、
新緑の季節の物語だ。
あの景色、
あの日、
見たことは、
全部夢だったんじゃないかと、
いまでは思う。
でも夢じゃないんだ。
あの春の日、
あの森の中で、
僕たちは、
失われた鉄道を、
見てしまったんだ。
かつて高知県東部を走っていた幻の鉄道、魚梁瀬森林鉄道。
おもに木材を運んでいた鉄道だが、いまから半世紀以上前に廃止されているため、現役の頃を知る者は少ない。
bしかし山深い山中にあるその村には、現在も当時の車両が動く状態で保存されているという。
これは我々が家族規模でおこなった、高知県馬路村、および魚梁瀬地区の大規模な市場調査の全容である。
(※動画では、2年にわたり撮影した映像を編集でつなげています。そのため時系列がおかしい箇所がありますがご容赦ください)
登場人物
- 竜一(パパ/著者)
- パドメ(ママ)
- レイア(娘/6歳)
- ルーク(息子/3歳)
※登場人物の名前と配役でスターウォーズファンのかたはお気づきかもしれませんが、竜一は反逆で有名なアナキン設定です!
高知県東部の山深い場所にある「馬路村」に車で向かう
馬路村・魚梁瀬地区(丸山公園)
こうして渋る娘を連れて、一行は高知県東部の山中にある地区、馬路村魚梁瀬を目指した。
安田川沿いのクネクネ道を、上流に向けて走る。
森の木々に囲まれた山道を抜けると、急に辺りが開けた。
ときは2022年5月、高知は記録的な水不足に見舞われていた。
橋名板には「魚梁瀬大橋」と書かれている。
ダム湖の向こうには、魚梁瀬の集落が見える。
魚梁瀬大橋を渡って、わずか数分で見えてきた。
黒光りする建物に「森の駅やなせ」とある。
踏切のことだった。
踏切を渡ると広場があった。
魚梁瀬地区唯一の飲食店「杉の家」
武家屋敷みたいに立派な建物。
木がふんだんに使われている。
調べたところ、どうやらそのようだ。
メニューの筆頭に書かれた、お店の名物は「グリーンカレー」とのこと。
そのほか日替わりメニューも記載されている。
窓の外に公園が見える。
「魚梁瀬丸山公園」と呼ぶらしい。
緑が美しい山の風景を窓から眺めていると、注文した料理が運ばれてきた。
馬路村で採れた青唐辛子を使用しているというグリーンカレーは、大きな鶏もも肉に高知県東部特産のナス、春だからかタケノコも入っている。
ピリッと、からい。
杉の家の店舗情報
店名 | 魚梁瀬の食堂 杉の家 |
所在地 | 〒781-6202 高知県安芸郡馬路村魚梁瀬 丸山公園内(地図) |
営業時間 | 11:00~15:30(L.O.15:00) |
定休日 | 土曜(祝日の場合は営業) |
駐車場 | 有 |
店内 | ■カウンター席/無 ■テーブル席/有 ■座敷/無 |
森の駅やなせで魚梁瀬森林鉄道の乗車体験
ここ「森の駅やなせ」では、いまから半世紀以上前に木材の運搬に使われていた森林鉄道の乗車・運転体験ができる。
(※8月以外は日曜・祝日のみの運行につき注意!)
駅で料金を支払うと、乗車券が手渡された。
木製の乗車券は一枚一枚で、それぞれ大きさやデザインが異なる。
こんな素敵な乗車券は見たことがない。
緊張してるのか、機関車に乗った子どもたちは終始無言だった。
森林鉄道を降りてから聞いてみた。
魚梁瀬森林鉄道の料金・営業時間
所在地 | 〒781-6202 高知県安芸郡馬路村魚梁瀬丸山(地図) |
営業時間 | 10:00~15:30(お昼休み12:00~13:00) |
運行日 | 日曜・祝日のみ運行(8月は土曜も運行・雨天運休) |
料金 | 大人(中学生以上)400円 小人(3才以上)200円 |
駐車場 | 有 |
お問合せ | 0887-43-2055(平日9時~16時) |
魚梁瀬地区の集落を散策
元々は、800年以上前の源平合戦に敗れた、平家の落人が住み着いたことから始まったとされる魚梁瀬の集落は、1970年(昭和45年)6月19日のダム、および魚梁瀬発電所の完成にともない水の底に消えた。
その後に作られたこの山深い場所で、住民の方々がどのように暮らされているのか興味があり、魚梁瀬の集落を少し散策してみる。
すると、地元のJAが運営する小さなスーパーマーケットや、ENEOSのガソリンスタンド、建物の2階から1階にかけて設置されたローラーすべり台が特徴的な、小中学校も見つけられた。
魚梁瀬地区をあとにして、元来た道を南下する。
クネクネ道を走る車内で、子どもたちは二人とも眠りについていた。
馬路村・馬路地区(馬路温泉すぐ近く)
30分ほど走って到着したのは、ユズの生産と加工品で全国的に有名な馬路村の中心部。
目と鼻の先に「馬路温泉」がある駅舎で乗車券を購入する。
すると、ここでも魚梁瀬のと同じように、木製の乗車券がいただけた。
インクライン(水力式ケーブルカー)
係りのおじさんの説明によると、インクラインとは水の重みを動力にするケーブルカーのことで、かつては山の急斜面で木材を運搬するのに使用されていたとのこと。
つるべ式に、ワイヤーの両端に客車と"重量車"と呼ばれる重りが連結されていて、客車の下部にあるタンクに貯めた水を抜くことで、重量車
より客車が軽くなって上昇する。
降りるときは、反対に客車のタンクに水を貯めて、その重みで下降する。
電気などの動力は使っていない。
水の重みと、油圧と手動ブレーキで制御されているそうだ。
いま世界中で叫ばれている流行りの"SDGs"は、昔の人のほうがよくできていたのかもしれない。
タンクの水をある程度の抜き終えると、ケーブルカーがゆっくりと動き始めた。
車両が上昇するに従って、馬路村の素晴らしい景色がパッと開けてくる。
子どもたちも目をキラキラさせて、パノラマを眺めている。
やがて終点に着いた。
係りのおじさんが言う。
「下降するための水がタンクに貯まるまで、少し時間がかかるから待っていてください」
それは……
まるで………
まるで夢の景色のように、
ただひたすらに美しい眺めだった。
10分ほど待っただろうか。水が貯まったからそろそろ下に降りますよ、と係りのおじさんに促されて、再びケーブルカーの車両に乗り込む。
下に降りてからも、子どもたちのテンションは高かった。
インクラインの料金・営業時間
所在地 | 〒781-6201 高知県安芸郡馬路村馬路3564-1(地図) |
営業時間 | 8:30~16:30 |
運行日 | 日曜・祝日のみ運行(8月は毎日運行、雨天運休) |
料金 | 大人400円 小人300円 |
駐車場 | 有(馬路温泉) |
お問合せ | 0887-44-2026(馬路温泉) |
馬路村森林鉄道
1911年(明治44年)から、昭和63年に廃止式がおこなわれるまで半世紀以上に渡って、木材だけでなく人や日用品などの物資も運搬してきた
魚梁瀬森林鉄道。
現在は鉄道が通っていない馬路村だが、かつては人々の生活のすぐそばに機関車がある、"鉄道の村"だったという。
本来の目的での森林鉄道は廃止された。
だがいまでも観光客を乗せて走り続け、当時と同じように山深いこの地域と、外をつなげる役割を担っている。
つまり……
馬路村の森林鉄道は失われていないのだ。
森林鉄道は、
汽笛を鳴らして、
走り続ける。
人と山の暮らし、
過去と未来をつなぎ、
走り続ける。
馬路村森林鉄道の料金・営業時間
所在地 | 781-6234 高知県安芸郡馬路村馬路3564-1(地図) |
営業時間 | 8:30~16:30 |
運行日 | 日曜・祝日のみ運行(8月は毎日運行・雨天運休) |
料金 | 大人400円 小人300円 |
駐車場 | 有(馬路温泉) |
お問合せ | 0887-44-2026(馬路温泉) |