とっくに日付けも変わったというのに、夜の高知市繁華街は賑わっていた。
「酒臭い…」
店先で待っていたブランが言った。
「ふふん」と私は笑った。
初めて入るラーメン店、『ソライロ』
「油断するなよ、ブラン」
「うん、わかってる」
「初めての店というのは、どういう攻め手を見せるかわからないからな」
私がそう言うとブランは眉間に皺を寄せ、引き締まった表情をした。
「後の先(ごのせん)でしょ?」
「そうだ。後手に回って相手の出方を見て動きながらも、先を取るんだ」
二人でゴニョゴニョ言いながら、店に入った。
まずはソライロのターン。
いきなり、おしぼりとお茶の接待。
嬉しい。そんな感情と共に湧き上がる感謝の気持ち。
「ありがたっ……」
そう言いかかったとき、ブランが片手で私の口を塞いだ。
「まだだ…!まだ早いっ…!
この局面でその台詞はまださすがに……!
それをいま口にしたら秒殺ってことじゃないかっ…!」
メニューに目をやる。
「おぉっ…牛ホルモン煮込みがある……」
私は即決した。「ラーメンもいいけど、先にこれを頼もう…!」
俺はホルモンが好き…!
むしろ好きすぎて……!
マキシマム・ザ・ホルモンなんだ!
ででーん。
いやーん!
ホルモン可愛いー!
どうしてこんなに可愛いの?
妖怪のせいだ……!
ホルモンが、やわらかい。
豆腐みたいだ。
ホルモンは、
初恋のように、
甘く溶けた。
しかし、これはほんの序章でしかなかった。
ラーメンだけ食べて帰る予定だったのに……!
気が付けば俺は……
ホルモン煮込みの湯船にどっぷり浸かり……
いままさに……
煮込みの中に溺れようとしている……
だが………!
まだここで沈むわけには………!
牛の世界を
突っ切った先に
麺がある…!
中華そばという、夢幻郷。
中華なそばが……!
俺の世界を駆け抜けるっ…!!
そのとき、ブラン、担々麺。
ちなみに『中華そば(670円)』『担々麺(720円)』
(※ 行ったのは2014年9月)
シャアも納得の赤い担々麺…!
少し味見させてもらったが、そんなに辛くはない。
そして私は深い語りを始めた。
シューゾーのように。
人間、いろいろあるだろう……!
生きてたら、いろいろあるんだよ……!
担々麺だってそうよ……!
この担々麺だって、辛いだけじゃないんだよ……!
いろんな味がするんだよっ……!
うどんだってそう……!
人間だってそうよ……!
ツライこともあれば、楽しいこともある……!
いろいろあるから面白いんだ……!
だから……………!
今日の昼はラーメン食べたい。
寒いから、ラーメン行こう。
◆ ソライロ
(高知県高知市追手筋1-5-1)
営業時間/
19:00~翌4:00(日曜のみ24時まで)
定休日/不定休
駐車場/無