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▼以下は、動画を文字起こしというか、"文字戻し"です。
髪を切ったその日の昼、私は「ガスト」に立ち寄った。
朝から何も食べていなくてお腹もすいていたし、喉も渇いていた。
ガストで"せんべろ"して帰ろう。
午後4時。昼食どきをとっくに過ぎたガストの店内は閑散としていた。
私は空席に座るとタッチパネルを操作して、料理をふたしな、そしてアルコールを注文した。
ガストでは「ハッピーアワー」といって、平日10時30分から20時まで、生ビール、角ハイボール、レモンサワーが、破格の税別200円(税込220円)で飲めるサービスが提供されている。
ほどなくして、ビールとハイボールが運ばれてきた。
2杯同時に注文したのは、ビールをハイボールのチェイサーにして、ハイボールをビールのチェイサーにしたいからだ。
ビールを半分以上飲み干したところで運ばれてきたのは、草原みたいに美しい緑が印象的な「ほうれん草ベーコン」だった。
ガストで頻繁に注文する、これも税別199円と破格だ。
さらに「から好しの唐揚げ」が運ばれてきた。
ガストで前々から提供されている通常の「唐揚げ」に比べて、1個あたりの価格は2倍ほどになるけれど、それでも注文したい逸品だ。
役者がそろった頃には、ビールの8割ほどが胃袋に消えていた。
ほうれん草ベーコンにのったバターは、草原にたたずむヒツジのようだった。
それを溶かして、口に放り込む。
バターのよい香りが鼻に抜ける。
いつ食べても同じ味。
体によさそうでカロリーも低そう、なんて安心感は「日曜日のサザエさん」に通じるものがある。
次に「から好しの唐揚げ」に箸を伸ばす。
箸を通して指先に伝わってくる、うまいものをつかんだとき独特の感覚。
指先の神経が言っている。
「これ、おいしいやつ」
きのうも食べて知っているけど、また食べる。
2日続けてガストで食べる「から好しの唐揚げ」
サクサクと弾ける衣、ジューシーな鶏もも肉はプリップリの食感で私を支配する。
「幸せ……」
そして肴がうまいと当然出てくる欲求。
「もっと飲みたい……」
しかし現時点で、予定された会計金額は1,055円に達している。
これ以上飲むと、"せんべろ"が達成できない。
脳内で悪魔がささやく。
<もう1杯飲んでも、220円しか変わらないよ>
たしかにそうだ。
220円しか変わらない。
でも現状で抑えると、限りなく千円ピッタリに近い金額で"せんべろ"だと胸を張って言えるが、もう1杯飲んで1,275円では、"せんにひゃくえんべろ"なんて語呂も非常に悪くなる。
"せんべろ"は流行っても、"せんにひゃくえんべろ"は流行らない。
名残惜しいが、ここは"せんべろ"で帰ろう。
帰って家で、"べろべろ"に。
「今夜も、自宅で、トイレに千鳥足」