「倍プッシュだっ・・・!」
黒潮うどんを出た竜一は、そう叫んだ。
『うどん → 倍 → プッシュ!』
つまり、『うどん → もう一杯 → 食おうぜ!』
という意味である。
勿論、最初からそのつもりだった。
そのつもりだったからこそ、黒潮うどんで『大』を自重して『中』を注文したのだ。
実は、今回土佐市を訪ねるにあたっては、二つの目的があった。
一番の目的は、
黒潮うどんで、前回、量が少なくて堪能し切れなかった一杯を、
もう一度食べ改めてみたいということ。
そして、もう一つの目的は、
まだ行ったことが無い、土佐市のうどん屋さんに行くこと。
どうせ滅多に行くことが出来ねぇ土佐市まで行くのなら・・・!
知らぬ店にも行ってみたい・・・!
そんなわけで、『土佐市のうどん屋』を脳内検索していると、
ある店の存在を思い出した。
その店を初めて発見したのは、『とがの藤家』の帰りだった。
「どうせ暇だから・・・」と、
高速道に乗らずに一般道を社会見学気分で走っていると、
喫茶店風の店の前に『うどん』と書かれたのぼりがパタパタと揺れているのが見えた。
<うどん・・・!?
けどこれ・・・誰が見ても喫茶店だろうがっ・・・!>
などと失礼なことを思いながら、
その時は、通り過ぎた。
しかし、それから幾ばくかの月日が経とうとも、
私の脳裏にそのうどん屋の記憶は残り続けた。
時は満ちて、今回。
満を持して向かう。
うどん倍プッシュ・・・!
『よし乃』
黒潮うどんから車で5分ほどの近距離。
時刻は、12時を僅かに過ぎていた。
駐車場には数台の車が並ぶ。
何故だか、県外ナンバーの車が多かった。
建築が変わっていて、奥の方だけ三階建てになっている。
渡辺篤史に是非行って頂きたい造りである。
中に入ろうとすると、くたびれたノートに、
本日の『日替わりうどん定食』の内容が手書きで記されていた。
これに、竜一。
胸がキュンキュン。
手書きだから伝わる想い・・・!
手書きだから伝わる真心・・・!
圧倒的・・・筆圧・・・!
手書き・・・!
いやぁ・・・素晴らしいですねぇ~・・・!
なるほどぉぉおおお!
渡辺篤史のように納得しながら、
引き戸を開けて、中に入る。
男性ばかり、作業服姿の人達が10人ほどイスに腰掛けて、
うどんをすすったり、雑誌を読んだりしている。
店の方らしき人は見当たらない。
<あ・・・!あの・・・
お客さんですよぉ・・・>
心の中で発するも、
当然、誰にも聞こえない。
(後編へ続く・・・!)
後編はコチラっ・・・!
『よし乃 後編/アルプスの初体験』
予告していた日より記事のアップが遅れてしまいました。
当方、圧倒的・・・遅筆・・・!なものでご理解下さい・・・。(;ω;)