『前の話を読む』
「まずは『やすきや』の『特製やすき』から行ってみようか」
と、黒ずくめの男から電話がかかってきたのは、数日後のことだった。
わりと軽いノリに戸惑いながら、「『やすきや』を改めて調査する必要があるのか?」と訊くと、
「総帥は部類の麺好きだが、高知在住ではないので『やすきや』に行ったことがないのだ」と彼は言った。
かくして私は、高知のうどん屋の中でも屈指の有名店『麺処 やすきや』にやってきた。
ここは『肉入り醤油』が人気の店だが、組織が指定したメニューは、『特製やすき』
『やすきや』の中で、最も値段の高いメニューだ。
本当は『釜玉』を食べたい気分だったのに、と思った。しかも代金は自腹だ。
平日の昼すぎ。
土日ほどの混雑はなく、ゆったりと時が流れる店内。
きたっ!きたっ!きたっ!特製やすきが突っ込んできたっ…!!
肉も……!
エビ天も………!
ワカメもネギも入ってる……!
ありがたいっ……!
具だくさん………!
ありがたいっ………!
感激の境地で、ズルッと一口。
エビがっ…!麺がっ…!
ブリンブリンしてる……!
そして………!
なんと言っても出汁が………!
やすき節っ!
「帰ってブランに報告しなきゃな」
車を運転して家に帰った。
玄関の戸を開けると、ブランがいた。
………って!
めっちゃくつろいでるし!
「エビが麺がブリンブリンしていて、出汁が、やすき節だったよ」
と、ブランに報告した。
少し簡潔すぎるかなと心配したが、ブランは、ふんふんと聞いていた。
「これで1店目クリア。あと99店だね」
「先は長いな…」
私は頭を抱えた。
『次の話を読む』
◆ 麺処 やすきや
(高知県高知市鴨部3丁目34-7)
営業時間/11:00~麺切れまで(大抵14時くらいで閉店されている模様)
定休日/木曜日、第2第4水曜日
営業形態/一般店
駐車場/有