次の調査対象が香南市野市町の『マルトクラーメン』だと黒ずくめの男から聞かされたとき、今回は私一人で行かせてくれと頼んだ。
マルトクラーメンと私。
男と男のフェイスオフが始まろうとしていた。
初回が『チャーシューメン』……。
二度目が『つけ麺』……。
三度目は………!
「すすす……すいません……油そばを……」
謝罪するようにして注文。
のち、食べ方を勉強する。
壁に貼られた紙で……!
<なるほど………。
最初に麺を掻き混ぜてから食べる。
麺を食べおおしたあと、残り汁にご飯を投入>
生まれて初めて食べる、汁なしラーメン。
噂には聞いたことがあったが、初めて食べる、汁なしラーメン。
ラーメン屋といえば『豚太郎』と『自由軒』だった時代から、高知ラーメン界は確実に新時代へと突入していた…!
こ………!
これが油そば……!!
しばらくして店員さんが持ってきてくれた『油そば』
<美しい………>
中越典子を初めて見たときみたいな衝撃。
そしてこの迫力。
巨大な山のような存在感。
まさに無敵…!!
キャベツ…!モヤシ…!メンマ…!ネギ…!
さらに肉厚のチャーシュと生卵が載った丼内!
麺が見えない……!
見えるわけがないっ…!!
そんな中で一際……!
香りというオーラを漂い放つ……!
ニンニクの攻撃力っ…!!
<この一杯を喰らって……
立っていられるだろうか……>
食べたら十中八九、口が臭くなる一戦。
だが…………!
臭さこそ…油そばと闘った者の勲章…!
臭くって本望っ…!!!
混ぜろ……!
洗濯機よりも速く……!!
「まずは麺と具を一気に掻き混ぜる」
貼り紙に書かれていた通りにする。
太い麺にタレが絡まり、
具が絡まり、丼内の世界が絡まっていく。
<なんだこりゃ……!
強いっ…!思ってたより……!
圧倒的に強いっ………!>
"油そば?汁なしラーメン?
普通のラーメンのほうが美味いだろう"
そんな声を吹き飛ばす……!
未曾有の高性能ラーメンっ…!!!
麺を食べおおしたのち……!
付属のご飯を投入……!
そしてタレと混ぜ合わせる………!
初手に魅せた絶景は、もうない。
しかし、この局面こそがクライマックス。
新機軸……!
放り込んだ白米は私の心に風穴を開け、
そこから新風が吹き込んでくる。
夜、床に就いてもなお……
自分の体内から湧き出るニンニクの香りを感じ続けていた…。
◆ マルトクラーメン
(高知県香南市野市町西野2217)
営業時間/
11:00~15:00
17:30~22:00
定休日/水曜日
駐車場/有