家から少し遠くても、食べに行きたいうどんがある。
暇を見つけて、私はそれを食べに行く。
いつもは須崎市から入るところを、日高村から入った佐川町。
そこに大した理由はない。
ただただ、なんとなく日高村を通って行ってみるのも悪くない気がしただけだ。
穏やかに広がる田園。
風に揺れる緑。
アクセルを踏んで目指す、タコ。
通称「タコ公園」前の交差点を左折して、
私は何度目かの場所へ達した。
『とがの藤家』
14時を回ろうとしていた。
木の戸を横に引いて中へ入る。
綺麗なお姉さん店員さんがいた。
目が合った。キュンキュンした。
褐色の木の長いテーブルで中年の男性が一人、白い麺をすすっている。
奥の厨房に大将。
目が合った。キュンキュンした。
空いていたし、別に一階でも良かったのだけれど、
私は靴を脱いで座敷へ上がると、急な傾斜の階段を踏んで二階へ上がった。
<好きなんだよなぁ・・・!
なんとかと煙は高い所がっ・・・!>
柔らかな畳の感触を足の裏で感じながら、
窓際の席の座布団に腰を下ろした。座布団フワフワ。
それから程無くして、
お姉さん店員さんも二階へ上がってきて、
コップに冷たいお茶を入れてくれる。
薄い肌色した細くて長い指に目を奪われながら、
小声で恐縮。
「あ・・・あぁっ・・・すいません・・・!」
注文したあとは、外の風景を見たり、中の風景を見たり、
とにかくキョロキョロして過ごした。
象の足みたいに太い梁。
吊るされた電球。扇風機。昔ながらの金色のやかん。
<いいなぁ・・・この感じ・・・!
とがの藤家の佇まい・・・雰囲気は・・・何度来ても麗しいっ・・・!>
しばらくして、またお姉さん店員さんが階段を上ってきた。
お姉さんは静かに歩み寄ると、
手に持っていた盆を私の前に置いた。
「お待たせしましたぁー」
可愛らしく言いながらも、
そのときのお姉さんは不適に微笑んでいて・・・。
たしかに聞こえた、お姉さんの心の声。
"アンタ・・・来るたんびに馬鹿みたいに特盛特盛言うて・・・!
今日のは凄いきにのぉ・・・!舐めとったら逝くでぇっ・・・!"
『肉つけ(特盛)』
<あわわわわわ・・・!
嬉しいやら怖いやら・・・!>
とがの藤家放ちし特盛の攻撃・・・!
平らな皿に盛られたそれは・・・!
普段よりも強く映る・・・!
山・・・山・・・山・・・!
白い山・・・!!
雪山っ・・・!
<ううぅ・・・神懸かり的絶景・・・!
手が震える・・・心が震える・・・欲しすぎて震えるっ・・・!>
ナスや牛肉が浮かぶ濃い色のつけ出汁。
そこに白い麺を投入!生唾を飲み込みながらである!
L字に切り立ったエッジは・・・!
とがの藤家のスペシャルエッジっ・・・!
<よくあるU字型のエッジじゃない・・・L字型・・・!
表面に細かな凹凸・・・それが連れてくる出汁・・・滑らかな喉越し・・・!>
ありがたいっ・・・!
ありがたいっ・・・!
一本一本が物凄く長い麺を、
どうにかこうにか、つけ出汁へ導きながら、"飲む"。
見た目の色から受ける印象ほど濃くない出汁は、麺の味を殺さない。
そしてなにより麺と出汁が、とっても仲良し。協奏している。
<プリプリ食感に・・・!
ほんのり絡む甘い出汁・・・!>
圧倒的・・・!
悶絶っ・・・!
ありがとうございました。
『生しょうゆ・温(中盛)』
とがの藤家には、少し変わった創作うどんのようなものなど、
いろんなメニューがあるけれど、極めてシンプルな「しょうゆうどん」
これが今のところ、個人的に一番好きなとがの藤家のうどんの食べ方だったりする。
<麺を箸でつまんで持ち上げた瞬間に・・・!
フワッと優しく・・・小麦の香りが駆け抜ける・・・!>
『ちく天 & かき揚げ』
お馴染みの"BIGかき揚げ"。
<これは噛り付かなきゃダメ・・・!
箸で切ろうとなんてしちゃダメっ・・・!>
こうなるゆえっ・・・!
とがの藤家のかき揚げは・・・!
箸より強いっ・・・!
(※ ネタじゃなくてマジです!しかも折っちゃったの自分じゃないし・・・)
完食っ・・・!
家から少し遠くても、食べに行きたいうどんがある。
暇を見つけて、私はそれを食べに行く。
"うどん桃源郷"とも呼ばれるそこへ、
キュンキュンするために、食べに行く。
◆ 手打ちうどん とがの藤家
(高知県高岡郡佐川町中組1325-1)
営業時間/11時~17時(麺切れまで)
定休日/火曜日
営業形態/一般店
駐車場/その辺
(肉つけ750円、生しょうゆ450円、ザブザブ550円、タイカレー700円、
釜あげパスタ700円、やさい天うどん550円、中盛50円増、大盛100円増、特盛200円増など)
『手打ちうどんとがの藤家』の場所はココ!