私の生姜だけは何度か参加している「草や感謝祭」
春と秋、年2回開催されているそれに私もいつかは行ってみたいと思っていた。
思っていたけれども、例年その時期は忙しくてなかなか行くことができなかった。
しかし、驚異的な早さでジンジャーランドに生姜を寝かせ終えた今年、ついにチャンス到来。
4月28日、日曜日。
私は「草や」の緑の暖簾をくぐった。
<えぇっ・・・!めっちゃ人!多い・・・!>
私は一気に萎縮した。<ダメだ!これは想像以上!あまりにも人が多すぎる!>
大量の人でごった返す様に圧倒されて、一旦、暖簾をくぐって外に出た。
草や敷地内、滞在時間2秒。
<いったい俺は何をやっているんだ>
「草や」の外の道路に出て反省。
<ここまで来て中に入れなかったら俺は一生タダのヘタレ!>
自分に言い聞かせる。
<やっと来れた・・・この"草や感謝祭"というチャンス!
ここで掴まなきゃ・・・いつ掴むんだよッッッ・・・!>
私は腹を括って、再度「草や」の暖簾をくぐった。
<やっぱり人が多い!>
と私はまた萎縮した。その瞬間に知り合いのHさんと目が合った。
<やったー!知ってる人がいたー!>
たくさんの人でごった返す中で出会った、初めての顔見知り。
私は、Hさんにしがみ付いた。
大海原で溺れそうになっている最中に、漂流する大きな丸太を見つけて掴むみたいに。
そうしていると、ネット上では何年も前から知っているけれど、
お会いできていなかった「草や」の店主夫人oniyomeさんと初遭遇。
さらには「草や」の店主kusatuneさんにもお会いできて、
皆様に保護していただけるという理想的な流れ。
「くぅーん!くぅーん!」
と私は拾われた子犬のように鳴いた。
ある程度、落ち着いて周りを見てみる。
当初から一番の目当てだった「幻の山雀うどん」のブースには大量の人が並んでいた。
「こんなに並ぶもんなんですね!」と私は驚いた。
「いや午前中はもっと並んでいた、門の外まで・・・」とみんな口を揃えた。
さすがは幻の山雀うどん!
そのあと私はいったいどういうわけか、
誰だかよくわからない方たちにも写真を撮られて、アリャリャコリャリャになっていた。
<もっと俺が酔ってるときに会いたかったね!>
と私は思った。
ふと見ると、「幻の山雀うどん」のブースにできていた行列が、だいぶ落ち着いてきていた。
さっきまで人混みに隠れて見えなかった山雀さんの姿が見える。
私は山雀さんのほうに歩み寄った。
すると、すぐさま山雀さんに発見された。
「おぉ!王子!生姜おろして!」
と山雀さんは言った。
<えぇっ・・・!>
と私は思った。<そ・・・そんな無茶振りをッ・・・!>
湯気の彼方から炸裂する!
山雀さんジョーク!
いまから王子が生姜をおろすので、
このあとの人から、うどん1杯2000円に値上がりね!
みたいなことを山雀さんは明るい口調で仰った。
「生姜をおろすことなんて、年に2~3回しかないんですけど!」
と私は言って慌てた。そして心から願った。
<俺が俺の指をおろして、"血液ぶっかけ"になってしまっても、みんな引かないでねっ☆>
とにかく私はなんとか頑張って生姜をおろした。
携帯カメラのシャッター音が聞こえる。綺麗なお姉さんに写真を撮られている。
<もっと俺が酔ってるときに会いたかったね!>
と私は思った。<ごめんね!リアクションが薄くて!俺いまジキルだから!>
ハイドはアルコールの彼方に眠っている。
コミュ障は、人生の9割を損する。
私は緊張のあまり、意識を失いかけていた。
どこかで聞いた声が遠くに聞こえる・・・。
「にゃーのにゃー!」
「おぉ!お母さん!」
声の主は、「飲んだくれの果て」の"お母さん"こと、かえ♪さんだった。
(お母さんが来た直後に撮ってくれた1枚!まさに生姜をおろしている最中!)
お母さんが来てくれたことで、私は恐ろしくて行けなかった
「草や」の建物の裏にもなんとか行くことができた。
裏には、お知り合いのチャビーさんがいた。
何か食べていた。チャビーさんのブースも売り切れ寸前で、残り3食だという。
<そりゃ!いかん!ざんじ食べんといかん!>
私は華麗なる速攻劇にて、チャビーさんのイケてる感じのパンをGETした。
<なにこれ美味しい・・・!>
と私は思った。パクパク食べた。
<これ絶対お酒に合う!ビールでもワインでも焼酎でもウォッカでもバーボンでも!>
それから「ミヤタヤ」さんのお好み焼も食べた。
お母さんが購入したのを頂戴して食べた。
<ふわっ!ふわっ!>
と私は思った。<これも絶対お酒に合う!>
私の中でナニカが動き始めようとしていた。
ネジが外れそうだ・・・頭のネジが・・・。
<グゥゥゥゥ・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
グゥゥゥゥゥ・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・>
ああっ・・・!
それにしても酒が欲しいッ・・・!
某ファミーユというbarの某マスター・あっちゃんの顔が脳裏をよぎる。
某ラストチャンスというbarの某マスターと某Sイヤさんの顔も脳裏をよぎる。
けれども、私はまだ帰れない!帰るわけにはいかない!
あの幻のうどんを食べるまでは・・・!
(怒涛の後編へ続く・・・!)
『後編を読む』