「『どば』の『担々麺』を調査して来てくれ」
と黒ずくめの男から電話がかかってきたのは、コタツでみかんを食べていたときだった。
私は早速ブランと共に、知寄町にある『ラーメン・牛すじ処 どば』へ向かった。個人的にも『どば』を訪れるのは数年ぶりだ。
(このときは昼に行ったのに店舗画像は夜!…使いまわしだからだよ!)
午後2時が近かった。
だが店内にはまだたくさんの人がいた。
以前、来た頃より確実に客が増えている印象だ。
「担々麺、大盛で…」
私が注文すると、ブランは「同じものを」と言った。
もちろん彼は犬ではなく、すでに人間の姿になっている。
「今日はブランも食べるんだね」
「僕、担々麺…結構好きなんだ」
「へぇー。そうなんだ」
私がひょっとこみたいな顔をして頷くと、ブランは微笑した。
「それに担々麺は食べれるときに食べておかないと、どこでも食べれるわけじゃないからね」
「まぁ、どのラーメン屋にもあるメニューじゃないよね。どちらかと言うとラーメン屋さんよりも中華料理屋さんにあるメニューかも」
「あぁーそうかもねー」
と納得した表情を浮かべて、ブランはコップの水を飲んだ。
まるで喫茶店における女子トークみたいに、我々は微妙な盛り上がり具合をみせながら喋っていた。
そのときだった。
どばぁぁぁとッッッ!
担々麺大盛!ズゴーン!
普通の担々麺だと思うだろう。
でかい
んだよっ!
その担々麺……!
巨人につき!
GO!GO!
ジャイアンツッ!
そんなフレーズをドラゴンズファンの私にまで口ずさませる!
圧倒的っ…!
スケール……!!!
もうカメラのピントも麺に合わない!
合わせられない!
いや、合わさせてくれない!
「肉、いっぱい入ってんじゃんか…!」
赤褐色のスープの中に大量に沈んだ挽肉。海に沈んだ財宝、あるいは打ちっ放しの芝生の上に転がるゴルフボールを彷彿させる。
「お肉いっぱいだねぇ」
私が言うと、ブランも同調した。
「いっぱいだねぇ」
それから二人で声を合わせた。
「お肉いっぱいだねぇ」
うれし!
うれしおす!
「こういうときはなんて言うんだっけ?」
ブランが訊いてきたので、私は言ってやった。
「あぁっ…!
ありがたいっ…!」
変に奇を衒っていない、プニョプニョの麺。
これが逆にダルビッシュ有のストレート。つまりイイ。
なおも食べるごとに担々麺という球を投げ込んでくる『どば』
打てやしないっ…!
メジャーリーガーの球を素人が打つ……!
そんなこと………!
最初からできるわけがなかったんだ……!
「今の俺たちの力では『どば』に勝てない」
そう言う自分の眉間に皺が寄るのを感じた。
「そうだね。バッティングセンターに通って、もっとミート力を上げないと、だね」
ブランも厳しい表情を浮かべていた。
「ミート……。肉だけに、か。」
と私は高度なギャグを言ったあと、面白すぎて自分でも爆笑した。
レンゲにすくってスープを飲む。
液体と共に無数の挽肉が口の中に入ってくる。
「担々麺美味しいねぇ」
私が言うと、ブランも同調した。
「美味しいねぇ」
それから二人で声を合わせた。
「担々麺美味しいねぇ」
どばの記事一覧
ラーメン・牛すじ処 どばの店舗情報
所在地 | 高知県高知市知寄町2-2-3(地図) |
営業時間 | 11:00~21:00(LO.20:30) |
定休日 | 月、火 |
駐車場 | 有 |
店内 | ■カウンター席/有 ■テーブル席/有 ■座敷/無 |