「初めてやき、緊張する……」
夜の大津バイパスを走る。
暗い。夜だから、暗い。
車を停める。
店の駐車場に。
嫁は何度か来たことがあるらしい。
だから大丈夫だ。私は大丈夫だ。
『丸太小屋』
<こんな感じになってるんだ……>
数年来、開けたいと思っていても、
嫁の協力なしには開けることが出来なかった扉を開ける。
店の外観から想像していた通り、
それほど広くはない店内。
カウンター席が数席あって、
テーブル席が3卓か4卓ほどある。
全部、木で出来ている。
誰が見ても、
まさに丸太小屋。
全体的に木製っ…!!
<座れるかな……>
不安だったけれど、空席あり。
カウンター席に腰を下ろす。
<"生姜ラーメン"というのがある……!>
生姜農家的にときめいた。
ときめきメモリアル並みにときめいた。
けれども普通の『ラーメン』にした。
価格も最も高い900円『野菜ラーメン』に対して、わずか500円!
何の講釈を垂れているのかと思われるかもしれないが!
私は通常、ラーメンに置いてはわりと盛り盛りなラーメンを注文する!
うどんならまだしも!うどんならまだしもだ!
なのに、この局面でシンプルな
ラーメンを食べたかったのには理由があった。
なんとなくシンプルなラーメンが
食べたかったからだ。
水を見ながら待った。
20時間だ。
(すいません、嘘です。大げさです)
片隅にある、テレビジョンからは、
バラエティ番組が流れている。
そんなのもう目に入らない。
だって、いまから
丸太小屋のラーメンが出て来るんだよ!
耳、日曜。
目は土曜くらいでやりおおした。
ら。
女将さん…と言っていいのかわからないけれど、
奥にいてラーメンを拵えてくれている大将じゃないほうの
女性が、出来上がった『ラーメン』を出してくれた。
『ラーメン(大盛)』
並盛にした嫁の『ラーメン』と器が違う。
<看板に書かれていた"中華そば"!
その文言の通りのビジュアル……!>
チャーシューが2枚。
ネギにメンマにナルトが入っただけ。
圧倒的シンプル…!
言ってしまえば、
普通の見た目のラーメン。
<いつ前を通っても……!
丸太小屋にはたくさんの車が停まっている…!>
この普通のラーメンに……!
そんなにも人を惹きつける魅力があるというのか…!!
食べた瞬間、
駆け抜ける衝撃。
普通に見えるスープは、
普通じゃねぇっ………!
深い………!
スープの中に入っている素材の旨味が…!
ブワッと広がっていく感覚……!
その深さ………!
都営地下鉄大江戸線…!!
抜群の深度っ……!!!
変わった味じゃない……!
どこにでもあるような味……!
しかし………!
どこにもない味っ……!!
突き抜けた普通。
普通。本当に普通。
でも普通じゃない。
いわゆる普通の向こう側…!
こうして「向こう側シリーズ」に、
また新たなる1ページが刻まれたのだった。
◆ 丸太小屋
(高知県高知市大津乙1239-5)
営業時間/11:00~14:00、18:00~23:00
定休日/不定休
駐車場/有