家で晩酌しすぎて酔っていた。
<あぁ楽しい。これってみんなで飲んで酔っちゃえば、もっと楽しいんじゃね?>
布団の中でスマホをいじり、がちゃさんにメッセージを打った。
[何年か前のいつぞやのように夜中に突然お誘いしますけど…]
我ながら、なかなかロマンティックな書き出しだ。シェイクスピアかと思った。"何年か前のいつぞや"とは、過去にがちゃさんと二人で飲んだその夜のことを指したつもりだった。
ただ今回も二人きりだと、我々の仲が本気で疑われてしまいかねないので、というよりも、さらにあと二人ほど一緒に飲みたい人たちがいた。紅千鳥さんと、ムシマルさんだ。
[みんなで英屋(ひでや)とか楽しそうだと思うんですけど(*´Д`)]と結んで送信ボタンをタップした。
当日、ひろめ市場北側のBar『Sanctuary(サンクチュアリ)』で、がちゃさんと0次会をしていた。
まだ酔いも回っていないので、極めて落ち着いて飲んでいると、後ろから誰かに手で目隠しをされた。
「だーれだ!」という相手に対して、即座に「あっちゃん!?」と答えた。気持ちの悪い話、手の感触でわかった。
振り向くと、そこにはやはりあっちゃんがいた。あっちゃんは、ひろめ市場の中にあるBar『FAMILLE(ファミーユ)』で、かつてマスターを務めていた人で何かと気が合う。
あっちゃんはショットグラスに入れたテキーラをご馳走してくれた。ファミーユ時代からのしきたりで、一気に飲まなければならない。
アルコール度数40度のテキーラは、舌を痺れさせ、空きっ腹に勢いよく落ちてきた。ファミーユに通っていた時代は、これが日常だったけれど、何せ久々で……効っくぅぅぅぅ!
そんな私と対照的に、あっちゃんは涼しい表情を浮かべていた。さすがはTシャツの悪魔…。
ふと時間を確認した。
<あっ!いかん!>
急いで二杯目のハイボールを飲み干して、足早に『英屋』へ向かう。歩く振動で脳が揺れて酔いが回る。
英屋に着くと、店先でムシマルさんが待ってくれていた。
「あぁ!こんばんは!すいません!すいません!」
幹事が遅れてきて申し訳なかった。ムシマルさんは相変わらず、ムシマルさんだった(笑)。
店に入ると『英屋のぶろぐ。』でお馴染みの娘さんが出てきて、席に案内してくれた。
大将は先日と同じくカウンターの向こう側で忙しそうにしている。その厳しい表情で包丁を握る姿は、何だか『情熱大陸』という感じだ。「ジャジャジャーンジャーンジャーン!」と脳内で葉加瀬太郎がバイオリンを演奏した。
何を話したのか忘れてしまった程度の話をしながら待っていると、紅千鳥さんがやってきた。
姿を見るのは三度目で、まともにお話させていただくのは二度目のはずだが、お互いにブログを書いていてネット上で存在を意識し続けているからか、気心知れた友達という感じがする。勝手に。
私は心の中で、誰かにバンドのメンバー紹介風に言った。
<全員集まったところで、メンバー紹介です!
見た目は大人、酔うとがっちゃがちゃ!『自分的備忘録』 がちゃさん!
いっぱい食べられる、高知の胃袋!『ムシマルの(主に)高知うろうろ記2』 ムシマルさん!
千鳥足に潜む大人のダンディズム!『千鳥足のゆくえ』 紅千鳥さん!
そして『生姜農家の野望Online』 竜一!以上のメンバーで今夜はお届けします!>
我ながら千鳥さんのキャッチコピーが謎だったな、と自画自賛しながらオフ会という名の飲み会開始。
家では焼酎をロックで飲んでいるが、ハイボールを飲むことにした。今夜はあまり酔わないようにしなければならない。なぜならば若干一名、危険だとわかっている人がいるからだ。彼は悪酔いに定評のある私の数千倍の危うさを持っている。もちろんイニシャルG氏のことだ。
付き出しがきた。チャンバラと枝豆と豆腐のようなものが、長方形の一枚の皿に乗っていた。豆腐はカニミソのような香りを放ち、カニミソのような味をしている。
<これカニミソが入っちゅうが?>そのとき目の前のがちゃさんの口からも「カニミソ」という単語が発せられた。<やっぱりカニミソなが?毎回、英屋にくると変わったもんが食べれるな…>
個人的にカニミソは大好きだ。味も香りも好きだし、とにかく肝とか内臓とか塩辛とか、酒飲みが好きとされているものは大抵好きだ。中でもカニミソなんかは家ではなかなか食べられないので、あぁっ…それにしても……ありがたいっ……!
それから続々と料理が運ばれてくる。
(※料理についての詳細な感想はあらかた前回に書き記しているのと、構成と文章量の都合上、画像のみとさせていただきます。→ 『「美食酒房 英屋」の絶品牡蠣はもう牡蠣ではない!』)
『海鮮ちらし』
『刺身盛り』
(これは…もしや新子!!)
『うちわ海老の唐揚げ』
『金目鯛のあら炊き』
『黒毛和牛のステーキ』
『お吸い物』
気が付けば、かなりの時間が経っていた。意外と盛り上がり、話は尽きなかった。が、何を話したのかあまり覚えていない。それほど酔ってはいなかったはずだけれど覚えていないので、日本の未来を左右するような重大な話はしていないはずだ。
英屋を出て、もう一軒いこうという話になった。
仕事の関係で、飲まれていなかった紅千鳥さんと、ここでお別れ。
四人の中で一番精神が大人な人がいなくなった。あとは幹事竜一がしっかりして、Gさん…もとい、がちゃさんを最終的にホテルまでお届けしなければ。
でも大丈夫。今日はがちゃさん、大丈夫だ。
そう思ったのも束の間………。
二次会はここにいきたい!と、がちゃさん本人が豪語していった『GOLD』という店で、がっちゃがちゃ地獄、開幕。
(※ 本人の名誉と、読者の方に悪い驚きを与えてしまう恐れがあるため、詳細の執筆は自粛させていただきます!笑!)
それから行き付けのBar『LAST CHANCE(ラストチャンス)』へ、地獄モードのがちゃさんと、まともなムシマルさんと一緒に歩いた(ラストチャンスの画像は約二年半前に撮影したものです…)。
深夜1時を回った帯屋町アーケード街。店先のパラソルを仕舞って閉店しようとしていたラストチャンスのマスターと、お手伝いされているジイジことケンイチさんを引き留め、営業時間を延長してもらった(マスター、ケンイチさん、すいません!)。
いつものようにマスターの説法を一時間ほど聞いて帰る頃には、がちゃさんは、がっちゃがちゃを超えて目が座り、独自の世界に迷いこまれているようで、何か話しかけられるたびに意味不明な言動を繰り返していた。
「酔ったがちゃさんは危ない。そんなことはわかっていた。しかしここまでになってしまった彼は初めて見た」そんな話をムシマルさんとしながら、また夜のアーケード街を歩く。
「とてもじゃないが、俺たちでは制御できない。まるで何かに憑依されているみたいだ」
がちゃさんは、もはや、がちゃの形をした危険な生命体と化していた。
追手筋まで歩いてくると、何かトラブルがあったのか警察官がたくさん出ていた。その目の前で放送禁止用語を連発するがちゃさん。
「がちゃさんをこの状態で路上に放置しておくわけにはいかない。何とかホテルに入るまでは見届けなければ」
ホテルの前でお別れの挨拶をしたにもかかわらず、40分ほどが経っても依然としてホテルに入ってくれなかった。
「もう俺たちの手には負えねぇぜ(笑)」
まあ警察官も多いし何とかなるだろうと、ホテルの前の花壇に腰かけるがちゃさんに手を振った。
その後、彼は無事だったのだろうか。
翌朝になっても恐くて訊けなかったが、生きてはいる雰囲気だった。安心した。
(※ 数年前からずっと、歳も近くてブログの内容も似ているこのメンバー、男四人で飲むのが夢だったので、酔った勢いで誘って飲めて、あとの三人はどう思われたかわかりませんが(笑)個人的にはめっちゃ楽しかったです。急な誘いに応えてくださってありがとうと、みんなのお父さんお母さん親戚のおじさんおばさんに至るまでにお礼を申し上げたい気分です。ちなみにその"翌朝"の私的エピソードが昨日更新した二篇でした)