民家の一角を改装して作られている店内。
コンクリートの床。
そこに木のテーブルとイスが、いくつか並べられている。
ネットで見た他の方のブログの画像では、
座敷にテーブルが並んでいた記憶があるから、
その座敷は、もう使っていないのか、
客が多い時のみに開放しているのかもしれない。
雅では麺の茹で置きは一切しておらず、
すべて注文を受けてから湯掻いているため、
新しく開発した細麺だと6分、通常の太い麺だと15分ほどかかる、
と、おじさんが言う。
<太麺と細麺なら・・・太麺だな・・・!
まったく急いでもいねぇし・・・!>
よって・・・この局面・・・!
答えは・・・当然・・・!
太麺・・・!
単騎待ちっ・・・!
「あ・・・時間・・・大丈夫なんで・・・釜たまで・・・!」
狙うは・・・!
よもやの釜揚げ麺・・・!
釜玉っっっ・・・!
<俺は家を出る前から決めていた・・・!
今日の気分は釜たま・・・!だから例え槍が降ろうとも・・・!
降りしきる槍の中で・・・釜たまを食べるんだとっ・・・!>
待ち時間はそれほど長く感じなかった。
おじさんが、いろんな話をしてくれたし、
テーブルの上に置かれたファイルの中に、
よく知っているブロガーさん達が書いた雅の記事のプリントが挟まれていて、
それを読んでいると、まったく退屈しなかったからだ。
「なかなか面白く書いてくれちゅうでしょ・・・!?
ウチは全然宣伝しなくても・・・皆さんが宣伝してくれます・・・!」
そう言って、おじさんが嬉しそうに笑った。
そんなおじさんは、接客担当のようで、
店の奥で麺を打っているのが、おじさんの息子さんだと言う。
息子のことを語るおじさんの声は、なんだか弾んでいて、
<自慢の息子さんなんだぁ・・・!>と思った。
話していて、とても感じの良い方で、
聞こうとすれば、ちょっとした裏話も聞けそうだったのだけれど、
それは、あえて自重した。
例えば、好きな人のことは、
体の何処にホクロがあるかまで、すべて知っていたいと思う人もいれば、
裏の裏まで知る必要は無いと考える人もいる。
私は後者だ。
知らないままのほうが、興味が尽きない。
だから、少し聞きたかったことがあって、
それが喉元まで出掛かっていたのだけれど、堪えた。
飛び込むんだ・・・!
未知なる麺世界へっ・・・!
優しく微笑みながら穏やかな口調で話すおじさんの声が、
まるで田舎の秋の夜長に響くスズムシの音色のように、雅の店内を潤す。
だが・・・ゆったりとした時間が流れていたのは・・・ここまで・・・!
竜一を待ち構えていたのは・・・激しく熾烈な勝負の世界だった・・・!