気になる店があった。
でも、その店に行く踏ん切りがなかなか付かないでいた。
月日は流れた。
二年だ、二年という月日が流れた。
私はうどん屋に行く際に、
気軽に行くということはあまり無い。
うどん屋に行くということは、
喰うか喰われるかの勝負をしに行くということだし、性格的に内向きだし、
特に初めての店に出向くのには、決死の覚悟と勇気が要る。
だけど、蝉の鳴き声響く夏を迎えて、
無性にその店に行こうという気力が湧いてきた。
春は人を前向きにさせるけれど、
夏は人を強くする。
行こう・・・!
まだ見ぬ未開へっ・・・!
しかし、その店に簡単に辿り着けるとは思えなかった。
なぜならば、グーグルマップに示されたその店は、
地元の相当に土地勘のある者でないと、
通常ならば誰しもが迷うと判じられるような場所にあったからだ。
私の高級な軽自動車は、軽量化の為"あえて"カーナビを付けていない。
いわゆる、『レース仕様』
<クッ・・・ナビ無しじゃ・・・どう考えても迷いそうだぜ・・・!>
一抹の不安。
だが、行くしかない。
カーナビが付いてない・・・?
迷いそう・・・!?
そんなことが言い訳になるか・・・!
行くしかねぇんだよっ・・・!
行くしかっ・・・!
ここで行かなかったら・・・!
うどん中毒じゃねぇっ・・・!
携帯電話にグーグルマップの画像を入れて、
一路、高知市瀬戸へと進行。
店の周辺は入り組んだ住宅街。
かなり迷うかと思いきや、実際にはまったく迷わず、
意外とスンナリ辿り着いた。
『めん處 雅』
(めんどころ みやび)
<事前のリサーチでは・・・!
駐車場が有ると聞いていたが・・・何処だ・・・駐車場・・・!>
店の前に僅かばかりの空間があった。
そこかと思って停めようとしたのだけれど、
停めたら車が道路に半分ハミ出てしまう状態。
<あかん・・・これじゃあかーん・・・半分出とったらあかーん・・・!
てことは・・・!ここじゃねぇのか・・・!
だが・・・近くに駐車場らしき場所なんて・・・ねぇ・・・!>
車内で、さてどうしたものかと考えた。
とにかく、ここまで来て、
「駐車場が分からないから帰る」
というわけにもいかない。
今日という今日は・・・引き下がれねぇ・・・!
食わんことには帰られへんのや・・・!
<しかしダメ・・・これは・・・自己解決するには無理難題・・・!
それに・・・さっさと入らねぇと・・・昼のピーク時を迎えてちまう・・・!
聞いた方が早い・・・!聞こう・・・お店の人に・・・!>
一旦、中に入って店のおじさんに聞くと、
やはり店の前の空間が駐車場で、
そこに斜めに車を停めたら良いと言う。
<そうか・・・そうか・・・そうか・・・!
正解は斜め停めだったか・・・!>
さらに、店のおじさん。
わざわざ外に出て来てくれて、
バックで下がる車を誘導してくれる。
おじさんの優しさ、心遣いに感動。
「ようこそお越し下さいました・・・!
迷ったでしょ・・・!?」
「い・・・いいい・・・いや・・・インターネットに地図が載ってて・・・!
そそ・・・そ・・・それ見ながら来たら・・・案外大丈夫でした・・・!」
などと、おじさんと滑らかに会話をしながら、入店。
(エピソード2へ続く・・・!)
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