「兄ちゃんどっから飲みに来たが?」
「あぁ、僕・・・から来てます!」
深夜の高知市帯屋町。
私は"しじみラーメン"で有名な「呑兵衛屋台」という店で、
偶然カウンターの隣に居合わせた2人のオジサンたちと、酔って話をしていた。
「仕事なにしゆが?」
と私に近いほうに座っているオジサンが訊く。
「僕・・・農業やってるんですよ・・・」
と私は言った。「生姜農家です」
「ホンマに?」
とオジサンは驚いた表情を浮かべた。「農家に見えんね!」
「よう言われます・・・!」
と私は土佐弁の発音で言った。「大体みんなそう言う!」
「そうやろう!」
とオジサンが笑った。その隣に座っている連れのオジサンも笑った。
オジサンたち2人も農業関係の仕事をしているのだと言った。
「まだ結婚してないが?」
とオジサンが私に訊く。
「まだですねぇー」
カウンターの向こう側の厨房に置かれた寸胴から上がる湯気。
満席の店内。熱気と活気が入り混じる。
「ほえぇー!女いっぱいおるろ?」
オジサン、顔が赤い。<かなり飲んで来られたな!>と思った。
「こらこら!若い子に絡まれん!」
カウンターの向こう側でラーメンを拵えている店のオバチャンが、オジサンにそう言って笑う。
<楽しいから大丈夫!>
私が「呑兵衛屋台」を訪れるのは2度目だった。
この店の名物である「しじみラーメン」は初回に食べた。
そこで<今回は違うものを食べてみよう!>
と私は「天津麺」を注文した。
「天津麺」は、それから数分後に現れた。
麺上を分厚い玉子が覆っている。
<玉子!フンワリふわふわ!厚い!厚い!>
"餡"が溶けた温かなスープは、やわらかく喉を伝って胃に落ちていく。
そしてアルコールにヤラレタ内蔵を優しく包み込むように満たしていく。
<安らぐ・・・!>
と私は思った。
直前まで、超満員のbarの雰囲気と酒に呑まれて、
グチャグチャになっていたことが遥か昔のことのように感じられる。
玉子を食べて、麺を食べて、スープを飲む。体に沁みる。
そうしながら私はなおも2人のオジサンたちと、ナニカの話をずっとしていた。思い出せない。
私は先に食べ終えたので、席を立つことにした。
「帰るかえ?」
とオジサンが私に訊く。
「ええ!また!」
「おぅ!またどっかでおうたら!」
とオジサンが笑って手を振ってくれる。
(おうたら = 会ったら、の意)
「いやぁ・・・!」と私はわざと口先を尖らせて言った。
「明日の朝になったら、今日僕におうたことも全部忘れちょりそうやけどネッ!」
「兄ちゃんなかなか面白いなぁ!」
とオジサンは表情を崩した。
<一期一会やのぅ・・・>
わずかな時間で心に絡まった糸。
それを解きほぐすようにして、様々な音や声が入り混じる週末の「呑兵衛屋台」を出る。
「おそらくは、もう一生会うこともないだろうな」
外は肌寒かった。
酔っ払いの雄叫びがネオン街に響く。
私は自分の足取りを確認しながら前に向かって歩いた。いい夜だった。
※ 本編終了!
以下は初回に訪れた際の画像乱舞!
(初手は、やはり!呑兵衛屋台の名物!
しじみラーメンだった!)
(圧倒的!しじみ!いっぱい乗っている!)
(スープも飲み干して完食!翌朝!二日酔い!一切なし!
この夜もかなり呑んでいてベロンベロンだったにも関わらずだ!
おそるべし!しじみパワー!)
(餃子はパリッ!とサクッ!とモチッ!としていて香ばしかった!)
呑兵衛屋台の店舗情報
店名 | 呑兵衛屋台 |
所在地 | 高知県高知市帯屋町1-8-14(地図) |
営業時間 | 20:00~深夜2:00 |
定休日 | 日曜日 |
駐車場 | 無 |
店内 | ■カウンター/有 ■テーブル/有 ■座敷/無 |