昨年末。
南国市の市役所近くに、新しいラーメン店がオープンしたと聞いた。
だが私は人見知りでコミュ障。
いわゆるバンビちゃん。
未知なる者の懐に飛び込めるわけもなく、柱の陰から家政婦のように、あえて遠巻きに状況を見守っていた。
そうやって私が「全力バンビちゃんモード」でマゴマゴあいだにも、多くのヌードルブロガーの方々がその店に行かれ、ブログにレポートを掲載されていた。
そしてそれを私はコソコソ読んだ。
夜な夜な焼酎を煽りながら、少し酔ってクネクネしながら読んだ。
<ふふぇー!結構みんないい感じで書いてるな…!出始めのホンダ・フィットぐらいの雰囲気だぜ…>
自分もフィットしたいと思った。
スープと……!
ラーメンの麺とスープと……!
フィットしちゃいたいっ…!!
『ラーメン食堂 黒まる -KUROMARU-78』
闇夜を切り裂いて、入店。
たしか以前は喫茶店だったと記憶している店内、綺麗。
メニューに記載されたラーメンは「くろまる」「こくまる」「みそまる」の3種のみ。
<初めてだから…ここは基本の"くろまる"に…!>
しない。
あえて基本に逆らいたい。
川が北から南に流れているとすれば、私はあえて南から北に遡りたい。川の流れに逆らいたい。
そう。私は鮭。
川を上る新鮮な秋鮭。
鮭弁当だっ…!!
<定石なんて踏まねぇ…普通なんてロックじゃねぇ…鮭は鮭らしく…バンビはバンビらしく…!>
卓上の呼び出しボタンを押すと、驚くほど軽やかな音がした。
やってきた女性の店員さんに、軽やかにドモりながら注文した。
数分後に現れたそれは茶色。
『みそまる Cセット』
「Cセット」とは、味噌味の「みそまる」に、+200円で半チャーハンが付くお得なセットだ。
麺の増量は、大盛や特盛ではなく、替玉で注文する方式の模様。
つまり足りなかった場合には、無限に替玉することで限度一杯まで食べることも可能。そういうことだろうか。
<可愛いね!可愛いね!みそまるちゃん!可愛さとカッコよさを合わせ持っているっ…!>
煮玉子やモヤシやワカメが載ったルックスは、スタンダードだがイケている。
イケイケドンドン!まさしくイケ麺だ。
麺がぁー!麺がぁー!
見ろっ!麺が滝のようだ!
少し太めに映る麺。黄色い。
味噌の香りを連れてくる。ありがたい。
だが私はすすれない。
麺を折り畳むようにして口に運び、食べる。
口の中で麺が暴れる。
ブルンブルン暴れる。
ブルンッブルンッしてるねっ…!
麺がブルンッブルンッしてるねっ…!
大興奮だ。
初来店の「黒まる」
初体験の「みそまる」
今夜は眠れそうにない。
黒まるナイトフィーバーだ。
出汁がかなり効いているように感じる、甘めのスープ。
いろんなラーメンを食べ歩いている人ほど驚くのではないだろうか。
とにかく高知の他のラーメン店にないような味。
たとえば、空を見上げると茶色い鳥が飛んでいたとする。
高知の人ならば「ああ、トンビかー」ぐらいにしか思わないだろう。高知でトンビは珍しくない。
しかし、それがよく見るとプテラノドンだったとする。
さすがに驚くだろう。
私は最初これをトンビだと思っていた。
でも食べてみるとトンビじゃなかった。
みそまるは、プテラノドンだったのだよ。
半チャーハン…!
パラッ…パラッ…!!
この圧倒的パラパラ具合。
パラパラパラダイスだ。
そしてそのパラパラのチャーハンは、降下するパラシュートのように私の胃に落ちていった。
パラパラパラダイスだ。
後日ーーー。
味噌味の「みそまる」を食べたので、今度は醤油サイドのラーメンを食べたいなと、また『ラーメン食堂・黒まる』にやってきた。
今度は『こくまる Cセット』
やはり基本の「くろまる」を避けるように「こくまる」にしたのは、バンビちゃんのねじ曲がった乙女心ゆえだ。
醤油スープも味噌スープと同じく、甘め。
でも甘ったるい雰囲気ではなく、元々甘い味付けが苦手な自分でもイヤじゃない。
というか。
むしろ好き。
愛してる。
載っている具が「みそまる」とは、また違う仕様。
麺も「みそまる」より細く見える。
おなじ人がいないように、おなじラーメンなんてない。
チャーハンを口に入れると、チャーハンは口の中でパラパラと分裂した。
パラパラパラダイスだ。
◆ ラーメン食堂 黒まる -KUROMARU-78
(高知県南国市大埇甲2301-4)
営業時間/
11:00~14:30(L.O.14:00)
17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日/水曜日
駐車場/有