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BGMは、テレビから流れる音声。
穏やかな空気漂う『ちっ子亭』の店内。
暫し待っていると、背の低いおばちゃんが、
ニコニコと微笑みながら歩み寄ってきて、
眼前にスッと盆を滑り込ませた。
『しょうゆ(大)』
ついに現れし純白の麺線に、息を呑む。
泣く子も黙る艶やかさ・・・!
見とれるほどに美しい・・・!
新鮮な魚みたいに・・・!
ピカピカピカピカ・・・!
輝いてやがるっ・・・!!
千差万別である客の好みへ対応するためか、
別皿に盛られた「大根おろし」、そして「ネギ」
その両者をドーン・・・!
全速で・・・!
捲くりがけるっ・・・!
華麗に決めた・・・!
強襲の大胆ショット・・・!
見てくれ・・・!
これがちっ子亭の醤油うどん・・・!
その最終形態だっ・・・!!
イクぞっ・・・!
いよいよイクぞっ・・・!
麺・・・イクぞっ・・・!
ブルォォォン・・・!
割り箸を通して右手に伝わって来る、
麺と麺がぶつかり合って弾け合う感覚。
大型のバイクが奏でる音色みたいに、激しく放つ。
そんな麺が魅せる世界観は、
噛み込んだファーストインパクトから、
突き抜けて、独創的。
表面が固く、「ガシッ」としている。
しかし、その表面の層は薄く、更に噛み込むと、
次に、「シコッ」としたような「スーッ」と歯が入る、柔らかめの層が来る。
それから、アルデンテ。
芯部に達すると・・・!
力強く・・・強烈に魅せる・・・!
反発力っ・・・!!
固い・・・柔らかい・・・また固い・・・!
三段階アルデンテによる攻撃で・・・!
農民に襲い掛かるっ・・・!
<ぐほぉぉぉぉぉ・・・!舐めていた・・・!
俺はちっ子亭の実力を完全に甘く見ていた・・・!>
店前に「手打ちうどん」との表記は無く・・・!
「自家製麺」と書いている辺り・・・!
手打ちかどうかすら怪しいとさえ思っていた・・・!
別に手打ちじゃなくても美味けりゃいいんだが・・・!
やはり手打ちに比べると・・・そうじゃねぇ麺は・・・!
長打力が下落傾向・・・!その感はどうしてもある・・・!
だから当初・・・!
フォアボールから入られても驚きはしないと思っていたが・・・!
あろうことか・・・!
俺はいきなりの三球三振・・・!
まさか・・・可変アルデンテ・・・!
それも三段階に変化するタイプを放って来られるとは・・・!
固めに感じる表面の食感が・・・!
好みの分岐点になるだろうが・・・これは面白い麺だ・・・!
面白いよ・・・面白いよ・・・!
ちっ子さんのアルデンテ・・・!
その時、竜一、
気付く。
「あ・・・!」
しまった・・・!
俺は生姜農家なのに・・・!
生姜を入れることを忘れていた・・・!
「なーんか足りひんと思ったんよなぁっ・・・!」
<おろし生姜はテーブルに予め置かれている・・・!
くっ・・・!このパターンだったか・・・!>
(エピソード4へ続く・・・!)
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