セルフうどん さぬきや 後編/饒舌の釜玉

2012.08.09

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セルフうどん さぬきや 後編/饒舌の釜玉

2012.08.09

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そろりと戸を開けた。

セルフ店だということは、
事前の調査でわかっている。

注文カウンターまで進むと、店主らしき男性がいた。

店主"らしき"男性というか、
この人が間違いなく店主さんだと言い切れる。

地元タウン情報誌、「ほっとこうち6月号」の企画で、"うどん特集"があり、
その際に「さぬきや」と共に、眼前の男性が写真つきで掲載されていたからだ。

私の前には作業着姿の男性が二人並んでいた。

「ぶっかけの大で・・・!」
「ぶっかけの大で・・・!」

直前の二人は共に、「ぶっかけの大」

廻ってきた私の順。
「ぶっかけの大」が二人続いたこの局面。

私で"三連続ぶっかけ"となれば、
"スリーぶっかけ"でフィーバー。

心なしか、店主さんも、
フィーバーを望んでいるように見えた。

梅雨入り直前だった6月初旬。
サッパリと「ぶっかけ」・・・それも悪くない。

悪くないが、
そう簡単にフィーバーさせるわけにはいかない・・・!

「釜玉の大で・・・!」

店主さんから告げられた時間を正しくは覚えてはいないが、
とにかく、数分、時間がかかるけれど良いか、という旨を訊かれて、私は同意した。

すると、これに薬味を入れて待てと、
刺身醤油を入れるみたいな小皿を渡された。

私は、その小皿の容量の限界まで
「ネギ」や「天カス」や「生姜」を入れた。

上へ、上へ、山のように小皿に薬味を盛ってゆく。

<釜玉は・・・薬味をテンコ盛りにして食べたほうが・・・絶対に美味しい・・・!
小皿が小皿である理由はわからないでもないけれど・・・!
私とて・・・うどんファイターだ・・・!譲れん・・・!譲れはせんぞっ・・・!>

先に会計を終えて、席で待つ。

意外に広い「さぬきや」店内。
近隣で働く人々が昼食処として利用しているようで、作業着姿の男性が多い。

セルフうどんさぬきや 釜玉うどん(大) & ちく天

『釜玉うどん(大) & ちくわ天』

数分後、店のおばちゃんが持ってきてくれた、釜玉。
タマゴは、あらかじめ割り入れられているものの、混ぜられていない。

いわゆる、「目玉スタイル」(なんだそりゃ)である。

早速、グルリグルリと混ぜる。
すると、タマゴは魔法をかけられたみたいに、良い具合の半熟になりおおす!

セルフうどんさぬきや 釜玉アップ

<ぐやぁっ・・・旨そうじゃ・・・旨そうじゃ・・・!>

小皿に目一杯盛った薬味を、
混ぜおおし、半熟になりおおした釜玉の上に乗せたとき、私の人格は崩壊した。

<ふぉぉぉぉ・・・!
結構シコシコ系なんじゃのぉっ・・・!>

そのとき、釜玉が喋った。

「ワシ・・・最近・・・出番少ないねん・・・!
このごろ暑くなってきたやろ・・・!?
みんな、ぶっかけばっかり頼んで、たまに違うのきたと思ったら、かけやで・・・!」

「ほうほう・・・!」

「ワシ、すごい疎外感よ、俺もメニューに載ってんで・・・?
やのに・・・みんな、かけ、ぶっかけ・・・!竜ちゃん、どう思う・・・?」

「せやなぁ、俺がお前を頼むときも、スリーぶっかけ寸前の局面やったからなぁ・・・!」

釜玉は、なおも興奮気味に言った。

「やろ?やろ?ぶっかけとかフィーバーしまくり・・・!
釜玉さん、フィーバーどころか、ちょっと時間がかかるけどええか?言うたら、
じゃあいいです言われる始末よ・・・!可愛そうやろ・・・!?」

私は、懸命に釜玉の興奮を鎮めようとした。

「まぁ・・・みんな仕事の合間やったりして、時間無いやろしな・・・!
しゃあないでそれは・・・!」

一瞬、二人のあいだに沈黙の時が流れた。

「竜ちゃん・・・そこは、"しゃあない"やのうて、
"しょうがない"、もとい"生姜無い"言うて欲しかったな、アンタ生姜農家やし・・・!」

「あぁ・・・そうか・・・すまんすまん・・・!」

「せやけど、ワシ・・・やっぱり忙しい人からは敬遠されるんや・・・
生タマゴ嫌いの人からも・・・暑がりの人からも敬遠されて・・・うっ・・うっ・・・!」

私は、釜玉の目を見て語りかけた。

「なぁ、釜玉・・・!
たとえ他の誰もがお前に見向きもしなくても・・・
俺はお前のこと、注文するぜ・・・!」

「竜ちゃん・・・!」

セルフうどんさぬきや かけうどん(大) & ちく天

『かけうどん(大) & ちくわ天』

ちょっぴりフテクサレ気味の釜玉との会話を楽しんで、
外に出ると、雨は少しだけ小降りになっていた。

セルフうどん さぬきや

◆ セルフうどん さぬきや
(高知県高知市神田1073-1)
営業時間/11時~15時
定休日/月曜日
営業形態/セルフ
駐車場/12台

(釜玉300円、かけ250円、大[2玉]は100円増、ちくわ天80円など)
『さぬきや』の場所はココ・・・!