階段を上って、傘を置き、扉を開ける。
<ちゃんと食事しにくるのは初めてだな・・・>
と僕は思った。前回きたのは「ブロガー・オフ会」のときだった。
ヘラヘラと笑いながら中へ入ると、カウンターの向こう側に、オーナーシェフの山本さんがいた。
ヘラヘラと笑いながら、カウンター席に腰を下ろす。
オフ会のあとも、飲み会で何度かお会いしてはいるけれど、なんだか恥ずかしい・・・。
我々は、1人の男と女として向き合ったこともなければ、1人のシェフと客として向き合ったこともないのだ。
何度かお会いしてはいても、お互いがお互いのことを、実はそれほど詳しく知ってはいない気がする。
だから、ここで我々のあいだで唐突に恋が始まってしまったとしても、それはなんら不思議なことではない―――。
『resort dining Se Relaxer(ス・ルラクセ)』
アルチューとして進化を続ける僕は、この頃はいつも最初から「ウィスキー」あるいは「ウォッカ」のロックでロケットスタートを切るけれど、今日は「ス・ルラクセ」だ。
酒はほどほどに・・・ちゃんと料理を食べようと心に決めて、まずは「生ビール」を注文した。
<いやぁ・・・なんかちょっと緊張するぜ・・・!>
僕の心はソワソワしていた。まるで思春期の恋する乙女のように。
少ししてから、お店のお姉さんが、グラスに注いだ生ビールを持ってきてくれる。生ビールはプレモルだ。
お姉さんはすごく丁寧な言葉を使いながら、テーブルの上にコースターを置き、その上に慎重にグラスを乗せた。
<ああぁぁぁっ・・・恐縮です・・・!>
僕は恐縮した。そして生ビールをチビリと飲んだ。<旨いっ・・・!>
そして山本さんが出してくれた"付きだし"に僕は驚く。瞳孔、開く。
<うぉぉぉっ・・・!付きだしに・・・あの"土佐あかうし"・・・!それに衣を付けて揚げたもの・・・!ピンチョス・・・!>
僕が今夜「ス・ルラクセ」にきた大きな理由の一つに「土佐あかうし」がある。僕は「土佐あかうし」が食べたくてここにきた。
<いきなり土佐あかうしが食べられるなんて・・・!>
マジか・・・!目の前の現実を疑うほど嬉しい。<あかうしーーーっっっ・・・!>
いままでに僕は「土佐あかうし」の赤身を食べたことがなかった。
僕は高知県人として、"幻の牛"と呼ばれる「土佐あかうし」を・・・せめて一度ぐらいはちゃんと食べてみたかった。
そんな中で、唐突に現れてくれた、土佐あかうし。
俺のテンション・・・!
圧倒的!急上昇・・・!
一口食べる。
<プリップリッしてるー!>
歯応えが、とにかくプリップリッ。
和牛界のプリンセスプリンセス・・・!
と僕は小さく呟いた。
そしてメニューを見ながら、食べたいものを一通り、注文した。
黄色い照明が天井から吊るされている。
飲みすぎたら制御不能になる僕の精神の手綱を引くように、僕は生ビールをゆっくりと体の中に流し込んだ。
流し込んでいると、『安芸水産のちりめんじゃことねぎのピザ』が、先陣を切って焼きあがった。
切り分けられた断片を、ひとつ手に取って食べる。
<おっ・・・!おっ・・・!>
生地がサクサク・・・!さらにモチモチ・・・!
それに!チリメンジャコ!ネギ!チーズの攻撃力・・・!
<美味しい・・・!>
と僕は思った。<これは・・・!>
ビールが進む・・・!
むしろ焼酎が欲しい・・・!
ピザには・・・焼酎だっ・・・!
(焼酎は、お店で久しぶりに見かけた"晴耕雨読"!)
と言いながら、僕はワインも飲む。
<刺激的・・・発泡・・・!>
やっぱりピザにはスパークリングワインだ!
酒だったら何でもいい!
という言葉が脳裏をよぎったけれど、僕はその言葉を瞬間的に打ち消した。
飲みすぎないように気を付けながら、ガブガブ飲んでいると、『夏野菜のトマトチーズ焼き』がきた。
<色・・・鮮やか・・・!>
見た目から攻撃力が高い。<圧倒的!鮮明・・・!>
僕は手に取ったフォークを、トマトチーズの泉へ刺す。
すると中から出てくる野菜たち。
<アスパラが入ってる・・・!>
1ヶ月ぐらい前から、ずっと密かに食べたかったアスパラ。歓喜。<オクラも入ってる!>
僕の好きな野菜がたくさん入っている。
嫌いな野菜・・・無いけれど・・・。
ズッキーニなども活躍するそれを食べているときに、"幻の牛"が現れた。
山本さんが、40分間休ませながら焼いてくれた牛。
『土佐あかうし もも 低温ロースト』
<はじめまして・・・!>
と僕は挨拶する。<キミが土佐あかうしなんだね・・・!>
今夜の主役の登場に、酒を飲む手が止まる。
<うわぁぁっっ・・・きたぁぁっっっ・・・!とある肉好きの方のブログを見たのがキッカケで、土佐あかうしを食べてみたいと思い始めてから数ヶ月・・・!どこに行けば土佐あかうしが食べられるのかを調べて・・・それが、ご存知!ルラクセ!で食べられる知ってから、さらに数ヶ月・・・!ついに・・・ついに・・・ありつける・・・!幻の牛にッッッ・・・!>
ワサビと塩を付けて食べるのがオススメだと、山本さんが教えてくれる。
僕はその通りに、ワサビと塩を付けて口へ運ぶ。
<おいひぃ・・・>
噛むたびに肉が反応する。ジューシー、否、ジュースィィー。
噛めば噛むほど味が出る。飲み込む。肉はやわらかく喉を通過する。口の中に脂が残らない。残っているのは肉の旨味だけ・・・!
あかうしは黒毛の牛に比べて脂が少なくて、肉本来の味が楽しめる、というようなことを事前に聞いていたけれど、なるほど・・・たしかになぁ・・・と僕は納得した。
さらに・・・赤身を食べたら内臓もね!
という、ありがちなようで、あまりないかもしれない考え方で、『和牛ホルモントマト煮』
たぶんおそらく、きっとフランスパンだと思われるパンの上に乗せて食べる。
食感サクサクのパン、モチモチのホルモン。
<美味しい・・・それしか言えねぇ・・・!>
カウンターに座っているので、目の前の厨房で料理を拵えている山本さんやスタッフの方の姿が、そのまま見える。
洗練された無駄のない動き。真剣な表情の山本さん。飲み会でお見かけしたときとは目つきがまったく違う。
<カッコイイ・・・>
と僕は思った。<俺も山本さんみたいな料理人になりたい・・・!>
それから少し、山本さんと土佐あかうしの話をしたりしながら、くれぐれも飲みすぎないように注意しながら、焼酎をガブガブ飲む。
そろそろ酩酊への歯車が回り始めたかな・・・と感じていると、
「今日たまたま土佐あかうしのホルモンが入ったから!」
と言って、山本さんは僕の前に皿を置く。
<おおぉっ・・・!すごい・・・!>
皿の上には、焼いた、ハチノス、センマイ、小腸(たぶん!)。
土佐あかうしのホルモンは、数が少ないので、通常は他の黒毛の牛のホルモンと混ぜて出荷されたりするため、土佐あかうしのホルモンが欲しい場合には、わざわざ別に取っておいてもらう必要があり、大変に貴重なのだそうだ。
<めっちゃコリコリ・・・!>
ハチノスを噛み締めながら、僕は感謝。<ありがたいっ・・・!>
そのとき、ふと隣を見ると、特大の三角オニギリに、誰かの手が伸びていた。
<いったい誰がこんなに大きなオニギリを食べているのだろう・・・>
と僕は手の主を見る。<あっ!ハマダさん・・・!>
なんと!その手の主は、こんじるさんのブログでお馴染み!
ハマダーさん・・・!ハマダーさんだった!
<わーい!ハマダさんきてくれたー!>
(画像の特大オニギリを・・・ハマダさんは、2口ぐらいで食べていた!笑)
最後に・・・!
山本さんとハマダさんと・・・!
記念撮影して!ごちそうさまでした!
◆ resort dining Se Relaxer (ス・ルラクセ)
(高知県高知市帯屋町2-1-34 Keiビル3F)
営業時間/18:00~24:00
定休日/月曜日(他、月2回不定休)