「久しぶりにアジアツアー、行ってみるか・・・」
私はそう言って身支度を始めた。
<着替え・・・いるかな・・・?>
と少し考える。だが実際に着替える可能性は、とても低そうな気がした。<まぁ、いっか・・・>
カバンに入れかけていたTシャツを、また元に戻す。
結局、着替えの服は1着も持って行かないことにした。
<と、なると・・・カバンもいらないか・・・>
着替えの服を詰めるカバンなど、もはや必要がなかった。
<手ぶらでアジアツアーか・・・>
私は高級な軽自動車に乗り込みながら、なにか納得して頷いた。<悪くない・・・>
だが鍵を高級な鍵穴に差込んだとき、重大なことに気が付く。
あ・・・。
俺・・・パスポートも持ってない・・・。
<でも・・・まぁなんとかなるさ・・・!>
いまから申請しても間に合わない。もはや開き直るしかない。それしか道はない。<よぉし!パスポートのことは、キレイサッパリ諦めた!>
私は右足でアクセルを一思いにドーン!と踏み込む。
すると高級な軽自動車は豪快なホイルスピンを起こして、F1マシンみたいに勢いよく発進した。
アジアに着いたのは、昼の食事時を少しすぎた頃だった。
・・・たしか現地時間で14時頃だったと記憶している。
<パスポートが無くても来れるとは・・・!ラッキーだった・・・!>
私は"伸び"をして、南国の空気をいっぱい吸い込んだ。<さすがは南国だ・・・!南国の空気って感じがする・・・!>
吸い込みすぎて気持ちが悪くなるほど、いっぱい空気を吸い込んでいると、お腹がグーグー鳴った。
<長旅の疲れからかお腹が減った・・・まずは腹ごしらえをしなくちゃ・・・>
アジアで食べるお昼ごはん。
<アジアンランチ・・・と、いきますかー!>
女性の店員さんが持って来てくれたのは、「生春巻き」や・・・その他いろんなオカズが1皿に盛られたものだった。
<オクラが入ってる!それにレンコンも・・・!>
私はたくさん盛られたその中から、瞬時に好物たちを見つけると、着物の帯をグルグル解く直前の悪代官みたいに悪い笑みを浮かべた。<ぐへっ・・・!ぐへっ・・・!>
アジアの食事は、なかなか私の口に合っている。
<美味しい・・・!わざわざここまできてよかったー!>
それらと一緒に出してくれた『トムヤムスープ』が、またイイ。
凶暴そうな赤の泉に浮かぶ、ネギの緑が鮮やかだ。
慎重に、ソロリ・・・ソロリと飲む。
<ぐはっ・・・!>
一口飲んだ瞬間に自分の顔がムンクの叫びみたいになるのを感じた。<ぬぉぉぉぉっ・・・!カライ・・・!>
しかし耐えられる。
程よい辛さだ。心地よい辛さだ。気持ちがいい辛さだ。
あぁっ・・・カッ・・・カッ・・・カライ・・・!
でも・・・カライのが・・・イイッ・・・!
<せっかくここまできたんだ・・・>
続いて『タイ風・汁ビーフン』も食べる。
きしめん、あるいはフィットチーネを彷彿させる平たい麺。
横綱・白鵬みたいに白い。
麺を食べる。スープを飲む。
<なんだかホッとする味・・・!>
私は名古屋みたいに、なごやんだ・・・和んだ。
・・・。
<せっかくここまできたんだ・・・>
締めに『アドボ丼(小)』をいただく。
飲んだあとの締めにラーメンを食べるとき、それはそれは幸せな時間だ。
それと同じぐらい、アジア料理の締めにアドボ丼を食べるのも、また幸せな時間と言える。
「ここまで・・・すべてがプロローグだったんだよ・・・」
と私はアドボ丼を食べながら呟く。
<そろそろ帰るか・・・>
私は膨れたお腹をスリスリ撫でながら立ち上がり、わざとらしく改めて言った。
「そろそろ帰るか・・・!
アジアの・・・南国から・・・!」
いつか・・・空想じゃないタイやベトナムに・・・行けるといいね・・・。
(右はメニュー画像です。クリックすると拡大して表示します・・・が、訪問したのは、かなり・・・かなり前だとお知らせします・・・汗)
◆ アジア食堂・歩屋(ほや)
(高知県南国市岡豊町江村47)
営業時間/11:00~17:00(L.O.16:30)
定休日/月曜日・火曜日(情報が古いので、要確認)
駐車場/有