最近太り気味だからヘルシーなものを食べようと思った。
どこが太っているのだと言う人に、お腹を見せてあげたいくらい太っている。いまのお腹は東京ドームの屋根くらい丸い。まったく笑えない。
ヘルシーなものといえば「豆腐」だ。
うどんは炭水化物だから、どうしても太る。うどんはダメだ。やっぱり豆腐だ。うどんを封印してでも豆腐を食べよう。
一路、高知市朝倉を目指す。
『一期一会 とうふ家』という豆腐料理の店があるらしい。
何かの情報誌で見かけた記憶があり、夜の店だと思っていたが、昼も営業されているということだった。
土佐道路から、あまり入ったことがない道を南に折れる。
<あぁっ!ここっ!>
店を囲むようにして駐車場があった。店のすぐ側の別の敷地にも駐車場があった。全部満車だった。
なかなか空きそうになかったので、近くのドラッグストアに寄ったりして時間を潰したあと、10分ほど経ってからまた行った。
<やった!>1台分だけ空いていた。
外観からはそれほど広く見えなかったのだけれど、中に入ってみると意外に広そう。入口が一般的な家の玄関みたいになっている。木を多く使った肌色の雰囲気が印象的だ。
<靴、脱がんといかん感じ?>
戸惑っていると、奥からお姉さんが出てきて言う。
「ただいま満席になっておりまして、少しお待ちください」
下駄箱がある。やはり靴を脱がないといけないようだ。
玄関先に用意された椅子に座って、しばらく待っていると呼ばれた。
お姉さんに続いて奥に歩いていく。大きなガラス窓の向こう側に中庭がある。なんだかお金持ちの家みたいだ。
指定された席に腰を下ろした。
メニューは5種。すべてセットメニュー。
<どどど……どれにしようっ………!>
最低でも1620円からと、うどん屋に比べると値段がかなり高い…。昼食に千円超え…。しかしここはうどん屋ではない。
<決めた!一番お手軽な「とうふ家お重ごはん」にする!『こんにゃくそば』も迷ったが…ここは豆腐屋……!やはり豆腐……!豆腐でいこう……!!>
綺麗な店内を眺めながらしばらく待っていると、それはやってきた。
小鉢に入れられた数種類のオカズ。そして……。
<円柱っ……!>
なんだろう!これは!巨大な円柱状のものが盆の隅に置かれている!
どうやら円柱は何段かに分かれているようだ。
一段目を開ける。<かき揚げ………?>
メニューと照合すると、『とうふと夏野菜のかき揚げ』だと判明。
二段目。『とうふ田楽』ほか、いろいろ。
三段目は、ごはん、ほかいろいろ。
ソーメン。
茶碗蒸しがあって、デザートの『豆乳ケーキ』
常日頃、「肉ぶっかけ」だけだったり、「釜玉」だけだったり、外で食べる昼食といえば一品料理と決まっている人間に、この攻勢はあまりにも強い。なんとなくセレブリティな気分になる。
そして注目の『ざるどうふ』
いつも食べている豆腐とは形状が違う。
<セレブ用の豆腐は丸いがや…!>
テーブル一杯に並ぶ。器が並ぶ。
昼間からパーティ!豆腐パーティ!
薬味を載せる。豆腐を食べる。
<うわぁぁぁ!お上品……!>
上品すぎて舌の上でとろけると言うよりも、むしろ舌が溶けそうだ。
良いとされているものは、大体何でも素材の味が強い。
この豆腐も例にもれず、大豆の香り、味、濃厚。
<俺の口の中に大豆が生えたんじゃないか?>
そんな気さえする、圧倒的大豆感。
豆腐はおかわり可能のようだけれど、申し訳なくておかわりできない。
<俺みたいな豆腐のことがよくわかってない奴が食べちゃってすみません…>
謝りたくなるくらい、豆腐に威厳がある。
いままで散々うどんを食べてきたが、ここにきて気が付いた。
同じ白いものでも、うどんと豆腐はまた違う。やっぱり違うのだと。
うどんは小麦がどうたらの世界だが、豆腐は大豆なのだ。
豆が、大豆が、大豆がっ!「大豆ですけど、どうもー」みたいな勢いでドンドン攻めてくる。
そして不思議と食べれば食べるほど痩せていく気がする。うどんでは味わえない感覚だ。<同じ色でもここまで違うとはね>
うどんほどのコシはないが、豆腐ならではのフワフワ感も悪くない。
初めての味、ピーナッツとうふ。うどん好きにはたまらないソーメンは出汁もシッカリ取られている雰囲気。見た目も涼しげな、夏野菜ととうふの寒天よせ。
1620円でも納得の満足度。
<この中で一番好きだったのは、田楽だな!>
香ばしい香り。焼酎に合いそう。いますぐ飲めないのが残念だ。
全部平らげる頃には、バッチリお腹も張った。
これだけ食べても大丈夫。豆腐だから大丈夫。
(メニューは2週間ごとに変更される模様です)