「汁うどんの大盛…」
イオンモール高知2階のフードコートにある『倉敷うどん ぶっかけふるいち』でうどんを食べるとき、映画の券、または映画を観たあとの半券を提示すると、本来100円増しの大盛が無料になると聞いて、注文ついでに尋ねてみた。
「あの…これ使えますか?」
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の半券だった(ちょっとだけ関連記事)。
「あ、使えますよ」男性の店員さんはそう言う。
<これで大盛無料になるんだよね?>訊きたかったが、コミュ障には荷が重かった。<370円+100円で本来は470円になるうどんが、半券の力で、たぶん370円になったはずだ。そのはずだ>
トッピングコーナーで、皿にちく天を取った。
すでに午後4時半になろうとしていた。
わずか3時間ほどあとに晩ごはんを食べることを思うと、いま食べるべきではないのは明白だが、うどんを食べたいという衝動が抑えきれなかった。どうせ同じ値段ならば大盛にしたい、という庶民感情も抑えきれなかった。
無論、これで晩ごはんが食べられなくなるなどということはない。不思議なことにいくらでも食べられる自信がある。
だが本当は食べてはいけない。食べられるか食べられないか、ではない。体重が増加の一途をたどるいま、食べてはいけないのだ。
わかっている。そんなことはわかっている。しかし止められない。イオンの中にはうどん屋がある。映画を観たあかつきには、食べて帰らないと気が済まない。目先のうどんを放棄できない。できるわけなどない。
大盛は無料になった。
時間も時間だ。それも平日だ。閑散とした広いフードコートの適当な席に腰をおろす。
さすがは大盛。うどんを載せた盆が重かった。結構な量がありそうだ。
『かけうどん』でも『素うどん』でもなく、『汁うどん』と呼ばれるそのシンプルなうどんの上に、皿から移した『ちく天』を載せて食べる。
カツオが効いた出汁と共に、やや太めにも感じる麺が入ってくる。
「♪さかなさかなさかな~♪さかな~を~たべ~ると~♪」
一時期よくスーパーマーケットで耳にした洗脳音楽が脳内で鳴り響く。「あたまあたまあたま~♪あたま~が~よく~なる~♪」
よくよく考えてみれば、私は年間にかなりの杯数のうどんを食べている。
うどんの出汁には大抵なんらかの魚が入っている。生醤油うどんなどには出汁が入っていないし、釜玉も醤油をかけて食べる場合には微妙だけれど、他は大抵出汁が入っている。
だから個人的理論では、うどんを食べまくった私の頭は超絶よくなっていると思われる。
ゆえに九九くらい秒速で言える。
ににんがし!にさんがろく!にし、としひさ!(※元・プロ野球選手、現・解説者)
カツオ出汁を衣にたっぷり含んだ、ちく天をかじると、衣の中から勢いよく汁が噴き出して口の中に充満する。油と出汁が混じり合って舌を包み、喉の奥へ落ちていく。
外国人しか出てこないハリウッド映画を2時間強にわたって観た直後に、うどんという日本食を食べていると、海外にいって帰ってきた日本の空港で久しぶりにうどんを食べている、そんな妙な気分になってくる。
実際にうどんを食べたのは、ほんの3日前のことなのに。
瞬く間に大盛を平らげて、頭がよくなるはずの出汁もほとんど全部飲んでしまった。
きっともう、IQが天井を超えた。大気圏突入だ。
器にわずかに残った出汁を一気に飲み干すと、ネギが気管に入りそうになって咳き込んだ。
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