午後3時をすぎていた。
後部座席に据えたチャイルドシートに座る、2歳の娘の頭を撫でて起こす。
「着いたよ!」
薄目でこちらを見ているがまだ眠そうだ。
「ラーメン食べに行こ?」
私が言うと娘は目をこすった。
「うん。ラーメン食べりゅ」
抱っこした状態で車から降ろし、お店の入口を目指す。
博多乃風 とんこつらーめん 大郷(高知市高須)
高知市高須の豚骨ラーメン店『大郷』。最近は来られていないが、もう何度も来ているお店だ。
数年ぶりにくぐる、入口の戸。
「相変わらず、感じのよい戸だ……」
大郷の営業時間には昼休憩がない
『大郷』には昼の休憩時間(アイドルタイム)がない。
「いざ外出しよう」というタイミングで子どもが「わたし眠い」、そういうサインを送ってきて、昼寝させないわけにはいかない。
そんな局面がよくある幼児連れに、午前11時から夜遅くまでずっと営業されているのは、非常に嬉しい要素である。
仕事の関係などで昼食時間が不規則になってしまう人にとっても、『大郷』みたいに昼休憩のないお店の存在はありがたいのではないだろうか。
大郷の店内は座敷2卓あり。子連れにおすすめ
カウンター席にテーブル席、それに加えて座敷が2卓ある『大郷』。
卓上には「紅生姜」「からし高菜」「からしモヤシ」が入った容器が置かれている。それらは食べ放題。
メニューブックの表紙には、スープへのこだわりが書かれている。
水と豚骨のみで20時間かけ、徹底的に甘味と旨味を引き出した、まぜものなしの100%豚骨スープ。(らーめん大郷のメニューブックより引用)
らーめん大郷のメニュー
様々なメニューが存在する、らーめん大郷。
通常の豚骨スープを使用したラーメンのほかに「黒豚骨」や「白豚骨」なども存在する。
からいラーメンもあれば、「つけ麺」もある。
「つけ麺いいなぁ……」
つけ麺好きの心が揺れる。
一品料理や、ごはんものもある。
セットメニューも充実している。
「ラーメン屋さんで中華飯セットはめずらしい……」
注文したかったが……。
「平日の日中は、提供されていないのか……」
諦めかけた、そのとき気付く。
きょう!日曜日じゃん!
土日祝日は、営業時間中ずっと注文可能である模様。
きたっ……!
中華飯の流れっ……!!
偶機の中華飯チャンス。
もちろん注文する。
黒豚チャーシューらーめん
初手は「黒豚チャーシューらーめん」。
白濁色のスープに無数のチャーシューが浮かんでいる。
豚のスープに豚が浮かぶ……。
素晴らしい世界観……!!
そのとき豚が現れた。
「久しぶり!僕は豚だブー!」と豚が言う。
私はすぐに気が付いた。
「もしやキミは豚くんかっ!?」
「そうだよ!僕は忘れた頃に現れる、豚くんさ!」
「ずいぶん久しぶりだなぁ」脳内に懐かしい記憶が蘇る。「いつ以来だっけ?」
たしか数年前に、彼とはどこかのラーメン屋で会話した記憶がある。だが最後に話したのはいつだったか、もう思い出せない。
「元気にしていたかい?」思い出せないことは多いが、鮮明に覚えていることもある。彼は豚の世界ではめずらしい"ナイスブタ"であるということだ。
「ぼちぼちかなぁ。最近は『大郷』で働いてんだ」と豚くんは近況を説明した。
なかなか伸びてるぜ……。
長いチャーシューを持ち上げて感心する私に、豚は微笑む。
「そうでしょう。大郷のチャーシューは"伸び型"なんだ」
伸び型のチャーシュー!
「どうりで長いわけだ……」
チャーハンはパラシットリ
黒豚チャーシューメンとセットにした「半チャーハン」は、一時期より流行のパラシットリ系。
口に含んだ瞬間はパラパラに感じるご飯粒が、そのままほどけずシットリと舌の上に残る。
「このチャーハンにも僕の仲間が入っているんだ」と豚くんは微笑む。
黒豚角煮らーめん
続いては「黒豚角煮ラーメン」。
モヤシ、ネギ、キクラゲ、「チャーシューメン」にも見られた具材に「温泉卵」が加えられている。
注文時に尋ねられた「ニンニク」の有無。チャーシューメンでは「なし」を選んだが、黒豚角煮ラーメンでは「あり」を選択した。
「なかなかいい匂いがするなぁ……」
角煮がどんぶりのフチに沿うように配置されている。白いのが温玉だ。
「これだけニンニクが入ると、あとで口が臭くなるだろうなぁ」私は苦笑した。
「口が臭いだけで、とやかく言うような人間と付き合う必要はないんだよ」そう言う豚くんのまなざしは真剣だ。
角煮を頬張る。
「やわらかい……!」
「僕の仲間を褒めてもらえて嬉しいよ」と、豚くんはまた微笑んだ。
豚骨ラーメンに紅生姜、からし高菜、からしモヤシをのせると、さらにおいしい
卓上の紅生姜、からし高菜、からしモヤシを途中からラーメンにのせる。
すると吹いてくる……。
博多乃風……!
豚骨ラーメン大郷の風が……!!
極力「薄味」にしているという『大郷』のラーメン。
もっと濃くしたい場合は、卓上に置かれた「ラーメンだれ」をかけてくれとのことだが、そのまま食べても十分パンチが効いている。
「僕のパンチ力は、メガ豚(とん)級だからね」と、豚くんは真顔で言った。
角煮と共に、細麺を口に運ぶ。
「豚の香りがする」獣臭い部分はあるが、それがかえっていい。「名古屋のラーメン屋さん『まさ春』を思い出す男らしさ……!」
関連記事:【愛知】「まさ春」名古屋ラーメンの名店「肉厚チャーシュー」が旨い
中華飯は、土日祝日と平日の夜のみセット可能
平日の昼間はセットにできない「半中華飯」。
「中華料理屋さんならまだしも、ラーメン屋さんで中華飯セットはめずらしい……」
希少価値にひかれて注文したそれは、野菜たっぷり。
「すさまじい量のハクサイだ……!」
エビ、イカ、それに加えてアサリも入る、海鮮中華飯。
あんかけに魚介出汁が染みている……!!
「中華飯にも僕の仲間が入っているんだ」豚くんは誇らしげな表情を浮かべている。
「考えてみれば、今回食べた4つのメニューすべてに"豚肉"が使われているんだなぁ」
「そうだよ」豚くんは微笑みながらうなずいた。「では、そろそろ……」
そろそろ?
「僕の順番がきたようだ」豚は宙を見上げた。そこには大郷の天井がある。
「豚くん……!」私は豚の言葉の意味を瞬時に理解した。
ぶたくぅぅぅん……!!!
豚くんはこちらに背を向けたまま手を振り、厨房へと歩いていく。
「またどこかで会おう」最後に豚くんはそう言った。
「会えるよ。きっとどこかで」
ほとんどのメニューに「豚」が使用されているはずの『大郷』。
大郷には豚が棲んでいる。
温玉は、思ったよりシッカリしていた……。
- 大郷関連記事:ラーメン3店!完全制覇の旅!1店目「博多乃風・らーめん大郷」
- 大郷関連記事:博多乃風 らーめん大郷 黒豚チャーシューらーめん
らーめん大郷の特徴まとめ
- 営業時間に昼休憩がないのがありがたい。
- 通常の豚骨ラーメンのほかに、黒豚骨、白豚骨なども存在する。
- 天津飯セットと中華飯セットは、平日の夜(18時~)と、土日祝日のみ注文可能。
博多乃風らーめん大郷の所在地、営業時間、定休日、駐車場
- 所在地/高知県高知市高須309ー6(地図)
- 営業時間/11:00~23:30
- 定休日/月曜日(祝日の場合は営業、翌日休み)
- 駐車場/有
- ■カウンター席/有 ■テーブル席/有 ■座敷/有
おすすめ記事:おすすめ高知ラーメンまとめ!