「伊勢崎町の住宅街に、うどん屋があるの知っちゅう?」
「いや知らん」
「なんか、民家みたいな所でやりよって、パッと見、うどん屋には見えん。
前通っても、気を付けて見よらなぁ、気付かんずく行き過ぎる。
けんど、まぁ美味しいき一回食べに行ってみて!」
今から10年ほど前。
その当時、よく行っていた個人経営の小さなカラオケ店の店主に紹介された。
それが、うどんに狂っていない人でも知っている、
高知でとても有名な老舗の名店、『麺房三宅』だった。
だけど、その頃は、うどんに全く興味が無くて、
その話を聞いても、「ふーん、そうなんだ」としか思わず、
薦められた三宅にも行くことは無かった。
(うどん中毒を発症した近年は、当然、三宅にも何回かお邪魔させて頂いて、
勝手に麺レポートまで書かさせて頂いているのだけど・・・。)
【ちなみに、三宅の記事はコチラ!】→ 『麺房三宅 冷やし牛玉ぶっかけ & 肉うどん』
時は経ち、2010年6月12日。
高知うどん界・・・。
激震・・・!
名店のDNA・・・!
『麺房』を継承する店・・・!
現る・・・!
『麺房 まつみ』!!
(店主は麺房三宅で修行された方だそうです)
「いらっしゃいませ!」
若く見える店主の男性と、
奥さんだと思われる女性が笑顔で迎えてくれる。
お二人とも、明るくて愛想がいい。
元来、根暗で内気で奥手で引っ込み思案で、
歩こうとして足を踏み出したら、
踏み出した一歩目で犬のウ○コを踏んじゃうようなボクとは大違いだ・・・。
と、自己嫌悪に陥りながら注文した。
直後、
尋ねられる。
「今から麺を茹でるので、お時間構いませんか?」
手打ちのうどん屋さんでありがちな、店主のその言葉に、
『それじゃ、いいです・・・』
そう言って帰ってしまう人を他店でも見かけることがある。
しかし、この時。
竜一の思考は、むしろ逆。
茹で置きじゃなくて、
茹で立てのうどんが食べられるなんて、最高・・・!
食べるばかりで、
うどんについて専門的な知識は何も無い私。
しかし、茹でてから時間が経つと、
麺の中心部にドンドンと水分が回って行って、
コシが落ちることぐらいは知っている。
店主の問いに、
「はい!」
と、目を輝かせて、首を縦にブルンブルンと振った。
小さくて可愛らしい店内。
木を使った和風の内装。
開けっ放しの出入り口から、そよそよと入ってくる昼下がりの穏やかな風。
気持ちがいい・・・。
眠ってしまいそう・・・。
夢心地・・・!
圧倒的、夢心地・・・!
その時、聞こえてくる、
軽快なリズム。
「トン!トン!トン!トン!」
め、めめめめめ・・・!
麺を・・・!
切ってる・・・!
注文を受けてから・・・!
切ってる・・・!
茹で立て・・・!
切り立て・・・!
興奮・・・!
興奮の余り・・・!
卒倒寸前・・・!
尚も、まつみの攻撃力、
止まるところを知らない。
「ジュワジュワジュワ!
パチパチパチ!」
天ぷら音だ・・・!
油が奏でる音色が、
どこまでも美しい。
これが着メロだったら、
年間ダウンロード数1位、確定。
漂って来る天ぷらの香ばしい香りに、
私の口からは、ヨダレが溢れて出て止まらなかった。
『冷しぶっかけ(特盛り) with E 』
(E=エビ天です・・・!)
トッピングにエビ天を頼んだら、何故かシシトウが付いてきた。
いつも付いているのか、今回たまたまオマケしてくれたのかは分からないけれど、
元シシトウ農家だということを抜きにしても、
シシトウの天ぷらは大好きだから、嬉しい。
それと同時に、
人間の気持ちとは、単純なものだと悟った。
何故ならこの時、シシトウ1本で、
竜一のテンションは、5000%もアップしていたのだから。
三宅を髣髴とさせる、
若干、平らな麺。
食感は、超強力ゴシのタイプではなく、
表面は柔らかいのだけど、噛んで行くに従って硬くなって行く、
表面と、芯との弾力差が大きいタイプ。
やはり、食感も三宅に似ているのだけど、
三宅よりも噛んだ瞬間の弾力は柔らかく感じる。
この個性を見つけた時。
心の中でニヤッとした。
最初、ここに来る前、
最も懸念していたこと。
「三宅のコピーだったら・・ヤだな・・・」
しかし、その懸念。
この時、一気に吹き飛ぶ。
三宅とまったく同じ、三宅のコピーのようなうどんを食べるんだったら、
車で5分で行けるほどの距離しか離れていない本家、三宅に行けばいいし、
まつみに行く意味は、あまり無い。
だが、このファーストインパクトの違い・・・!
これは紛れも無く、麺房まつみの個性・・・!
マツミ・アルデンテ・・・!
(こう書くと、なんか"マツコ・デラックス"っぽくない?)
"かきあげ"の常識を覆した、
『かきあげうどん(大盛り)』
(メニューには、『かきあげ(やさい天)』と表記されています)
天ぷら類、秀逸。
どれも衣がサクサクで美味しい。
温かい出汁に浸された麺は、
ぶっかけとはまた違った食感を奏でる。
この、まつみ然り、山田の『まるしん』然り、
同時期に出来た店では、『結』や、『匠平』
若い店主が経営する店が増えて来た。
自分や家族の人生を賭けて、
己の腕一本で世の中に、うどんという名の勝負手を打つ。
そういう姿を見て、
「自分も頑張らんといかん!」
と、毎回刺激を受けて、
腹以上に、心を満たされて店を出るのでありました。
◆ 麺房 まつみ(高知市塩田町)
営業時間/11時~20時
定休日/木曜日
営業形態/一般店
駐車場/2台(店の西側)
(冷しぶっかけ450円、かきあげ<やさい天>うどん600円、かけ350円、
エビ天100円、特盛250円増、大盛150円増、中盛80円増など)
『麺房まつみ』の場所はココ!