本手打ち讃岐うどんさかえ ぶっかけの章 前編/鎮静の本手打ち

2011.04.18

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本手打ち讃岐うどんさかえ ぶっかけの章 前編/鎮静の本手打ち

2011.04.18

生姜の定植開始予定を数日後に控えた、3月下旬。
竜一の心は揺れていた。

「これからしばらく・・・俺はうどんどころじゃなくなる・・・!
今・・・うどんを体内に取り込んでおかないと・・・!
冗談抜きに・・・畑で卒倒・・・!倒れる・・・!」

「この局面でのうどんは・・・いわば鎮静剤のようなもの・・・!
とりあえず食っておけば・・・!
あとは・・・どん兵衛やごんぶとで何とか凌ぎ切れるはず・・・!」

「しかし・・・どこに行くかだ・・・!」

「長ければ一ヶ月に及ぶ生姜の定植・・・そんな長期間・・・!
生半可なアルデンテの装甲では持ち堪えられない・・・!」

「纏わば最強クラス・・・!」

「長期間の麺欠乏を強いられることが確実な今・・・!
俺に必要なのは・・・顎を砕き散らすような・・・!
強烈で獰猛な・・・メガトン級のアルデンテ・・・!!」

"竜一・・・!
脳内から搾り出す・・・!"

"圧倒的・・・うどん屋を・・・!"

あぁっ・・・!
あぁっ・・・!

ぐぼっ・・・!

出て・・・くる・・・!
出て・・・!くる・・・!

俺の脳ミソの奥底から・・・!
湧き出てくる・・・!!!!!

しゃ・・・しゃきゃ・・・うぇ・・・!
しゃ・・・くぁ・・・うぇ・・・!

"思慮の果てに導き出した・・・!
ひとつの答え・・・!"

そのうどん屋・・・!
手打ちにあらず・・・!

「本手打ちうどん」であるっ・・・!

来たっ・・・!

本手打ち讃岐うどん さかえ

圧倒的・・・さかえ・・・!
(本手打ち讃岐うどん さかえ)

この日も・・・!
当然・・・開店勝負・・・!

長年の経験から到着時間を割り出し・・・!
11時の開店時刻から5分以内には店内に滑り込む・・・!

だが・・・!

<ぐはっ・・・さすがは高知中東部の雄・・・!
既に席は7割ほど埋まってやがる・・・!>

<しかし・・・残りの3割・・・!
それこそが・・・千載一遇の空席・・・!
決まった・・・!俺の作戦勝ち・・・!>

さかえのオーダーは五択。
メニューは、『かけ、しょうゆ、ぶっかけ、かま玉、かまあげ』のみ。

通常、竜一の選択肢はさらに少なく、
『しょうゆ or かま玉』の二択。

『さかえ』においては、その2つが、
自分のストライクゾーンのド真ん中を射抜く"玉"なのだ。

しかし・・・この時・・・!
竜一は・・・その両者に"否"を呈す・・・!

<思えば・・・俺はさかえで・・・
『しょうゆ』や『かま玉』ばかり食べてきた・・・!
その所為か・・・なんだかいまいち・・・!
ぶっかけ出汁の味・・・それが思い出せねぇ・・・!>

<食べたことはあるはずだけれど・・・!
ぶっかけ出汁の味が・・・舌の記憶からかき消されてやがる・・・!>

<麺至上主義から来る・・・偏ったオーダー・・・!
愚考・・・浅はかな脳めっ・・・!>

<呼び覚ませ・・・!
さかえ・・・本手打ち・・・!>

ぶっかけ出汁の本質をっ・・・!

"歩み寄って来た女性の店員さんに・・・!
注文・・・!"

「ぶ・・・ぶっかけの大と・・・ちく天・・・!」

"すると・・・店員さん・・・!
歌うように復唱・・・!"

「ぶっかけの大とぉぉぉ~♪
ちく天ですねぇぇぇぇぇ~♪」

圧倒的・・・語尾・・・!
アゲアゲ・・・!

とにかく・・・超絶的に・・・!
楽しそう・・・!!

最近入った店員さんなのか知らんけど・・・イイっ・・・!
これこそさかえの新たなる個性になりうる至宝の存在・・・!

テレビから流れる選抜高校野球。
なんだかコチラまで楽しい気分になって、待つ。

出来上がるその時を・・・!

(後編へ続く)
後編はコチラっ・・・!

『本手打ち讃岐うどんさかえ ぶっかけの章 後編/愉悦のアルデンテ』