「人と出逢うということは、こんなにも重要で大きなことなんだ」
ここ数日、私はそれを強く実感している。
「職場の同僚たちと高知市内で飲んでいるから、あとで合流しないか」
という数少ない友人の一人からの呼びかけに、どうしようかと私は迷っていた。
今から考えても、その迷いは無理もないと思える。
なぜならば、あとで合流しないか、と言われても、
"あと"とは、きっと二次会も終わった"あと"のことで、おそらく随分と遅い時間になる。
それまで一滴たりとも酒を飲まずに、いられるか。
アタシはアナタの三次会要員じゃないのよ・・・!
なんて思って、
さらに、どうしようかと迷っていたとき。
紆余曲折あって、ルプちゃんの"お母さん"こと、
ブログ「飲んだくれの果て」を書かれている「かえ♪」さんが、
一緒に飲んでくれることになった。
これで私は三次会要員として、
酔っ払った状態で元気に参加できる。最高である。
『ダレヤスケ[ゴハン&オサケ] ケムリ』
「ケムリ」さんに行ってみたいと言ったのは、私だった。
他のブロガーさん達が書かれていて、名前は何度か耳にしたことがあるお店だ。
お母さんは何度か来たことがあるらしいけれど、私は初めて。
大好きなアーティストのコンサートに行く前みたいに、胸が高鳴る。
スタスタと歩いていくお母さんの後に付いて、
ビルの一階奥に少し入る。
何歩も歩かない内に、
お母さんは右手にある扉を引いた。
すると目の前に、茶系の色合いで和風だけれども、
どこか洒落ていて落ち着いた雰囲気ただよう空間が広がる。
「生姜屋さんですー!」
なんて丁寧にマスターに紹介してくれる、お母さん。
「えへへ、生姜屋ですー!」
なんてオチャメに照れながら言う、私。
誰が見ても可愛い。
<マスター、ボクは酔ったら・・・馬鹿になるんですよぉ・・・!
酔わなくても・・・!馬鹿ではありますがねぇ・・・!>
なんて些細な冗談は、言おうと思ったけれど言えずに、
心の中に留めておいた。
「こんなところに・・・こんじるさんが・・・!」
カウンターに貼られた"近藤印オフィシャルシール"を目にしたとき、
思わず私はそう呟いた。
まさか、このような形でこんじるさんと、
中一日での再会を果たせるとは思ってもみなかったので、感激してしまった。
まずは生ビールを。
<喉が渇いていたら・・・まろやかなトークに支障をきたす・・・!
とりあえず一杯・・・生で口を潤そぉぅっ・・・!話はそれからだっ・・・!>
(服について何か気が付いたことがあったとしても、指摘しないでください、ダメ、ゼッタイ)
「かんぱぁーい・・・!」
ジョッキとジョッキを互いにぶつけ合ったあと、
グビグビ飲み始める大阪で生まれた女やさかいー♪なお母さん。
高知代表飲んだくれ農民としても、負けてはいられない。
<高知の飲んだくれとして・・・高知の飲んだくれとして・・・!
大阪の飲んだくれには負けてらんねぇのよ・・・!>
などと鬼気迫りながら飲むも、
余裕の表情で黄金色した"水"を飲むお母さんには対抗できず、
ジョッキの底へ達するのは、お母さんのほうが遥か先だった。
高知の飲んだくれ農民・・・!
乾杯のあとに・・・完敗っ・・・!
<あかーん・・・全然あかーん・・・!
勝てない・・・!馬力が違う・・・!ウィペットとチワワぐらいっっっ・・・!>
その日の「ケムリ」さんのお通しは、「マグロの山かけ」だった。
ネギにカイワレ、海苔まで乗っていて、
こんなに豪勢なお通しが世の中にあるのかと、感銘を受けた。
<日頃・・・ボクは農作業でヘナヘナになっているわけだ・・・!
しかし山芋を出された日には・・・マスター・・・そりゃ元気になりますぜ・・・!>
いろんな意味でね・・・!
押し寄せる、タコ。
<お母さん・・・いっぱいタコがいるよ・・・!>
一切れ、摘んで口に運ぶ。
<なんだこれっ・・・美味しい・・・!>
そりゃもちろん、私だって生のタコなら何度も食べたことがある。
しかし、炙られているタコは初めて食べた。
<美味しい・・・!
コリコリとした食感・・・炙っているからこその・・・香ばしい風味・・・!
ジンワリと染み出る旨み・・・!>
すっかり感動してしまった私は、
もしも生まれ変われるなら、タコになって炙られたいとすら思った。
鶏の攻撃。
親鳥だろうか。
コリコリとした強い弾力がある。
噛めば噛むほど出る旨味。
<ビールが進むっ・・・!>
お皿が葉っぱの形になっているのが、すこぶるオシャレ。
養分とか吸えそうだし、光合成とか出来そうじゃないか。
豚もまくり込んでくる・・・!
<夏の暑い日・・・!
汗まみれの身体に頭からシャワーの水をかけたときみたいに・・・!
気持ちよく・・・!サッパリしているっっっ・・・!>
畳み掛けるエビの全速強襲・・・!
<ありがたいっ・・・!
ありがたいなぁっ・・・!>
「アンタいつまで水ばっか飲んどんねん・・・!」
というお母さんの視線を隣から感じて、二杯目からは焼酎に切り替えた。
銘柄は、「農家の嫁」
旅行で鹿児島に行った際に酒蔵見学した"あの"焼酎だ。
その姿をカウンターの上部に設けられた棚に見つけたとき、
<あぁっ・・・うぁぁああぁぁぁっ・・・!>と若干の錯乱に陥りながらも私は指さして、
「それっ!それっ!ロックで!」とニコヤカに叫んだのだった。
一口飲むと脳裏に浮かぶ、
酒蔵を案内してくれた、お姉さんの姿。
<お姉さん・・・俺・・・高知のケムリさんっていうお店で・・・!
酒蔵のみんなが一所懸命に作った農家の嫁を・・・飲んでるよぉっ・・・!>
胸に去来する感動を隣で飲んでいるお母さんにも伝えたくて、
しれぇー!と、お母さんに話を向けてみた。
「ボク、鹿児島に行って、農家の嫁の蔵元を見学したことがあるんですよ・・・!」
しかし、
お母さん、
反応薄い。
私も口下手で上手に話せる気がしなかったので、
とにかく農家の嫁について語るのは、やめておいた。
(後編へ続く・・・!)
『後編を読む』