「えぇぇっ・・・店が無い・・・!
ココにあるハズやのに・・・!」
週末の夜。
高知市の繁華街にある「55番街」
そこで私はうろたえていた。
焼鳥屋が、見つからない。
iPhoneのナビアプリで確認すると、
自分の位置を示す表示と、店の位置を示す表示が、ほとんど重なって見えた。
つまり、もうすでに私は、
目指す店へ到着していることになっている。
通常ならば、
眼前にドーン!と店が建っているハズのこの局面。
それなのに、店が無いのだ。
<おかしいじゃないか・・・!
どうなっているんだこれは・・・!>
少し混乱しながら、辺りをウロウロしていると、
ナビが示す建物がどれであるか、どうにかわかった。
しかし、そこは誰が見ても壁だった。
建物の壁だった。
<どうすれば・・・この壁の向こう側に行けるんだろう・・・!>
真剣に隠し扉を探していると、
なにやら小さな石柱を見つけた。
石柱には、「まろばし」と書かれていた。
<まろばし・・・!
俺が今まさに現在探している焼鳥屋の店名じゃないか・・・!>
しかし、そこにあるのは、やはり壁。
<隠し扉・・・!隠し扉どこよ・・・!>
ふと横を向くと、
さっきまで気が付きもしなかった通路があった。
<まさか・・・まろばしはあの奥・・・!>
開かれた・・・!
俺の眼前に今・・・光の道が・・・!
狭い通路を恐る恐る歩んで、扉を開けた。
小さな店内。
入ってスグのところに段差があった。
<土足厳禁というわけか・・・!>
"入口に段差があったら靴を脱ぐ"
これは日本人として当然の思考、和の心、心構えである。
だから私は靴を脱いだ。
靴を脱いで、段に上がった。
すると、店のお姉さんが歩み寄ってきて言う。
「あっ・・・!
靴のままでお上がりください・・・!」
<えぇっ・・・土足厳禁じゃないの・・・!?>
しくじった。
<恐い・・・!条件反射・・・恐い・・・!
俺は段差を見るや否や・・・何の躊躇いも無く靴を脱いでしまった・・・!>
予期せぬ失態に「えへへ」なんて照れ笑いを浮かべて誤魔化す私。
何事も無かったかのように涼しい顔の女性店員さん。
あとから知ったところによると、
「まろばし」は有名な人気店らしかった。
けれども、このとき、そんなことはまったく知らずに、
かましていたのは週末金曜日の夜、予約なしで訪ねるという大博打。
それでも一階の6人までが座れるカウンター席には、
2席だけ空きがあって、私と友人は幸運にも座れた。
本日の「まろばし」のカウンター席は、向かって左側から、
"スーツ姿のサラリーマン風 → スーツ姿のサラリーマン風→
私 → 友人 → スーツ姿のサラリーマン風 → スーツ姿のサラリーマン風"と相成った。
つまり、両脇をちゃんとしていそうな人たちに囲まれている。
茶髪でTシャツ姿のフラフラ農民が中央である。いいのか。
気にせず、飲む。
最初は生っ・・・!
合言葉は・・・!
「ビールは水やっ・・・!」
(by お母さん)
本日の付き出しは、お豆腐・・・!
<おやおや・・・お上品・・・!
しかもフワフワ・・・フワフワっ・・・!>
お野菜は、お豆腐と同時にやってきた。
卓上にある味噌を付けて食べてくれと言うから、
そのようにした。
<あぁっ・・・!
ウチの菜園で取れたキュウリよりも、コッチのほうが瑞々しくてイイッ・・・!>(ぇ
さてさて・・・!
イクぜ・・・!
焼鳥乱舞っ・・・!
『ねぎま』
<うわぁぁぁ・・・お肉がプリップリッ・・・!
プリップリッの迫力で襲い掛かってくる・・・!>
ネギマの大胆ショット・・・!
皮・・・刺さりまくり・・・!
<ムチムチッ・・・!
ムチムチの中から肉汁がいっぱい溢れてくるよぉっ・・・!>
肉汁が溢れて止まらない。
そして垂らした・・・。
全米が、肉汁を垂らした。
NOW on AIR......!!
軟骨の唐揚げ、山盛り・・・!
<コリコリだよぉっ・・・!
お母さん・・・コリコリしてるよぉっ・・・!>
コリコリのあとにブルンブルン。
そんな雰囲気だった。
生ビールを飲み干したあとは、
二杯目から焼酎ロックに切り替えた。
ケムリさんで見かけた『農家の嫁』と同じ蔵元の、
『明るい農村』があったので、それを注文してゴクゴク飲んだ。
『蓮根肉詰めハサミ揚げ』
レンコンの穴の中に鳥か豚かの肉が詰まっていて、
それに衣を付けて揚げている感じの、かなり手が込んだ一品。
<レンコン・・・!バリバリっ・・・!
ありがたいなぁ・・・バリバリ・・・ありがたいなぁっ・・・!>
美味しかったので、ネギマおかわり・・・!
圧倒的っ・・・ネギマリピート・・・!
<いいなぁ・・・焼鳥は美味しいし・・・!
明るい農村でスッカリ気分も明るくノッてきたし・・・!>
私はグラス片手にニヤリと笑って、
恐ろしく低い声でポツリと呟いた。
「あとは・・・あの人の身柄さえ確保できれば・・・
クク・・・!ククククク・・・!
いいねぇ・・・コスプレバー・・・行きたいねぇ・・・!」
週末の夜、私は高知市の繁華街にある焼鳥屋で、
ネギマをシーシー言わせながら、焼酎をあおっていた。
『おたくbar 高知ロワイヤル 前編/決戦、高知ロワイヤル』へ続く・・・!
(この日、三軒ハシゴの最後に行った「barラストチャンス」でのひとコマ・・・というか、ひとネタ・修正版・笑)