有名なつけ麺屋がある。
高知の麺好きならば、誰でも知っているような店だ。
けれども、そこは高知市土佐道路。
この界隈には、いくつかのうどん屋さんが点在していて、しかも粒揃い。
麺好きとはいっても、元来うどん派である私は、
何年も行きたいと思いながらも、
周辺のうどん屋さんに吸い寄せられてしまって、行けていなかった。
有名なつけ麺屋は、名を「ちっちょ」といった。
『つけ麺屋 ちっちょ』
<数え切れないほど前を通って・・・行列ができているのを何度も見かけて・・・!
どれほど旨いのだろうかと興味津々だったんだが・・・今日こそついに味わえる・・・!>
食券制だということは、あらかじめ知っていたので、
まずは入口の外にある券売機にて食券を買う。
<えぇぇと・・・どれにしようか・・・!>
券売機のボタンに記載されたメニュー名を、
一通り眺めていると、私の後ろにスーツを着たオジサンが並んだ。
少し焦る。
<あぁ・・・オジサンが待ってる・・・!
早くしなきゃ・・・えぇぇと・・・えぇぇと・・・!
あぁっ・・・!もうこれでいいや・・・!>
結局、すべてのメニューをシッカリと確認することはできないままに、
目に付いた品に決めた。
<なんとなく"牛ホルモンのつけ麺"っていうのにしてしまった・・・!
でもこれ・・・ちっちょの看板メニューっぽいから・・・!
一見の俺が食べるにはピッタリ・・・妥当な路線な気もする・・・!>
黒っぽい色を基調とした店内は、
決して広くないけれど、大人びた落ち着ける雰囲気だった。
お姉さんに食券を渡して、
指定された席に腰を下ろす。
ありゃっ・・・!
すでに水とおしぼりが用意されている・・・!
<こ・・・これはつまり・・・!
店に入る前・・・食券を買っている段階から・・・!
俺が入店することを店側に察知されていたということか・・・!>
アナタがここに来ることは決まっていたのよ・・・。
30年前からね・・・。
<ぐはぁっ・・・!
お・・・俺は・・・ちっちょの手のひらの上で・・・!
転がされているだけっ・・・!>
すべてを悟った私は、
ただぼんやりと天井の隅を見つめていた・・・。
『牛ホルモンのつけ麺(特盛)』
襲い掛かる、テンコ盛り。
<いやぁーん・・・いっぱいキタぁ・・・!
ありがたいっ・・・!ありがたいっ・・・!>
褐色の泉に沈むはプルップルッ・・・!
プルップルッのホルモン・・・!
私は、麺を箸で摘み上げると、
麺を泉に浸して存分に逝った。
逝きおおした・・・!
ズッシリ、重量級、
極太の麺線が私の心を掴み上げて溶かす。
<太い・・・!強いよ・・・!
弾力・・・!強いよ・・・>
怒涛の如く・・・!
獰猛に跳ね返す攻撃力っ・・・!
麺にツケダレが絡み付いて離れない。
たとえ、どんなに麺をツケダレに浸したとしても、
ともすれば、グチャグチャに混ぜ合わせたとしても、だ。
ツケダレは、濃厚な自身の存在感を輝かせるように発揮して、
麺はツケダレに飲み込まれることなく、芳醇な香りを漂い知らせる。
<あぁ・・・こういうことなのか・・・!>
つけ麺文化がそれほど根付いているとは思えない高知県で、
つけ麺の有名店として君臨している理由が、少しだけわかった気もした。
『天塩ラーメン・ランチセット(焼飯増量)』
ラーメンに、プラス200円で食べれるランチセット。
これは指定したラーメンに「半焼飯」が付くのだけれど、
さらに焼飯を増量するか、あるいはラーメンを増量するか、
選べると言うので、焼飯を増量することにした。
栄養バランスを取るためにも、麺ばかりでなく米をたくさん食べることは重要だ。
ちっちょの焼飯。
<薄味の傾向・・・!
パラパラしている・・・!>
驚愕は、天塩ラーメンだった。
<うほぉっ・・・食べたことがない感じ・・・!
高知では・・・おそらく他にない独特の気配漂わす塩スープ・・・!
きっと魚介系の出汁だと思うんだけれど・・・よくある魚介系塩スープとは全然違う・・・!>
圧倒的・・・!
深海っ・・・!
深いよ・・・。
底が・・・見えない・・・!
ちっちょ自慢のつけ麺もさることながら、
天塩ラーメンは衝撃的だった。未知との遭遇だった。
シメにデザート・・・!
『とろとろ杏仁ぷりん』
一口、二口、すくって頬張ると、
とろとろ杏仁ぷりんは、口に残るラーメンの油の名残をスッキリとろとろ消し去った。杏仁!
有名なつけ麺屋がある。
高知の麺好きならば、誰でも知っているような店だ。
有名なつけ麺屋は、名を「ちっちょ」といった。
◆ つけ麺屋 ちっちょ
(高知県高知市鴨部883-1)
営業時間/11:00~15:00(日曜日は16時まで),17:30~24:00
定休日/無
駐車場/店に向かって右側にわずかにあるが狭い
(牛ホルモンのつけ麺800円、天塩ラーメン600円、特盛100円増、ランチセット200円増)
『ちっちょ』の場所はココ・・・!