徳永英明の曲が流れていた。
次から次へと流れていた。
たしか「レイニーブルー」も流れていたように思う。
『さぬき 結』
(さぬき ゆい)
私も徳永英明は大好きだ。
うどんなんか注文せずに、
いつまでもここで聴いていたい気持ちを抑えて、店のお姉さんを呼んだ。
「し・・・醤油バター3玉・・・!」
「結」の良いところは、
こうやってうどんを"玉数"で注文できるところだ。
メニューに「大盛」や「大」・・・つまり"2玉"を指す表記はよくある中で、
「特盛」や「特大」といった3玉を指す表記がある店は、案外少ない。
<足りないの・・・全然足りないの・・・!
3玉じゃないと・・・!足りないの・・・!>
土佐山田の「まるしん」のように、
「特大」や「「特盛」の表記が無くても、言えば応じてくれる店もあるのだろうが、
メニューに表記されていないものは、なるべく注文しない主義だ。
その点、玉数単位での注文スタイルは、
「結」さんが、かつて修行したと聞く「岩蔵」さんにおいても同じだけれど、
とても素敵なやり方だと思う。
<1.5玉や2.5玉・・・半玉単位で調整することも可能だし・・・!
たとえ4玉5玉・・・!逝きたかったとしても・・・!
ご希望通り・・・!逝けるのだからっ・・・!>
『醤油バター(3玉)』
店のお姉さんの手を離れて、
眼前に舞い降りた、醤油バター。
麺上にはネギと生姜、
その周りに"きざみ海苔"が美しく散りばめられている。
<綺麗だなぁ・・・!
しかも可愛い・・・食べてしまいたいほどにっ・・・!>
私は醤油を回しがけると、
おもむろに割箸を手に取った。
<こんにちは・・・!>
数ヶ月ぶりに対峙する麺への挨拶もほどほどに、
箸先でつまみ上げる。
ネットリとスルスルと・・・
麺の一本一本がほどけてゆく。
白い湯気がモクモクと立ち昇って、
熱気と共に漂わすは、バター、小麦、醤油の香りが入り混る、
圧倒的・・・!
芳醇っ・・・!
口へ運ぶ。
「ややっ・・・!」
<えらく麺がプリプリしている・・・!
今まではここまでのプリプリ感は感じなかった・・・なのにプリプリッ・・・!
注文したメニューが関係しているのかもしれないけれど・・・それにしてもプリプリ・・・!>
いいや・・・!
コイツはプリプリどころじゃない・・・!
プリプリを凌ぐプリプリ・・・!
プリップリッ・・・!
そう・・・コイツは・・・!
この結の・・・醤油バターは・・・!
「プリプリではない・・・!
プリップリッであるっ・・・!」
<結ちゃん麺がプリップリッしてるねぇ・・・!
プリップリップリップリッ・・・!>
そうやって私が・・・!
プリップリッの麺線を噛み締めているあいだも・・・!
歌い続ける、徳永英明。
『冷しトマトぶっかけ(2玉)』
夏限定のひと品。
麺の上に、潰したトマトと潰していないトマトが乗っている。
漂い知らすは、イタリアの風。
<小麦の香り・・・味・・・コシ・・・!
麺はもちろん完全にうどんなのに・・・!
とにかくイタリアが全速で攻めてくる・・・!>
そんなイタリアの獰猛な攻撃を・・・!
ジャパンがギリギリで防いで協調・・・!
いつの間にか仲良くなっちゃってんだっ・・・!
もうそろそろ食べ終わろうかという頃になっても、
注文したはずの「ちく天」が来ないので心配していると、
奥さん(たぶん)が大将に一言訪ねるのが、厨房のほうから聞こえてきた。
「ちく天は・・・!?」
「あ・・・今から・・・!」
忘れられていた・・・。
普通に食べ進むと、
ちく天が来る頃には食べ終わってしまう勢いだった。
ちく天を持ってきたときに私が食べ終わっているのを見たら、
店側も私も、お互い気まずくなるだろうな、
なんて考えて、あえて箸を休めたりして時間調整した。
『ちくわ磯辺揚げ』
だが、その後に登場した「ちく天」は、揚げ立てアツアツ!
噛むと、ちくわの中から旨い油が染み出てきて、超絶気絶!悶絶!
俺がこのとき噛み締めていたのは・・・、
ちく天じゃなく・・・幸せそのものだった・・・。
◆ さぬき 結
(高知県高知市高須3丁目27-19)
営業時間/10時30分~16時
定休日/第2、第4、第5日曜日
営業形態/一般店
駐車場/店舗、向かって右側に有り
(醤油バター470円、冷しトマトぶっかけ580円、みそカツうどん680円、かけうどん380円、
ぶっかけうどん420円など、半玉増し50円増、一玉増し100円増)
『さぬき結』の場所はココ・・・!