<ココ・・・有名みたいだけど・・・
1度も行ったこと、ないんだよな・・・>
そんなことを何気なく思いながら、
国道32号線、香美市土佐山田町の繁藤にある、
「たい焼食堂」の前を高級な軽自動車で走っていた。
目的は、その先の大豊町にあったのだけれど、
上手く歯車が噛み合わなくて、大豊町へ到達ながらにして目的を達成できず・・・。
また私は元来た道を引き返していた。
<このガソリンが高い時代に・・・!
ただ大豊までドライブして帰ったんじゃ、やりきれない・・・!
あぁ・・・そうだ・・・せっかくだから、さっきの"たい焼食堂"へ寄ってみようか!>
軽い気持ちで寄ってみた。
綿菓子みたいに軽い気持ちで・・・。
『たい焼食堂』
時を刻むように、
打ち付けられたトタンに滲む錆。
店先には、店名にもなっている「たい焼」の"のぼり"もあったけれど、
ソフトクリームのほうが有名みたいなので、ソフトクリームにしようと思った。
戸を開ける。
すると温められた中の空気が、
歴史の息吹のごとくフワッと外へ駆け抜ける。
<積年のカミカゼ・・・キタッ・・・!>
中の空間は、それほど広くない。
テーブルが1つある。
その脇に1人の女性が、うつむき加減に座っている。
私の母親ぐらいの歳に見える。
冬なのに半袖だ。
けれども半袖でも構わないほどに、中は暖かい。
「す・・・すいません・・・!」
私の声に反応して、
女性はコチラを見た。
目が合った。
「ソフトクリーム・・・あります・・・?」
と私は訊く。
「あぁ・・・たぶん出ると思います」
と女性は言う。
<たぶん出る・・・?ジョークなのかこれは・・・!
俺が"あります?"なんていう訊きかたをしたから・・・!
"たぶん出る"とジョークを仰ったのか・・・!?>
いや・・・でも・・・!
<もしかすると本当にソフトクリームを出す機械の調子が悪くて、
出ないかもしれない・・・という意味なのだろうか・・・!>
ジョークだったら笑ったほうが良いのだろうけれど、
ジョークじゃなかったら・・・と思うと笑えない。
疑心暗鬼しながら「あはは」なんて、
サハラ砂漠みたいに乾いた笑いを浮かべている私に、オバチャンは言う。
「どっちにします?
コーヒーかブルーベリー」
「こ・・・コーヒー!」
バニラやストロベリーはない。
面白いことに『たい焼食堂』のソフトクリームは、
コーヒー味とブルーベリー味しかない。
なぜその2種なのだろうか、
と深く考える間も無く、でき上がるソフトクリーム。
「はい!どうぞ!
200円です・・・!」
<よかった・・・!ソフトクリーム・・・!
ちゃんと出てくれたんだ・・・!>
ジャーン・・・!
たい焼食堂!
ソフトクリーム!コーヒー味!
キラッ☆
食べて納得・・・!
繁藤の有名店の実力が炸裂する・・・!
<すごいっ・・・なにこれっ・・・!
こんなソフトクリームがあるのかっ・・・!
サッパリ・・・!スッキリ・・・!>
駆け抜ける・・・!
後味の爽快感ッッッ・・・!
<後に全然残らない・・・!
舌の上で融けた瞬間に消えるっ・・・!
甘さの余韻を残しながら・・・スッと消える!消え去るッッッ・・・!>
コイツ・・・!
タダのソフトクリームじゃないっ・・・!
<そうか・・・わかった・・・!
さっきオバチャンが・・・"たぶん出る"と言ったのは、
ジョークでも・・・機械の調子云々の話でもない・・・!>
MP・・・!
<つまりマジックパワーが足りたら"出ると思う"
という意味で言ったんだ・・・そうに違いないっ・・・!>
龍が如く・・・!
獰猛に襲い掛かる攻撃力っ・・・!
魔法のソフトクリームっ・・・!
ザラザラした独特の舌触り。
旨い、かなり旨い。
綿菓子みたいに軽い気持ちで立ち寄った、
「たい焼食堂」のソフトクリームは、
綿菓子よりも軽く、ふわりと融けた。
(店先に栄養ドリンクの自販機もあった。
それを見て思った。)
(なかなか"えいよう"な自販機じゃ!
年末で忙しいきに、みんなぁ栄養を付けたほうが"えいよう"な気がするぜよ!)
うおぉぉぉ・・・!
今朝は一段と冷えるッッッ・・・!
◆ たい焼食堂
(高知県香美市土佐山田町繁藤575)
『地図ッ・・・!』