ようやく家にたどり着いた。
身体は冷え切っていた。
氷点下。
雪化粧した大豊町の大杉駅で、震えながら1時間。
その後に乗ったJR列車も、暖房はロクに効いていなかった。
部屋に入ると、エアコンを点け、布団の上に倒れ込んだ。
眠った。
想像以上に体力を奪われていたのか、たくさんの時間が経過していた。
身体は依然として冷たかった。
<温まらない…全然温まらない…>
エアコンも布団も…俺を温められない…
俺を温めることができるのは…
うどんだけ……
受け取った『肉うどん』
その上に、ネギ、おろし生姜を自分でトッピング。
セルフ方式の高知市長浜『浜心うどん』
<九死に一生…かろうじて助かったが…あのとき大杉で本当に死ぬかと思った…!大杉は静かでいいところ…でも夜明け前…お外で遊ぶには向いていない…!寒い…それにしても寒かった…>
大変だった…!
自業自得とはいえ…本当に大変だった…!
よかった…本当によかった…!
またうどんを食べに来ることができて…!
本当によかった…!
あぁ…浜心…お願いだ…!
そのかけ出汁で……!
俺を温めてくれっ…!!
ドンブリの上に…立ち昇る白い湯気…!
湯気…湯気…水蒸気…!!
圧倒的…温泉…!
うどん露天風呂っ…!!
<あのとき俺は…孤独と寒さと恐怖の中で…すっと考えていた…!>
ずっとずっと温かいキミのことを…!
うどんのことを想っていたっ…!!
肉うどんの出汁。
その源泉に浸かり、アルデンテを噛み締める。
<麺…前より平べったくなってないか…気のせいか…!でも…よかった…俺はまたこうしてうどんを食べることができるんだ…>
命からがら、大杉より帰還。
冷え切り、疲れきった心と身体に、肉うどんの出汁が甘く沁みる。
列車の中で寝てはいけない。
◆ さぬき自家製麺 浜心うどん
(高知県高知市長浜5640)
営業時間/平日・祝祭日11:00~16:00(LO.15:30)
土日のみ・11:00~20:00(L0.19:30)※麺切れで終了
定休日/無
営業形態/セルフ
駐車場/有(広い)
『浜心うどん』の場所はココっ・・・!