『EP1を読む』
お吸い物を飲んでいると、アテが欲しくなった。
『本池澤』のタタキ丼は、もう食べ尽くした。
酒を飲んでいると、炙ったイカが食べたくなるように、液体にはアテが欲しくなる。
アテが欲しい。
アテを求めて
ひろめ市場内を、
アテもなく彷徨った。
とある店先で足を止めた。
<ぬおっ…ここにもあるのか…タタキ丼…!!>
『どんぶりの十三(じゅうぞう)』という店だった。
<ドンブリ屋のタタキ丼…!これは…期待値高めっ…!>
そうだ…これを…!
このタタキ丼をアテにしよう…!!
注文して、お兄さんに作ってもらう。
そして席に持ち帰る。
『どんぶりの十三・鰹タタキ丼』
(750円)
<『本池澤』は薬味が生姜だったけど…!十三は定番のニンニクスライス…!さらにワサビまで付いている…!>
ありがたいっ…!!
<ワサビまで……ワサビまで付けていただけるとは…!歓喜っ…!感涙っ…!感謝……圧倒的……感謝っ……!!>
ここで異変に気付く。
<本池澤と同じく…温かいお茶が付いているんだが…>
本池澤と十三…!
お茶の色が違う…!!
本池澤のお茶は黄緑…!
十三のお茶は…全力で茶色…!!
<大変なことに気付いてしまったぜ…!>
もしこれが「間違い探し選手権」ならば…!
確実に俺……優勝っ………!!
すべての間違い探しに正答を出して、食べる、タタキ丼。
いま、あの絶景が蘇る。
綺麗な鰹は、好きですか。
感動。
半泣きで食べる。
<好きです……俺…好きです……アナタが……鰹が……大好きです……!>
俺…ずっとアナタと一緒にいます…!
鰹……好きだよっ……鰹ォォォッッ……!!
恋が始まってしまったとき。
誰にもそれを止めることなんてできないんだ。
他人はもちろん、自分自身にさえできない。
でも5回だけなら、ブレーキが踏める。
鰹に向かって俺は踏むさ。
ブレーキペダルを5回踏むさ。
フレーキランプ。
5回点滅。
ア・イ・シ・テ・ルのサイン。
好きよ……!
好きよ…鰹ちゃん……!!
このひろめ市場の雑踏の中で…!
描こうぜ……!
俺たちの未来予想図を…!!
(どうしてこうなった!衝撃のEP3へ続く…!)
『EP3を読む』