じつは私が"隠れ貴族"だということは、
もはや誰しもがご存じだろう。
つい先日も貴族御用達の高級ホテルにて、
気軽に晩ごはんをいただいたほどだ。(参考文献)
いつも行き慣れているので、
それはもう、ファストフード店に入るときみたいな軽快さで入店した次第である。
決して財布の中身など気にしなかった。
だって貴族だもの。
そんな高貴な暮らしをしている私だが、
やっぱりうどんが好きだ。
<長いこと行ってないな………>
貴族な私は、とあるうどん店のことを思い浮かべた。
うどんの食べ歩きをしていると、
どうしても「よく行く店、あまり行かない店」が出てくる。
距離が遠かったり、
人気店であるがゆえに混雑を嫌い、
敬遠してしまう店というのが自然と出てくる。
土佐市の『よし乃』に着いたとき、
すでに午後2時を回っていた。
一般的にお昼ごはんは12時台としたものだろうが、私は貴族だ。
おうどんたべたりもしたけれど、私は貴族だ。
そんな時間制限には縛られない!
貴族は優雅にお昼ごはん。
庶民が食べ終わったころに、お昼ごはん。
当然だ。
だって貴族だもの。
<こ、こんなにあったとは……!>
貴族なりに驚いた。
数年ぶりに尋ねた『よし乃』
メニュー数、豊富。
数えてみようかと思ったけれど、
数えたくないくらい、たくさんある。
うどんメニューの裏にはセットメニュー。
丼物やちょっとしたオカズもある。
<値の張るやつにしよう………>
この局面、豪勢にいかなきゃ貴族じゃない。
しばらく待っていると、
注文した『海老天入り五目』がきた。
950円もするだけあって絢爛豪華。
器から具が若干溢れ出している。
<なんと大きいエビだろう……!
ジャンボジェット機並みの大きさじゃないか!>
このようなうどんを食べられる幸せ。
貴族でよかったと心底思う。
<おお、素晴らしい……!
これぞ上流階級の麺線っ……!>
滑らかな印象だが、
よく見ると表面に細かな凹凸がある。
こういう麺は舌触りがよく、
出汁が絡まりやすい。
間違いなく、その辺の不良よりもよく絡む。
<おっと!シコシコ!わりとシコシコ!>
箸で持ち上げた瞬間に
シコシコタイプの麺だと気が付いてはいたが、
実際に食べてみると想定よりもさらにシコシコしてくる。
<ありがたい……!>
と私は思った。
いつも様々なものに尊敬と敬意、
そして感謝の気持ちを持って接する。
それは貴族の世界でも非常に重要なことだ。
決して相手を見下したりしてはいけない。
私は常にうどんをうやまっている。
食べ終わったら、
「うどんさんありがとう!また遊んでね!」
ちゃんとそう言う。心の中で。
それが真の貴族というものだ。
『肉ぶっかけ』
静かな空気が漂う昼下がりの『よし乃』
大きなエビ天を口一杯に頬張る。
<うーん、ありがたい……!>