「あかーん!まだやった~!」
年明け、1月4日。
約一年ぶりに訪ねた、『阿波本舗』の前で、
竜一、立ち尽くす。
店の入り口のシャッターには、
新年は5日から営業するという旨が記されていた。
くっ・・・!ここまで来て・・・!
市内まで来て・・・!
このままでは引き下がれねぇ・・・!
どこか・・・!
違う麺屋さんは無いのか・・・!
ラーメンの気分だったけど・・・!
この際・・・もう麺だったら・・・!
細くて長いものだったら・・・何でもいいっ・・・!
その時。
うどんの女神、語りかけてくる。
「竜ちゃん・・・!あんた~!コメント欄で~!
オススメのうどん屋さん~教えてもろたやんか~!」
ハッ・・・!
そうだった・・・!
そういえば、以前、コメント欄でニャさんに、
老舗のうどん屋さんを教えてもらったんだった・・・!
うどんの女神のおかげで、バッチリ記憶を取り戻した竜一は、
タイヤスモークを上げながら車を発進させると、
市内中心部へと向かうのだった。
『本格手打うどん・そば 駒屋』
『手打うどん・そば』とある。
とりあえず、心の底から欲しいと思っていた「将棋の駒」
それは、売っていなさそうだ。
年季が入った扉を引くと、
小さな店内は、ほぼ満席。
他へ行こうか・・・。
過ぎった、思い。
しかし、すぐに見付けた。
座敷がひとテーブルだけ開いているっ・・・!
ラッキー!
だけど、これで新年早々、
今年の運をすべて使い果たしてしまった・・・。
そんな気もした。
店内には、年配の方が多い。
皆さん、常連さんなのだろうか。
大将や女将さんと、気さくに話している。
寒い日だった。
普段は、かけ出汁の入ったうどんを滅多に食べない私も、
今日は温まりたいと思って、頼んだ。
『天ぷらうどん(大盛)』
偶然、『本日のおすすめメニュー』に指定されていて、
普段、950円するものが、900円。
しかもなんと・・・!
おむすび2個付きっ・・・!
全体的に、値段設定が高めだとは思ったけれど、
街中だということを加味すれば、致し方ないことか。
漢字の『人』の字のように、クロスされたエビ天。
その下方、真ん中に大葉が盛り付けられている。
これは、つまり、
「人は大葉に支えられて生きているんだよ」
という大将からのメッセージなのだろうな、と感じながら食べた。
麺の食感。
非常に解りやすく解説すると、
ムニュムニュムニュ・・・シコっ・・・!
スルリと滑らかに喉を伝う、
喉越しの良い麺である。
出汁の中には、柚子の皮が刻み入れられていて、
柑橘独特の甘酸っぱい香りを漂い散らせている。
『カレーうどん(大盛)』
それほど濃くは無く、
出汁の味が強く出たカレー。
どこか懐かしさを感じる和風の味わいである。
(※ カレーの濃さは、注文時に指定すれば、
もっと濃くしたり薄くしたり、好みの濃さにして頂けるようです。竜一は指定せずに注文しました)
店の隅の上方に置かれたテレビ。
流れる正月特番。
「今日は○○さん来んねぇ~!」
テレビの下にある二人掛けほどの小さなカウンターで食べていたお婆さんが、
テーブルの後片付けをする女将さんと話している。
「今年は、いつからやりよったが?」
「店は今日からです~」
小さなテレビの中で、芸能人が爆笑しながら料理を作っている。
チラッと見たけれど、私はやっぱりうどんに夢中。
食べ終えたお婆さんは席を立つと、
女将さんにレジ越し、言葉をかけた。
「今年もよろしゅうにねぇ」
高知市、中心部。
コンクリートだらけの街の喧騒の中で、
ゆっくりと、ゆったりと。柔らかな時が流れていた。
◆ 本格手打うどん・そば 駒屋(高知市はりまや町2丁目)
営業時間/11時~18時30分
定休日/日曜日
営業形態/一般店
駐車場/有(店の北向かいに2台分)
(天ぷらうどん950円、カレーうどん680円など。大盛220円増)
『本格手打うどん・そば駒屋』の場所はココ!