いろりや 前編/幻のネバネバぶっかけ

2011.10.11

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いろりや 前編/幻のネバネバぶっかけ

2011.10.11

【2011年・晩夏の西部珍道中・6部作リンク】
『海洋堂 ホビー館 四万十』 → 『ホビー館・南の田舎道をゆく!』 →
→ 『この記事』 → 『いろりや 後編/魔法のうどん』 →
→ 『西部ウルルン滞在記 「道の駅・ビオスおおがた」で出逢ったぁー』 →
→ 『本場手打うどん 庄壽庵』


『海洋堂ホビー館四万十』から一路、南下。
黒潮町に辿り着くハズが、道を間違えてしまい、四万十市まで達した竜一。

西から東へと進行して、本来の目的地、
黒潮町入野にある、高知県西部の有名うどん店を目指す。

<あぁっ・・・!もう・・・!
道間違えたおかげで・・・めっちゃガソリンいったわ・・・!>

この頃、ガソリン、
レギュラー1リッター150円時代。

ガソリンを無駄に浪費してしまったことで、
うどんを食べる前に、テンションだだ下がり。

しかし、国道56号線をひた走り、目的地が近付くに連れて、
脳内は小麦の妄想で埋め尽くされ、段々と気が晴れてくる。

<俺・・・いろりや・・・!
は・つ・た・い・け・ん・・・!>

どんなうどんなんやろー・・・♪

<うどん屋やと思わせておいて・・・!
囲炉裏売ってる店やったら・・・それはそれでオモロイなぁ・・・♪>

夢、膨らみ、
興奮し過ぎて過呼吸になり始めた頃、
ついに到着。

いろりや

『いろりや』

<フフッ・・・やっと逢えたね・・・いろりやさん・・・!>

いろりや

時刻は15時を回ろうとしていた。
朝から何も食べていなくて、お腹はペコペコ。

出逢えた感動に浸る間も無く入店する。

曇り空を割って、柔らかく店内に注ぐ陽の光。
入ってスグ右側には、店名通りに立派な囲炉裏が見える。

囲炉裏の周りに配された席に座る勇気は当然無いから、
通常のテーブル席に座った。

<なにうどんを食べようかなぁ・・・!
あっ・・・そういえば・・・!>

着席した竜一の脳裏をよぎる、あるメニュー。

<そういえば・・・!
家を出る前に予習してきた・・・いろりやのホームページに・・・!
山芋とろろとオクラを使ったうどんが載ってたんや・・・!>

名はたしか・・・!
『ネバネバぶっかけ』・・・!

<俺・・・山芋好きやし・・・!
オクラも毎晩一緒に寝たいぐらい好きやから・・・!
それにしようかなぁ・・・!>

だが、テーブルの上に置かれたメニューの何処にも、
『ネバネバぶっかけ』などといううどんは記載されていない。

<あれ・・・!
無いっ・・・無いっ・・・!>

ネバネバぶっかけが無いっ・・・!

<せやけど・・・次に来られるのは・・・!
どんだけ先になるかわかんでぇ・・・!
出来ればこの機会に食べておきたい・・・!>

いろりやはんの・・・!
ネバネバぶっかけ・・・!

<そうや・・・!聞くんや・・・!
米粒ほどの勇気を振り絞って・・・店員さんに聞くんやっ・・・!>

けれども、私が座っているテーブル席から
店員さん達が居る厨房までは少し遠く、よぎる、若干の不安。

<俺の声量は蚊の羽音ほど・・・!
肺活量は・・・甲子園で7回に飛ばす風船すら膨らませられないほど・・・!
そんな俺に・・・あの厨房はあまりにも遠い・・・!>

厨房に居る店員さんに・・・!
自分の声が果たして届くのか・・・!

竜一を襲う・・・!
一抹の不安・・・!疑念っ・・・!

<フッ・・・なぁに・・・大したことじゃない・・・!
通常の俺ならばこの距離は絶対に無理・・・届くわけがねぇ・・・!
そこを何とかっていうだけの話さ・・・!>

厨房に背を向けて座っていた竜一。
とりあえず、振り返って厨房に居る店員さんに軽くお辞儀をしてみる。

すると・・・。

<きたっ・・・!きたっ・・・!
店員さん・・・きたっ・・・!>

なんと・・・!
歩み寄って来る店員さん・・・!

通じた・・・まさかの奇跡・・・!
圧倒的っ・・・テレパシー・・・!

<フフッ・・・!他愛も無い・・・!
うどん屋と俺の間に・・・言葉は要らねぇ・・・!
目と目を合わせれば・・・大抵のことは解り合えるものさ・・・!>

店員さんが来ても、
テレパシーが通じた感激などは、おくびにも出さず、
ポーカーフェイスを装う、農民・竜一。

早速、ネバネバの件を女性店員さんに、聞く。
ドモらないように、慎重に、ゆっくりと、だ。

「ネ・・・ネバ・・・ネバネバ・・・ぶ・・・っ・・・か・・・け・・・!
あ・・・り・・・ま・・・!す・・・!かっ・・・!」

前半を若干失敗したが、概ね問題ない。
脳内変換可能だと思われる範囲だ。

がっ・・・!

安心も束の間。

「すいませーん・・・♪あれは期間限定メニューなんで・・・!
もうやって無いんです・・・♪」

ガ━━Σ(´・ω・`。)━━━ン!!

<やっぱり無いかぁー・・・!>

そこで急遽、代替メニューを擁立しなければならなくなった竜一。

思案・・・!
巡らす・・・思考・・・!

<どうするどうするどうする・・・!
気分的には・・・not'かけ出汁・・・!
だったら・・・醤油か・・・ぶっかけ・・・!>

はっ・・・そうか・・・!!

その時・・・!
竜一の脳にほとばしる・・・!

圧倒的・・・!
閃光っ・・・!

見えた・・・今ハッキリと・・・!
この閉塞した状況の向こう側から射し込む・・・!

眩い光がっ・・・!

いろりや のぼり

店脇ののぼりに書かれていた言葉・・・!
アレがいろりや屈指のイケ麺・・・!

間違いねぇっ・・・!

<考えてもみろ・・・!
自信がねぇメニュー名が書かれたのぼりを・・・!
わざわざ店脇に立てるわけがねぇだろうがっ・・・!>

この葛藤、
実際には、わずか10秒ほど。

私の決断を待つ、女性店員さんに注文をする。

「か・・・かまたまぁ・・・!」

釜玉・・・漢字二文字、平仮名四文字。
字数にすれば短いが、私の想いのすべてを込め尽くした。

(後編へ続く・・・!)

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