私の中で、外食と言えば、うどん。
時間があれば、うどん。
隙さえあれば、うどん。
いくら食べても飽きない魔性の食べ物、
それが、「うどん」なのである。
しかし、ある日。
私は夢を見た。
夢の中で、うどんで全身をグルグル巻きにされている私。
巻き付いている、その白い麺をなんとか振り解き、自由を手に入れようとしたが、
敵わず、四苦八苦している最中に目が覚めた。
悪夢から現実世界に戻ってきた私の全身には、
うどんではなく、掛け布団が、ギュッと固く巻き付いていた。
そして、その時、思った。
<このままでは・・・残りの人生・・・先が思いやられる・・・!
俺は恋焦がれる乙女みたいにして・・・!
うどんのことばかり考えていたら・・・オチオチ安眠も出来ない・・・!>
ここは一旦・・・脳を・・・心を・・・!
好き過ぎる気持ちを・・・リセットするべきだ・・・!
<その為には・・・どうすればいい・・・!
どうすれば・・・どうすれば・・・うどんに侵された我を・・・!
平常・・・!平静な状態に戻すことが出来るのか・・・!>
夏の日の明け方、部屋のカーテンの隙間から、
徐々に明けて行く青白い色合いを見詰めながら思考を巡らせていると、
飛んできた白球を完璧にミートして、瞬く間にスタンドへ運ぶ打者みたいに、痛烈に閃いた。
うどんがいかんのやったら・・・!
ラーメンやっ・・・!!
<うどんと一歩距離を置くには・・・!
ラーメン・・・!うどんと共に数多くの者を狂わせてきた・・・!
卵と小麦のフルスイング麺こそが最適任者・・・!>
だけど、そう思い立ってスグにラーメンを食べに走るのは、
可愛いオネエチャンに食事に誘われた際に、
冴えない男がほとばしらさせる「溢れ出る欲望」みたいで、品が無い。
心の中で一週間先に予約を入れた。
一週間、土の上で働いた報酬として、
自分の胃にラーメンを落とそうと決意した。
一週間は、長いようで短かった。
アッと言う間に来た。
『九州 筑豊ラーメン 山小屋 フジグラン野市店』
味なんか知り尽くしているハズなのに、
私はまたココに来てしまった。
理由は明白。
私が暫く来ないあいだに、
新メニューが続々と追加されているらしいからだ。
<一杯や二杯食べて・・・はい解りました・・・!?
コイツはそんなに単純じゃねぇ・・・!
まだある・・・俺には魅せてねぇ・・・俺の知らねぇ一面がっ・・・!>