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かくして竜一は、『一六八』と書いて"いろは"と読む、
南国市は岡豊町にある、未訪のうどん屋さんに到着した。
『うどん小屋 一六八』
駐車場に敷き詰められた・・・!
石・・・石・・・!
イシッ・・・!
<すこぶる大量・・・!
その数・・・数十万・・・!
いや数百万はあっても・・・なんら不思議は無いっ・・・!>
圧倒的っ・・・!
石のお出迎え・・・!
<車のタイヤで石を踏みしめる・・・!
この感覚・・・!たまんねぇ・・・!>
ステアリングを通して・・・!
ジャリジャリ来るっ・・・!
一六八、
入口に攻撃力。
おいっ・・・!
なんだよこれっ・・・!
入店っ・・・!
小奇麗で和風、落ち着いた雰囲気の小さな店内には、
11時の開店から間もない時間だったこともあってか、先客おらず。
そして、この時、
竜一に事前情報あり。
<一六八は天ぷらが美味いらしい・・・!>
現在、第二次醤油うどんブームが巻き起こっている竜一は、
見やったメニューから、単品のしょうゆうどんを早々に発見し、
二の矢で当然の如く、「しょうゆうどんと天ぷらのセット」を探すが、無い。
<天ぷらうどん・・・ぶっかけ天ぷら・・・!
かまあげ天ぷらに・・・湯だめ天ぷらだってあるのに・・・!>
しょうゆ天ぷらは無いっ・・・!
<ナゼだ・・・!
他のうどんと天ぷらのセット・・・それはあるのに・・・!
ナゼしょうゆだけ・・・天ぷらセットが無い・・・!>
その時、
竜一の脳内に浮かんだ、
ある種の考え。
書いてないだけだ・・・!
<きっと書いてないだけで・・・言えば出来るんだ・・・!
あるよね・・・あるよね・・・!そういうパターン・・・!>
注文を取りに歩み寄って来た、
お姉さん店員さんに発す。
「しょうゆ天ぷらって出来ますか・・・!?」
竜一のその一言に、
お姉さん、動き、止まる。
「ちょっとお待ちくださいね・・・!」
そう言い残して、カウンターの向こう側にある厨房に居る、
店主と女将さんだと思われる二人に聞きに行く、お姉さん。
審議・・・!
一六八・・・!
完全に審議っ・・・!
<なにっ・・・即可決じゃねぇっ・・・!
しょうゆうどんと天ぷらのセットを要求する客・・・!
そんな客よくいるだろうと思ったが・・・これはまさかのレアケースっ・・・!>
俺だけっ・・・!
そんなメンドクサイ客・・・俺だけ・・・!
程無くして、女将さんが、
カウンターの奥から顔を出して言う。
「普段はやってないんですけど・・・!
今は他にお客さんがおらんので特別に・・・!」
ぎゅえぇぇぇ・・・!
やっぱり普段はやってねぇのか・・・!
その後、竜一を襲う、
圧倒的、自己嫌悪。
<すいません・・・すいません・・・すいません・・・!
竜一は・・・いつもはこんなワガママを言う人じゃないんです・・・!
おおつ製麺では・・・特大の有る無しさえも聞けなかったほどのチキンなんです・・・!>
なのに一六八さんでの・・・この局面・・・!
ナゼか突然沸いてきた勇気により・・・!
一見にも関わらず・・・しょうゆ天ぷらの有る無しを偉そうにも確認しやがるという暴挙・・・!
<ダメだっ・・・俺は本当にダメなヤツだ・・・!
いらんことを言いやがって・・・!あほっあほっ・・・俺のあほっ・・・!>
そんな竜一を余所に、
奥の厨房から軽快なリズムを刻んで響いてくる、天ぷらサウンド。
「カラッ・・・!
カラカラカラッ・・・!」
<うぅぅぅぅっ・・・ありがたいっ・・・ありがたいっ・・・!
こんな俺がワガママ言って頼んだ天ぷらを・・・!
大将自ら・・・!揚げてくれているっ・・・!>
音と共に自責の念は期待に変わり、
やがて食べたいという欲求へと繋がる。
<来るぜ・・・そろそろ・・・!
無理言って頼んだからには全力で喰う・・・!
ククク・・・!お楽しみはこれからさっ・・・!>
(エピソード3へ続く・・・!)
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