野良仕事を終えたあと、急に思い立ち、土曜夜市の会場である高知市帯屋町に達した頃には、すでに20時を過ぎていた。
興味本位に任せて辺りをウロウロと徘徊しているあいだに、
ドンドンと時間は経ち、中央公園に戻ってきた頃には、
土曜夜市の終了予定時刻である21時が近付いていた。
けれども、まだ生ビール一杯しか飲んでいない。
まったく酔っていない。
このまま終われるか、と思った。
人生は、全うしなければならない。
飲むならやり切れ・・・!
泥酔しなきゃ嘘だよっ・・・!
『居酒屋 葉牡丹』
数年ぶりに訪れた「葉牡丹」
ほぼ満席。
ココしか空いていないが構わないか、
とカウンターの奥にいる男性店員さんが、カウンターの空席を指して言う。
私は、とにかく飲めたらどこでも良いので、
そこに素直に着席した。
これぞ!日本の居酒屋!
みたいな雰囲気が相変わらず素敵な葉牡丹。
好きなものをドンドン頼んでゆく。
『ホルモンの煮込み』
(なんと!圧倒的170円・・・!)
『串フライ盛り合せ』
(なんと!圧倒的280円・・・!)
『チャンバラ貝』
(チャンバラフェチとしてイッておきたかった)
さらに、イクッ・・・!
伝家の宝刀・・・!
焼酎・オン・ザ・ロック・・・!
頼んでビックリ・・・むしろトックリ。
日本酒を頼んだときみたいに、トックリが現れた!
そして、ロックグラス。氷は予備まで付いている!
酔った人々の楽しげな声が賑やかに響く店内で、
私は、それをチビリチビリとやり始めた。
<うわぁ・・・効くぅ・・・!
アルコールに締め上げられるようなこの感じ・・・!
たまんねぇ・・・これでこそ・・・我が手の震えも治まるというもの・・・!>
『揚げ出し豆腐』
カウンターで飲んでいると、目の前で、
牛すじ肉だと思われる肉を、赤茶色のドロドロとした液体の中で煮込んでいるのが見えた。
とても美味しそうだ・・・。
私の後ろを通りがかった店のオバチャンに、これは何かと指差して訊くと、
「それは牛すじの煮込みです、この店では"土手焼き"いうて呼んでますけど」
と教えてくれた。
<なるほど・・・土手焼きか・・・!
名前だけなら聞いたことがある・・・!>
もうそこそこお腹が張り始めていたので、頼むかどうしようか迷ったけれども、
なにせ誘惑は目の前だ。目の前で美味しそうに煮込まれている土手焼きの誘惑に勝てず、
カウンター越し、土手焼きを指差しながら、男性店員さんに注文した。
「その土手焼き・・・ください・・・!」
『土手焼き』
それは、圧倒的な旨さだった。
まろやかに広がる味噌の味と香り、
じっくり煮込まれた牛すじ肉は、噛むとトロリ。
アイスクリームみたいに融けた。