『前編を読む』
リズム良くドモリながら「とり天うどん」を注文した私に、
女将さんは優しく微笑みながら言う。
「温かいのでいいですか・・・?」
<温かいの・・・!?>
再度、壁に張り巡らされたメニューの記載を見てみると、
「とり天」と書かれた下に、"(温・冷)"と書かれている。
ゆたかの「とり天うどん」は・・・!
2種類ある・・・!!
それに気が付いて、どうしたものか、と思考が入り乱れた。
けれども、とにかく忙しそうな店側のリズムを乱すことだけはしたくない。
私が迷ってしまうことで、
"流れ"を止めてはいけない。
私は即座に「冷」を選択して注文した。
コスプレ好きの農民としては、
やはり・・・綾波レイ・・・。
つまり、綾波が"レイ"であるならば、
とり天も「冷」にするべきだと思えたのだ。
<食べます・・・とり天・冷・・・食べます・・・!
ボクは・・・ボクは・・・!
ウドォンゲリオン初号機パイロット・・・農民・竜一ですっ・・・!>
ウドォンゲリオンのパイロット気分を
ひとしきり味わったあと、ふと思った。
<冷って・・・ひやかけかな・・・!?
それとも・・・!ぶっかけ・・・!?>
すぐに思いつく"冷たいうどん"といえば、
他には「冷やし」や「醤油」があるけれど、
この局面は、おそらく「ひやかけ」か「ぶっかけ」のどちらかだろう。
<まぁ・・・どちらでもいいさ・・・!
いかようなうどんにでも俺は対応する・・・!>
注文してから、しばらく待った。
私は壁に貼られたメニューを、再度確認したりしていた。
なにか良さげな一品があったら、
次回「ゆたか」を訪ねた際に、是非注文したいからだ。
次戦への攻防は、
注文した瞬間から始まる。
店の一番奥に置かれたラジカセから、ラジオが流れていた。
しかし、その音声は店内の賑わいにかき消されて、よく聴こえない。
舞い降りたそれは、ぶっかけスタイル。
『とり天・冷(大)』
<鶏・・・切れてる・・・!
これはきっと鋭利な刃物で斬られたに違いないっ・・・!
しかも・・・!しかも・・・ゆたか・・・!>
初手からぶっかけてきたっ・・・!
細めの麺。
切り立ったエッジ。
シッカリ・・・ムチムチ・・・!
スリムな外見から・・・!
想像を超えた強反発の攻撃が繰り出されるっ・・・!
出汁、スッキリ。
抜群の喉越し・・・!
後味・・・キレ・・・!
たっすいがは、
いかんぜよっ・・・!
・・・!そんな雰囲気。
『肉うどん(大)』
肉の煮汁、混じる、かけ出汁。
だが、それが複雑な味を生んで光る。
私は「ほぇー」と食べていた。
昼のピーク時を過ぎてきたようで、徐々に空き始める店内。
すると、それまで賑わいにかき消されて
聴き取れなかったラジオの音声が、聴こえ始める。
瞬間、私は口に含んだうどんを
鼻から出しそうな勢いで驚いて、思わず大きな声を出してしまった。
「・・・!」
ラジオのパーソナリティは、
私がネット上で知り合った人のハンドルネームを連呼していた。
<うぉっ・・・すごい・・・!
これがあの人の声っ・・・!>
そのラジオの中にいたのは、
冷たいアイスクリームの話を熱く語る、junjunさんだった。
◆ うどん処 ゆたか
(高知県高知市中万々72-14)
営業時間/11時~15時(土日祝は19時まで)※麺切れで終了
定休日/月曜日(祝日の場合は翌日)
営業形態/一般店
駐車場/6台(店舗南側)
(とり天・冷650円、肉うどん650円、牛つけめん650円、とり天・温650円など、大100円増)
『うどん処ゆたか』の場所はココっ・・・!