ウサギ日和 EP9 「道の駅・木の香」

2013.08.10

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ウサギ日和 EP9 「道の駅・木の香」

2013.08.10

『EP8を読む』


ウサギ島83

土産物売り場を通り抜けて、奥の飲食スペースへ。

広い窓に向かって設置されたテーブル席に腰を下ろす。
眼下には、白くて大きな岩がゴロゴロ転がった渓流が流れている。

<紙一重・・・危機的な状況を潜り抜けた・・・>
グラスの水を一口飲む。入れられた氷が涼しい音を立てる。<あのガソリンスタンドがこの世に存在しなかったら・・・詰んでいた・・・>

水が旨い。

<おかげで俺は・・・!>
と思った。<やり直せる・・・!>

ウサギ島78

『道の駅・木の香』に着いたとき・・・。

ウサギ島79

僕はヘトヘトだった。

ウサギ島80
(※ メニューは5月上旬のものです)

メニューに目をやる。
念願の「キージーカレー」はスグに見つけられた。
「キージ(?)カレー」というのが正式名称のようだ。

ウサギ島81

ウサギ島82

キジを使ったカレーライスは「キージーカレー」の他に、「玉ねぎまるごと!きじカレーライス」というのもあった。
けれども僕は「キージーカレー」のほうが、キジ肉たっぷり!であるのを、あらかじめ調べて知っていたので「キージーカレー」を注文することにした。

いっぱいキジを食べないと、大きくなれない。

数分後―――。
念願の「キージーカレー」を男性の店員さんが持って来てくれる。

ウサギ島90

<わぁー!キージー!テンコ盛り・・・!>
ソースポットの限界まで盛られたキージーカレーに食欲が湧く。<キジ肉のミンチがいっぱい入ってるー!>

ウサギ島89

白いごはんの上には、揚げられたレンコンやジャガイモなどが載る。

<手が込んでるぞ・・・!>
と僕は思う。<ご家庭ではマネできない・・・!少なくとも俺はここまでできない!しようとも思わない・・・!>

ウサギ島91

ごはんの量に対して、カレーの量のほうが明らかに多い。

<こんなにたくさんのキージーを・・・!>
僕はごはんに「キージー」をたっぷりかける。<ありがたいっ・・・!>

スプーンですくって口へ運ぶ。

風を切り裂き・・・!
飛んでくる!キジの全速強襲・・・!

<肉の味が強い・・・!>
モグモグ食べる。噛めば噛むほど味が出る。<結構シッカリしてる・・・!>

俺よりシッカリしてる・・・!

牛や通常の鶏肉とも違う、キジ肉独特の香りが若干する。
でも、その香りがカレーの香りと良い具合に調和している。

これに密かにサラダも付いていて、さらには、あとからコーヒーまでやってくる予定だ。
なんともお得なセットである。

しかし・・・それにしても・・・。

窓の外に広がる圧倒的山岳地帯を見ながら、僕は考えた。

<せっかくここまできたんだ・・・>
この緑の山々の中にキジがいるのだろうか。
居たとしてもキジも緑だから見分けが付かないかもしれない。保護色ってやつだ。

もういっちょキジ・・・。
イッておいたほうが良くないか・・・?

ウサギ島84

いったいどういうわけだろう。
気が付いたときには、キジをアンコールしていた。

ウサギ島86

「きじラーメン」と・・・。

ウサギ島85

「きじカレーライス」・・・。

ウサギ島87

それに「唐揚げ」「サラダ」が付いた大変にお得なセット。

その名も・・・!
『どうぞ!きじセット』

<キージーカレーを食べた今・・・!きじカレーライスも食べるのは、むしろ自然な流れ・・・!>
それに僕は麺野郎。<きじラーメンを食べずに帰るなんて、そんな水くせぇこたぁしねぇっ・・・!>

『道の駅・木の香』に「きじラーメン」があることなんて、ここに来る何ヶ月も前から知っていた。

「キージーカレー」以降の流れなど、すべて茶番。
最初から、全部食べる気だった。

いっぱいキジを食べて、大きくなります。

ウサギ島88

「きじラーメン」から先に食べる。
<薄いけど濃いような・・・!>
ポトフみたいな味がするスープ。<洋風・・・!>

それは白っぽい色した極細麺によく絡む。
スープの中にはキジ肉の団子(つくね)も浮かんでいる。

続けて「きじカレーライス」も食べる。
これだけ次から次へとキジを食べていると、徐々に自分がキジそのものになりつつあるのを感じてくる。

「唐揚げ」は、さすがにニワトリのものだったけれど、それでも鳥類なので満足だ。
それに柔らかくジューシーで美味しかった。

ウサギ島92

すべてを平らげた頃―――。
わざわざ伝えなくても、「コーヒー」が絶妙のタイミングでやってきた。コミュ障にはありがたい。

ウサギ島93

温かいコーヒーをすする。
<予想外にいろいろあったな・・・>
すすりながら回想する。<ガス欠危機一髪!が余計だったけど、それでもギリギリセーフだったから、いい思い出・・・とは言えないかもしれないけど・・・まあまあの思い出にはなったかな・・・うどん並盛ぐらいの・・・>

窓の外に見える山の緑は、徐々に暗闇に包まれようとしている。
今頃ウサギ島のウサギたちは元気に跳び回っているのだろうか。ウサギは夜行性だから。

ウサギ日和の一日が暮れていく。
穏やかにゆっくりと暮れていく。

(ウサギ日和・完)
『ウサギ日和を1話目から読む』