『第9話を読む』
12時から予定されていた、
マグロの解体ショーはすでに終わっている。
解体したマグロは、
寿司にして振る舞われると聞いた。
「せめてお寿司だけでも
食べれたらえいけんど…」
果たして寿司はまだ残っているのか。
米粒大の可能性にかける。
中央を開けて、
両側にずらりと並んだ出店たち。
それを見ながら歩いていると、
発見。
マグロのにぎり寿司!
「これ、解体したマグロやろうかね?」
わからない。
でも解体したマグロだということにしておこう。
人混みの中で立ち食い。
一口でいく。
「おいひい!」
期待通り!
いや期待以上の旨さ!
「マグロが溶けた…!」
トロではなく、赤身だと思う。
思うが、しかし……。
赤身だけど、トロっ!
これで火が付いた……。
もう止まらない……。
無限の食欲っ!
『六宝』
宇和島の郷土料理で、
ご飯の上に生魚が載ったもの。
鯛めしに似ている。
鯛めしとの違いは、
調味料に漬けられた魚を使用しているということと、
鯛以外の魚でもOKということだ。(たぶん、笑)
「これもおいひー!」
少し甘めの味。
それがまた食欲をそそる。
そしてもちろんいく。
当然いく。
この祭りに来たからには……!
やりおおすっ……!
しらうお踊り食い!
今年も……!
圧倒的ビンビンっ…!!
しらうお元気です!
「おおおっ……!」
口の中で、踊るしらうお。
美味しいとか、
美味しくない。
そんなちっぽけな次元で語ってはいけない。
しらうおを生で食べるということは、
料理の枠を超えた異次元の世界。
しらうおは、異次元の魚なのだ。
まだまだ終わらせない……!
行こう…しらうおの向こう側へ……!
『しらうおのお吸い物』
熱で白く変色した、しらうお。
冬の寒さで冷えた身体が!
一挙にぽかぽか温泉…!
思えば、ここまで、
わりとヘルシーなものばかりだった。
あぁっ………!
そろそろ油が欲しい……!!
『じゃこ天』
これも宇和島名物。
おじさんが目の前で揚げてくれた。
「熱々!」
油が旨い………!
油が上質のスープのようだ!
『身天』
『じゃこ天』と同じ、
カマボコ屋さんが出している店で購入。
「みてん」と読むらしい。
「身天ってなんですか?」
コミュ障の旦那に代わり、
コミュ力おばけの嫁が訊いてくれる。
「カマボコにする魚のすり身、わかる?
それを揚げたのが、身天なんや」
そんな風に説明してくれる、店のおじさん。
なるほど!
頭の中で合点しまくった。
「熱い内に食べないかん!」
「そやね」
「うわっ!身天!うまっ!」
(つづく)
『第11話を読む』