生姜の収穫が終わったら、真っ先に行こうと決めていた。
<マスターに…kusatuneさんに……逢いたいっ……!>
世界はそれを…「恋」という…。
世界はそれを…「愛」とも呼ぶんだよ…。
『草や』
店先のボードで『本日の日替定食』を確認する。
<昼の草やといえば…やはりこのお得な定食…今日はカブにニンジン葉にズイキ…さらにメインはスマガツオ…!ヘルシー…誰が見ても体に良さそうなラインナップ…!>
これが800円。
興奮した。
<こうなったら…当然……!>
記念撮影だっ…!!
立派な門にかけられた草色の暖簾をくぐる。
玄関で靴を脱いで、中へ。
そこには大量のお客さん。
萎縮っ・・・!
<ダメだ…店内の空気に呑まれる…!>
空いていた隅の席にコソコソ座る。
「マスターに逢いたい!」などと言っておきながら、私にはまったく別の考えもあった。
<これ…マスターに気付かれないままに食べて帰ったら面白いよね…できるさ…初めて草やにきたときも…俺は気付かれずに食べて帰ったんだ…!>
マスターに気付かれてはいけない、ということになったので、益々コソコソする。
店のお姉さんがお茶を持ってきてくれる。
<おっ…!この前…夜にきたときにいた人だ…>
この人に気付かれたら、連鎖的にマスターにも気付かれると思った。<でも大丈夫…絶対に俺のことなんか覚えていない…俺は影の薄さに定評があるんだ…>
だがっ………!!
お姉さん、明らかに私に気付いている雰囲気。
面が割れてるっ…!?
<で…でもまだ大丈夫…!まだマスターにバレたわけじゃない…!踏みとどまっている…首の皮一枚っ…!!>
お姉さんが去ったあと、厨房のほうを見ると、中で作業をされているマスターの横顔が見えた。
<ほら大丈夫…マスターは俺がきていることに気付いていない…作業に集中している…大丈夫だ…凌いだ…この局面…凌ぎきった…>
…かに思えた。
しかーしっ…!
マスター現る!庭から現る!
窓の外に!マスター!!!
気付かれた…!
気付かれたっっっ…!!
(後編へ続く!)
※ 後編は明後日・日曜日以降に更新予定です!
『後編を読む』