明け方の『ぎゅうせん』
いつもと同じで、飲んだあとのシメ。
時間潰しを兼ねたシメの『ぎゅうせん』
食券制。
入口を入ってスグの券売機で、食券を買う。
通常は麺類。
だが、この日は違った。
"ぎゅうせんは本来…牛丼屋…!
それなのに俺は……!
ぎゅうせんの牛丼を食べたことがない…!
だから…だから……!"
一度…食べてみたかった…!
牛丼…ぎゅうせんの牛丼…!!
店長…!持ってきた牛丼…!
ご飯が見えない…敷き詰められた肉…!
肉……肉……肉………!!
圧倒的…!
肉だらけっ…!!
<お腹は空いてない…!なのに…魔が差して…大盛…!大盛にしてしまった…!>
大盛の牛丼450円。
これに+50円で生卵。
<このままかけると牛丼の味が薄くなる…!だから…生卵に醤油を垂らしてから牛丼にかける…!それが俺流…!>
がっ…!
それが裏目…!!
元々、ぎゅうせんの牛丼は濃い味付けなのだろうか。
醤油入りの生卵をかけると、想像以上の濃さと相成った。
<若干失敗した…!吉野家はこれぐらいで丁度…!むしろこうしないと薄くなるのに…!そうか…"ぎゅうせん、醤油、必要ない"この法則…このパターンだったか…!!>
アルコールで満たされ、やられた胃に牛丼大盛。
<うぐっ…わりとキツイ…!並盛で充分だった…!でも食べる…!食べ切る…!勿体ない精神で食べおおすっ…!!>
何とか完食。
<ぎゅうせんの牛丼…初めて食べたが…これで人生のノルマの一つを…またクリアできた気がする…>
忘年会帰りか何だかわからないけれど、たくさんの若者でごった返す店内。とても賑やか。
<そろそろ夜も明けるのに…みんな元気だな…>
ぼんやり思った。
<俺は…お腹も張って…何だか眠くなってきちまった…帰りの列車の中で寝てしまわないように…気を付けなきゃな…>
この数時間後。
のちに「大歩危事件」と呼ばれる、あの伝説の夜明けを迎えるとは、このとき、まだ想像すらしていなかった